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レオンの苦労

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 レオンが屋敷の裏手の奥に走って行くと、アルスのかん高い泣き声が聞こえた。それをいさめるように男の胴間声が響く。きっと森近くにある薪割り小屋だろうと当たりをつけて走る。

 はたしてそこには、わんわん泣いているアルスと、下男のボイがいた。ボイは乱暴者の大男で、仕事のできないアルスをいつもどなっていた。

 アルスはまだ子供だ、仕事ができなくて当たり前なのに。レオンは小さく舌打ちをしてから叫んだ。

「アル!」
「レオン!こいつがオレ様をいじめるのじゃ!」

 アルスはレオンに気づくと、飛びついて来た。レオンはアルスを抱き上げてからボイに言った。

「ボイさん。アルが何かしましたか?」
「どうもこうもあるか!このガキは何にもできねぇから、薪運びを言いつけたら、薪の山を崩しやがって。注意したら泣きわめくしよぉ」

 レオンは辺りに散らばっている薪を見てからボイに言った。

「ボイさん、ごめんなさい。散らばった薪は僕が戻しておきます」
「ケッ、当たり前だ!弟のしつけくらいちゃんとしておけ!」

 ボイはレオンをどなりつけた。レオンは頭を下げたまま、ジッとしている。ボイはレオンとアルスにきつく当たる。その原因を知っているので、レオンは下くちびるをグッと噛んで耐えしのいだ。

「レオン!アルス!」

 レオンとアルスに声をかける者がいた。振り向かなくてもわかる、ガブリエルだ。ガブリエルはレオンたちをかばうように前に立つと、大きなボイに鋭い声で言った。

「アルスはまだ子供だぞ?!仕事ができないのは当たり前だ!それなのに、何度もどなるなんて。ボイ、貴様は何と了見がせまいのだ!」
「そんなに怒るなよ、ガブリエラ。可愛い顔が台無しだぜ?」

 ボイは顔をにやけさせて、ガブリエルの頬に触れようとした。ガブリエルは手刀でボイの手をはたき落として叫んだ。

「汚い手で私に触るな!」
「わかったよ。そぉ、ムキになるなよ?」

 ガブリエルの剣幕に、ボイは気持ちの悪い顔でニヤニヤ笑っている。ボイはガブリエルに気があるのだ。だからアルスとレオンに難くせをつけては、いとこであるガブリエルと話そうとするのだ。

「ボイ。庭師さんが呼んでいるよ?力仕事を頼みたいらしい」

 レオンたちの側に、下男のオットーがやって来て声をかけた。ボイはケッと舌打ちしながら庭園に行ってしまった。

 オットーはレオンたちに声をかけた。

「大変だったね?レオン」
「オットーさん。ありがとうございます」
「いいや。アンナが、またボイがレオンを怒鳴っていると言っていたからね。さぁ、この薪を積み上げてしまおう。皆でやればすぐ終わる」

 レオンたちはうなずいて。薪の積み上げにとりかかった。

 





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