召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

盛平

文字の大きさ
上 下
62 / 108

現状

しおりを挟む
 ゴメスは仲間の冒険者に質問した。

「状況はどうなっている?ドーグさんはどこだ?」
「ああ。俺たちは、隠れていては一網打尽にされるからと、平地に出て戦おうとした。だが、対じしたイエーリ団の親分がものすごい魔法を使うんだ。俺たちは散り散りに森の中に逃げ込んだんだ」

 ゴメスはうなずいてから答えた。

「まずはドーグさんと合流しよう」

 レオンたちは、平地の向こうにいる敵に注意しながら、森の中を進んだ。途中ケガをした仲間を見つけ、アルスとドンが治癒魔法をした。

 ようやくドーグに会う事ができた。ドーグは無事なゴメスを見つけると、強く抱きしめて良かったと言った。

 ゴメスは気恥ずかしいのか、身じろぎをしてからドーグに聞いた。

「ドーグさん。これから俺たち全員でイエーリ団と戦いましょう」
「ああ。だが、家族のいる者はこの作戦から離脱させようと考えている。おそらく私たちはこの戦いにやぶれるだろう。死に急ぐ事はない。ゴメス、お前は家族はいないが若い。ドンとレオンとアルスを連れてここから離れるんだ」

 ドーグは穏やかな笑みを浮かべていた。その表情は、まるで息子たちを見る父親のようだった。

 ゴメスはレオンたちを振り向いた。レオンとアルスとドンは無言でうなづいた。ゴメスも小さくうなずいてから言った。

「ドーグさん。俺たち全員、戦います」

 ゴメスたちを見たドーグは、ため息をついてからうなずいた。

 レオンたちは、森の中で散り散りになった仲間の冒険者たちと落ち合った。ドーグは仲間一人一人の顔を見てから言った。

「これから私たちは、イエーリ団とあいまみえる。先ほど目にした者たちはわかっているだろうが、イエーリ団の統領は様々な魔法を使う。魔法に対して、剣を使う我々は太刀打ちが難しい。そこで、魔法を使う者たちがイエーリ団の総統と魔法で戦い、剣を持つ者は、魔法使いたちを援護しながら戦う。皆、こころしてとりかかってくれ」

 ドーグの話しを、固唾を飲んで聞いていた冒険者たちは、大きくうなずいた。これからイエーリ団との戦いが始まる。レオンがドンを見ると、ドンの顔は真っ青だった。それを見かねたアルスが声をかける。

「ドン。何という情けない姿じゃ。お前は落ち着いていれば正確に魔法を使える。じゃから慌てるな。ドンが呪文を唱えている間、オレ様たちが必ず守ってやる」
「そうだぜ、いつもの事だ。テメェがチンタラ呪文を唱えている間、俺が守ってやらぁ」

 アルスの言葉にゴメスが続く。皆の準備が整った。これから戦いが始まる、という瞬間、アルスがレオンに声をかけた。

「ときにレオン。オレ様が作ってやった武器はどうした?」
「武器?ああ、鉄の筒の事?今は地面があるから使わなくてもいいよ」

 レオンの答えにアルスは、ハァッとため息をついて答えた。

「まったく、レオンときたら。ありがたくも神から賜った武器じゃぞ?」

 アルスはレオンに武器を出すように言った。レオンは素直にポケットから小さな鉄の筒を取り出してアルスに手渡した。アルスは筒を手に取ると、筒の表面についている、赤い宝石を指さして言った。

「よいか、レオン。この宝石は魔法を発動させるスイッチになっておる。植物ツタ魔法で、敵をぐるぐる巻きにした後、このボタンを押すがよい。カミナリ魔法が出て、相手を死なない程度に倒せるぞ?」
「そうなんだ!アル、ありがとう!」
「調子がいいのぉ」

 アルスはぼやきながらも鉄の筒をレオンに返してくれた。レオンは改めて武器を眺めた。筒についている宝石は、ただの飾りだと思っていたが、どうやら魔法を発動させるボタンのようだ。レオンはギュッと武器を握りしめた。





 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...