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新たな試練

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 レオンは、眠い疲れたとぐずるアルスをなだめながら、野宿の片づけをし、ランプに火を入れて、アルスを抱っこして歩きだした。

 辺りは真っ暗だ。無理もない、現在の時刻は真夜中だからだ。小さなランプだけが、かろうじてレオンの足元を照らしていた。

 しばらく歩くと、はるか頭上で音がした。風の音かと思ったが、どうやら人の声のようだ。レオンは、眠ってしまったアルスを落とさないように抱き直しながら耳をすました。

 すると、小さな声がレオン、アルス、と呼んでいる事に気づいた。声の主は幼なじみのルーカスだ。

 レオンは大声で叫んだ。ルーカス、ここだよ、と。しばらくすると、灯りを見つけたルーカスとシルフィが、レオンたちの目の前に着地した。ルーカスは開口一番、叫ぶように言った。

「レオン!無事だったか!?」
「どうしたの?ルーカス。そんなに焦って」
「どうしたもこうしたもあるか!レベル1の依頼書の中に、レベル20の依頼書が混じってたんだ!でも、良かったぁ。レオンたちはまだ山賊に遭遇してなかったんだな?」
「ううん、さっき会ったよ。アルスが魔法で倒してくれた」

 ルーカスとシルフィは、驚きの表情で、レオンの腕の中で眠っているアルスを見つめた。

 結局、倒れている十人の山賊たちは、シルフィの飛行魔法で、王都の騎士団に運ばれた。

 レオンたちはその足で冒険者教会に向かうと、レオンに依頼書をくれた試験官が、安どの表情を浮かべながら出迎えてくれた。

「良かった、レオン、アルス。君たちが無事で。実に申し訳ない。手違いで、君に提示した依頼書の中に、レベル20の依頼書が混じっていたんだ。君たちが受けた依頼が、レベル20の依頼だったんだ」

 レオンは納得した。レオンが山賊退治を選んだ理由は、依頼が早く終わると考えたからだ。他の依頼書は、畑のお手伝いだとか、教会の建て替えのお手伝いだとか、力仕事なうえ、期間の長い依頼が多かったからだ。

 だがレオンとアルスは依頼をやり遂げた。これで冒険者になれるのだろうか。レオンははやる気持ちを抑えながら、試験官に質問しようとしたが、それよりも先に、ルーカスが試験官に質問した。

「試験官さん!これでレオンは冒険者になれるんですよね?!」

 それを聞いた試験官は困った顔をしながら、ためらいがちに答えた。

「確かにレオンとアルスはレベル20の依頼をやり遂げた。だが、厳密にいうと、レオンたちは冒険者見習いという立場になる」

 ルーカスは納得いかずに不服を言った。試験官はルーカスをなだめてからレオンに向き直って言った。

「レオン、君たちは冒険者の素質がある。だから三ヶ月間の研修を受けて、もう一度冒険者試験に望んでほしい。できるかい?」

 レオンが冒険者になるためには、さらに期間が必要なようだ。迷う気持ちはなかった。レオンはきっぱりと返事をした。

「はい!研修を受けさせてください!」
 



 
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