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別れ

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 レオンたちが冒険者協会に到着すると、バンスは受付にいて、笑顔でレオンたちを迎えてくれた。

「レオン、アルス。無事で何よりじゃ。よく帰って来たのぉ」
「バンスさん。僕たちに今回の依頼を紹介してくれてありがとうございました」

 バンスはレオンの顔をジッと見て言った。

「レオン。冒険者とは何かわかったか?」
「はい。冒険者とは、死ととなり合わせの危険な仕事です。だけど冒険者という人たちは、強くで優しくて正しい心を持っている人たちです。僕は、ドーグさんと、トマさん、ミトさん。それにゴメスさんとドンさんに出会えて冒険者がどんな者なのか教えてもらいました」
「そうかそうか。ゴメスとドンはまだまだ未熟者じゃが、わしの意志を継ぐ冒険者じゃ」

 バンスの言葉に、ゴメスは恥ずかしいのか顔をしかめていた。ドンは嬉しそうにうなずいていた。

 レオンたちとゴメスとドンは冒険者協会の前で別れる事になった。レオンは心からのお礼を彼らに言った。

「ゴメスさん、ドンさん。本当にありがとうございました」
「お礼を言うのはこっちの方だよ。レオン、アルスありがとう」

 レオンの固苦しい礼に、ドンは笑って答えた。ゴメスはまたな、と軽く返してくれた。

 レオンが抱っこしているアルスは、下に下ろすようにせがんだ。レオンがその通りにすると、いちごを作れという。アルスの意図に気づいたレオンが地面に手をついていちごを生成させた。

 アルスはいちごを食べると、凛々しい神の姿になって言った。

「ゴメス、ドン。この度の事大義であった。お前たちを見て、レオンも学ぶ事が多かったようじゃ。そこでお前たちにせんべつをやろう」

 アルスの両手が光ると、右手には剣を、左手にペンダントを握りしめていた。剣はゴメスに、ペンダントはドンに手渡した。剣をさやから抜いたゴメスは、うめくように言った。

「なんてすごい剣だ」
「ただの剣ではないぞ。神であるオレ様が作った剣じゃ。魔法攻撃を受けても無効化する事ができる」

 アルスは自慢げに答えた。ドンはペンダントを手にして驚いたように言った。

「このペンダント。強い魔力が入ってる」
「その通りじゃ。ドンの魔力の増幅器になる。それに、魔力を溜める事もできるから、魔力切れになる心配もないぞ?じゃがそれをつけて国家魔法使い試験を受けるのはズルじゃからな?」

 アルスにくぎをさされ、ドンはガックリとうなずいた。

 アルスとドンのやりとりを聞いていたゴメスが、意地の悪い笑みを浮かべて言った。

「おい、アルス。こんなすげぇ武器を俺たちに渡していいのかよ?俺もドンも、悪い事に使うかもしれないぜ?」
「ふむ。人間とは心が弱く、欲望に負けやすいからの。では、常にレオンの目を意識しろ」

 ゴメスとドンはアルスの真意をはかりかねて首をかしげた。アルスは小さくうなずいてから言葉を続けた。

「うむ。レオンはお前たちの事を目標にすべき立派な冒険者だと信じておる。ゴメスが剣を振るうたび、ドンが魔法を使うたび、レオンが自分を見てどう思うか考えるがよい。さすれば悪しき道に進む事はないであろう」

 ゴメスは驚いた顔をしてから、苦笑して答えた。

「ケッ、嫌な事言いやがる。後輩の見ている前では、無様な真似はできねぇな」


 ドンもうなずいて答えた。

「わかったよアルス。俺はこのペンダントを、自分たちが危機におちいった時と、困っている人のためにしか使わないよ」

 レオンとアルスは、ゴメスとドンとの再会を誓いあい別れた。
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