召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

冒険者試験

　ついに冒険者研修の最終日になった。研修生は、当初の三十人から、二十人に減っていた。脱落した者たちは、夜中に逃げ出した者、ケガをして動けなくなった者と様々だ。

　教官は、残った二十人の研修生を見て言った。

「この場に残った諸君、良くぞ研修を乗り切った。これから冒険者試験を行う。各自二人組を作るように」

　レオンはとなりに立っているガブリエルを見た。ガブリエルもレオンを見て微笑んだ。研修中レオンとガブリエルは共に切磋琢磨する友達になったのだ。

　教官は、組作りが終わると、高らかに宣言した。

「冒険者とは、時には共闘して依頼をこなさなければいけない。これから二人組でトーナメント形式で戦ってもらう」

　レオンはゴクリとツバを飲み込んだ。これから冒険者になれる者が決まるのだ。

　レオンとガブリエルの最初の相手は、ガブリエルを襲おうとした、奴らだった。二人の男たちはレオンとガブリエルをにらみながら言った。

「お前ら、この間の礼をしてやるぜ！」

　ガブリエルとレオンは剣を構えた。トーナメント戦に使用する剣は真剣だった。つまり、剣で斬られればケガをする。悪くすれば死んでしまうかもしれない真剣勝負なのだ。

　目の前の男たちは、オウッと声をあげながら、レオンたちに斬りかかった。レオンとガブリエルはお互いに目配せをした。ガブリエルは剣で目の前の男の剣を軽く受け流した。男はガブリエルが手応えなく通り過ぎた事により肩すかしをくらったように、たたらをふんだ。

　レオンはそれを見逃さず、植物ツタ魔法で男を拘束した。ガブリエルは後ろに控えた男にもうぜんと斬りかかり、怯んだ男の腹に剣の腹を当て、昏倒させた。

　この時間わずか三十秒。レオンたちはあっという間に対戦相手を倒したのだ。

　レオンとガブリエルは、研修の空き時間、ひたすらアルスに剣の稽古をつけてもらった。ガブリエルはメキメキと剣を上達させた。レオンはそれなりに上達した。

　ついにレオンたちは決勝まで勝ち上がった。対戦相手の二人は、剣も強く、魔法も使う事ができた。レオンはガブリエルに小声で言った。

「ガブ。今度の対戦相手、大きい人は剣士で、小さい人は魔法使いだ。僕は魔法使いを警戒しながら、ガブをフォローするよ」
「ああ。頼りにしている」

　ガブリエルはそう言って笑った。ガブリエルがレオンを信頼してくれる事が嬉しかった。

　ついに最終戦が始まった。背の高い剣士は、ガブリエルに向かって斬りかかった。ガブリエルは小柄な身体にもかかわらず、大男の剣を涼しい顔で受け止めた。

　そのまま拮抗状態が続く。魔法使いはしびれを切らして、ガブリエルに炎攻撃魔法を使った。すかさずレオンはガブリエルの横に大木を出現させ、炎からガブリエルを守った。

　魔法使いはレオンをにらみ、レオンに向かって炎魔法を投げつけた。レオンは自身の目の前に大木を出現させて自身を守った。

　ガブリエルと長身の剣士の斬り合いは続いている。ガブリエルと剣士が一旦距離を取り、また剣を打ち込もうとした時、レオンは叫んだ。

「ガブ！」

　ガブリエルはハッとした顔をしてレオンを見てからうなずいた。レオンはガブリエルの足元からツタ魔法を出現させ、ガブリエルを空高く持ち上げた。

　ガブリエルは空中で一回転すると、剣士の背後に危なげなく着地すると、剣士の胴に剣の腹を打ちつけて昏倒させた。

　焦った魔法使いがガブリエルに攻撃魔法をしようとした時、レオンのツタ魔法が魔法使いをグルグル巻きにして、魔法使いを戦闘不能にした。

　レオンたちは戦いに勝利したのだ。レオンは嬉しくなってガブリエルに駆け寄ると、ガブリエルも笑っていた。

　教官は、レオンたちの勝利を宣言し、そして言葉を続けた。

「この試合の勝者。ガブリエル、レオン。これからガブリエルとレオンの戦いを始める」