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対決
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ガブリエルは、アルスからもらった剣で、ローブの男の魔法を至近距離で無効化していた。だがいつもの冷静なガブリエルとは打って変わって、めったやたらに相手に斬り込む、捨て身の戦闘だった。
これではいつ敵の魔法が当たって死んでもおかしくない。レオンは走りながら叫んだ。
「ガブ!距離を取って!」
ガブリエルの背中がピクリと動く。ガブリエルは魔法使いの攻撃魔法を跳ね除けて、一歩後ろに退がった。ガブリエルは、となりに駆け寄ったレオンとアルスをチラリと見て言った。
「ジャンは?」
「ポールさんが治癒魔法をしてくれている」
ガブリエルは一言そうか、と答えると、またローブの男に視線を戻した。レオンは手に筒の武器を持ち、ローブの男を警戒しながら、ずっと聞きたかった事を質問した。
「ガブ、本当にあいつが君のお父さんのかたきなの?」
「・・・。ああ、忘れもしない。小さい頃、父の部屋から出て来た殺し屋だ」
ガブリエルは父親のかたきを目の前にして、冷静でいられなくなっているようだ。ガブリエルとの会話が聞こえたのか、ローブの男はガブリエルに言った。
「何だ?お前は俺が殺した標的の身内か?」
「忘れたとは言わさんぞ。私の父ラトゥール子爵のかたき!」
殺し屋は少し考えるそぶりをしてから、合点がいったようだ。笑顔になって言った。
「ああ、思い出した、ラトゥール。見苦しく偽善なヤツだった。自分の命は取ってかまわないから、ここにいる使用人の命は助けてくれとぬかしやがった。もちろん使用人を惨殺してから、ラトゥールを殺してやった。今でも思い出すぜ、ヤツの苦しんでいる顔を!」
殺し屋マフサが語るたびに、ガブリエルの顔がこわばった。ガブリエルはおのれ、と鋭く叫ぶと、剣をマフサに打ち込んだ。
アルスはため息をつきながらレオンに言った。
「仕方ないのぉ。オレ様たちはガブのフォローをするぞ?これではガブはかたきを取れずに死んでしまう」
レオンは大きくうなずいて、右手に持った武器を握り直した。もしガブリエルに危険がおよべば、レオンとアルスで助けなければいけない。
ガブリエルは捨て身の戦闘を続け、時にはアルスが防御魔法で守り、またある時にはレオンがツタ魔法でガブリエルの窮地を救った。
長い戦闘が続き、変化が起きた。殺し屋のマフサに疲労の色が見え始めたのだ。無理もない、ガブリエルの持っている魔法の剣は、正確に攻撃魔法を斬れば、魔法を無効化してしまう力がある。
マフサの魔力は次第に尽きてきたのだ。その一瞬をつき、ガブリエルはマフサの間合いに入り、相手の左足を思いっきりけった。
マフサは突然の肉体に受けた攻撃に、仰向けに倒れた。ガブリエルはマフサの胸を足で踏みつけて、高々と剣をを振り上げた。これからガブリエルが父親のかたきを討つのだ。
レオンはこれから起こる惨劇に、目をギュッととじた。
これではいつ敵の魔法が当たって死んでもおかしくない。レオンは走りながら叫んだ。
「ガブ!距離を取って!」
ガブリエルの背中がピクリと動く。ガブリエルは魔法使いの攻撃魔法を跳ね除けて、一歩後ろに退がった。ガブリエルは、となりに駆け寄ったレオンとアルスをチラリと見て言った。
「ジャンは?」
「ポールさんが治癒魔法をしてくれている」
ガブリエルは一言そうか、と答えると、またローブの男に視線を戻した。レオンは手に筒の武器を持ち、ローブの男を警戒しながら、ずっと聞きたかった事を質問した。
「ガブ、本当にあいつが君のお父さんのかたきなの?」
「・・・。ああ、忘れもしない。小さい頃、父の部屋から出て来た殺し屋だ」
ガブリエルは父親のかたきを目の前にして、冷静でいられなくなっているようだ。ガブリエルとの会話が聞こえたのか、ローブの男はガブリエルに言った。
「何だ?お前は俺が殺した標的の身内か?」
「忘れたとは言わさんぞ。私の父ラトゥール子爵のかたき!」
殺し屋は少し考えるそぶりをしてから、合点がいったようだ。笑顔になって言った。
「ああ、思い出した、ラトゥール。見苦しく偽善なヤツだった。自分の命は取ってかまわないから、ここにいる使用人の命は助けてくれとぬかしやがった。もちろん使用人を惨殺してから、ラトゥールを殺してやった。今でも思い出すぜ、ヤツの苦しんでいる顔を!」
殺し屋マフサが語るたびに、ガブリエルの顔がこわばった。ガブリエルはおのれ、と鋭く叫ぶと、剣をマフサに打ち込んだ。
アルスはため息をつきながらレオンに言った。
「仕方ないのぉ。オレ様たちはガブのフォローをするぞ?これではガブはかたきを取れずに死んでしまう」
レオンは大きくうなずいて、右手に持った武器を握り直した。もしガブリエルに危険がおよべば、レオンとアルスで助けなければいけない。
ガブリエルは捨て身の戦闘を続け、時にはアルスが防御魔法で守り、またある時にはレオンがツタ魔法でガブリエルの窮地を救った。
長い戦闘が続き、変化が起きた。殺し屋のマフサに疲労の色が見え始めたのだ。無理もない、ガブリエルの持っている魔法の剣は、正確に攻撃魔法を斬れば、魔法を無効化してしまう力がある。
マフサの魔力は次第に尽きてきたのだ。その一瞬をつき、ガブリエルはマフサの間合いに入り、相手の左足を思いっきりけった。
マフサは突然の肉体に受けた攻撃に、仰向けに倒れた。ガブリエルはマフサの胸を足で踏みつけて、高々と剣をを振り上げた。これからガブリエルが父親のかたきを討つのだ。
レオンはこれから起こる惨劇に、目をギュッととじた。
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