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戦闘開始

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 ドーグは仲間たちを見回してから、するどく言った。

「では、皆行くぞ!」

 冒険者たちは、一斉にオウッとかけ声を発して、森から駆け出した。すると、反対側からもたくさんの男たちが走り出て来た。皆手に剣を持っている。イエーリ団の盗賊たちだ。だがこの盗賊たちのほとんどが土人形で作られた者たちだ。

 レオンはアルスの小さな手をつないで、駆け出した。敵が近づくと、アルスの手を放し、彼の目を見た。アルスは笑顔でうなずいた。レオンも大きくうなずき返す。

 レオンは右手に持った武器に魔力を込めた。すると、筒から植物のツタが出現した。レオンは、ツタの伸びた武器をムチのように使い、自分に斬りかかろうとする盗賊に振り下ろした。

 ツタは盗賊の身体に巻きついた。レオンはすかさず赤い宝石のボタンを押すと、ビリッという激しい衝撃を手に感じた。レオンがグルグル巻きにした盗賊は、土の人形に戻ってくちはてた。

 レオンは武器の強力さに息を飲んだ。これまでのレオンの攻撃は、ツタで相手を巻きつけてしめあげるだけだった。だがこの無事を使えば、わずかな魔力で相手を倒す事ができるのだ。

 レオンは自分に襲いかかってくる盗賊を、かたっぱしからツタでグルグル巻きにし、カミナリ魔法で倒していった。
 
 レオンが戦いながら、辺りを見回すと、アルスがドンと連携しながら魔法で敵を倒していた。

 ゴメスはドンたちを守りながら戦っている。他の冒険者たちも、盗賊と、盗賊に姿を変えた土人形を倒していった。

 敵の盗賊たちは皆剣を持っている。つまりイエーリ団の統領はまだこの場にいないのだ。何故現れないのだろうか。部下と土人形だけで勝てると思っているのだろうか。

 レオンがそう考えていた頃、ドンッという激しい爆音がした。音のした方向を見ると、そこら一帯は焼けこげていた。誰かが強力な攻撃魔法を放ったのだ。ドーグの声が響く。

「魔法攻撃に備えて、魔法使いたちは防御魔法!剣士たちは魔法使いたちを守れ」

 レオンたちはただちに陣形をとった。ドンと三人の魔法使いたちを囲むように立つ。魔法使いたちは一斉に防御魔法の壁を作った。

 アルスはというと、攻撃魔法でケガを負った二人の冒険者たちの治療をしていた。レオンはアルスの側に近寄って聞いた。

「ゴメスさんを治したみたいに治癒魔法するの?」
「いいや。こやつらのケガは火傷じゃ。まずは氷魔法で患部を冷やさなくてはいけない。それから裂傷部分の治癒じゃ」

 テキパキと治療をしているアルスを見て、ドーグは驚きながら言った。

「アルス。お前は幼いのに、何という魔法技術だ」
「ふふん、当然じゃ。オレ様は神じゃからな!」

 アルスの返事にドーグは少し笑った。
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