召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

戦い

　ジャンはフードの男めがけて走り出した。フードの男は強力な炎攻撃魔法をジャンに放った。ジャンは今度は攻撃魔法を斬る事はせず、紙一重で魔法を避けた。

　ジャンがフードの男の側面に周りこみ、再び剣を振り上げた。フードの男はやはり炎魔法を至近距離でジャンに投げつけた時、驚くべき事が起きた。ジャンが手に持っている剣が、氷の魔法をまとったのだ。レオンは驚いてアルスに聞いた。

「アル！やっぱりジャンさんの剣は魔法の剣だよ！」

　レオンの驚きに反して、アルスは面白そうにうなずきながら答えた。

「いいや。ジャンは魔力を持たない剣士じゃ。魔法を使っているのはポールの方じゃ。ポールはジャンの剣に魔法をかけて、ジャンのアシストをしているじゃ」

　ジャンとポールは、息の合ったコンビのようだ。ジャンの氷の剣と、フードの男の炎魔法がぶつかり合い、激しく爆発した。

　爆発の煙がおさまると、男の顔を隠していたフードが滑り落ち、顔があらわになった。

　それまでジッと傍観していたガブリエルが豹変した。

「おのれ、マフサ！」

　ガブリエルはジャンの指示を無視してローブの男に斬りかかった。ローブの男は、突然間に入って来たガブリエルをうるさそうに見て、手から何らかの魔法を出した。

「ガブリエラ！」

　ジャンはとっさにガブリエルを突き飛ばした。ガブリエルをかばったジャンの腹が、バッサリと斬られる。ローブの男の魔法は、風を刃のように鋭くさせる魔法のようだ。レオンはたまらず叫んだ。

「ジャンさん！」

　レオンは植物ツタ魔法を地面から生やすと、腹を抑えて崩れ落ちそうになるジャンをツタで巻き取り、後方に下がらせた。

　レオンはジャンを仰向けにして、傷を確認する。腹からは血がどくどくとあふれていた。小さく悲鳴をあげたレオンの肩をポールが叩いて言った。

「ジャンを救ってくれてありがとう。ここからは私が治癒魔法をしよう」

　ポールはレオンがいた場所に座り、ジャンの傷を確認すると、治癒魔法を開始した。治癒魔法を受けている間、ジャンはうわごとのように言った。

「ガブリエラは一体どうしてしまったんだ。いつもの冷静な彼女じゃない」

　ジャンはガブリエルをかばって負傷したのだ。レオンは仕方なく口を開いた。

「あの魔法使いの殺し屋は、ガブのお父さんのかたきなんだ」
「！、それはいけない。剣士にとって冷静さをかく事が一番いけないんだ。彼女を下がらせてくれ。ケガが治り次第俺が倒す」

　ジャンが身を起こそうとするのをアルスが止めて言った。

「大丈夫じゃ、ジャン。あのじゃじゃ馬はオレ様たちにまかせろ。お前はしっかりケガを治すのじゃ」

　アルスはそう言って、ポールに向き直って言った。

「ポール。治癒魔法の助力は必要か？」
「いいや。ジャンのケガは私が責任を持って治す。レオンとアルスはガブリエラを助けてくれ」
　
　アルスはうなずいてレオンをうながした。どうやらポールの治癒魔法は、アルスの信頼にあたいしたようだ。アルスは、ポールとジャンの周りに、防御ドームを張った。殺し屋の魔法使いに攻撃されないためだ。

　レオンとアルスはうなずきあうと、ガブリエルの元に急いだ。