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ラウラにとってのレオン

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 レオンはルーカスとの幼い頃の記憶をぼんやり思い出し、すごいのはルーカスであって、自分はやっぱり何もできない奴だと考えていたのだが、それを言うとルーカスがまた怒ると思ったので、レオンは黙っていた。

 ラウラはジッとレオンを見つめて言った。

「私だってそうよ、レオンは私の恩人なんだから」
「恩人?ラウラは大げさだなぁ。それなら僕の方がいつもラウラに助けられているから、ラウラが僕の恩人だよ」

 ラウラはとても勝気な女の子で、正義感が強かった。したがって、レオンとルーカスがカッタにいじめられていると、文字通り烈火のごとく怒り、自身の火魔法を使ってレオンたちをカッタから助けてくれた。

 ラウラは微笑みながら首を振って言った。

「ううん、カッタの事は私が勝手にした事よ。だからレオンが恩義に感じる事はちっともないわ。私が言っているのは、パパとの事よ。私が小さい頃、冒険者になるって言ったら、パパは猛反対して、大ゲンカになった事あったじゃない?その時、レオンが一生懸命私の味方になってくれたわ」

 そういえばそんな事もあった。ラウラの父親は寡黙な人で、ラウラに口うるさくする事はなかった。だがラウラが将来冒険者になりたいと言った途端、父親は激怒したのだ。

 女が冒険者になるなんて、みっともない。絶対に許さない。

 これを聞いたラウラは猛反発した。パパなんて大っ嫌い。もう一生口聞かない。ラウラは泣きながら怒っていた。

 レオンはラウラと、彼女の父親の事を考えた。ラウラの父親は、彼女を甘やかす事はなかったが、心から愛している事は見ていてよくわかった。

 きっとラウラの父親は、ラウラの事が心配だから、冒険者になる事を許さないと言ったのだろう。レオンはラウラに言った。

「ラウラのパパは、ラウラの事が大好きだから、冒険者になる事を反対しているんだと思うよ?」
「違うわ、パパはうらやましいのよ。私が外の世界に行くのが。自分は勇気がなくて外の世界に出なかったくせに。パパは私をずっとこの村に閉じこめておきたいのよ」
「そういう気持ちもあるかもしれないね?ラウラがずっと村にいてくれれば、パパは大好きなラウラとずっと一緒にいられるもの。だけどラウラが冒険者になって、どこか遠い場所で、危険な目にあっても、パパは助けに行けない。それが心配なんだよ」
「私の使える魔法は火魔法よ?パパは水魔法。だから私の方が強いわ」

 ラウラの使う火魔法は、村の中でもとても強力だ。ラウラは自身の火魔法を誇りに思い、それは自信にもつながっているのだろう。レオンはそうだね、とうなずいてから、言った。

「それでも君のパパは、心配なんだよ。僕だってそうだよ?ラウラが冒険者になって村を出たら、ずっと心配だよ」

 レオンの言葉に、ラウラは驚いた顔をして振り向いて言った。

「え?!レオンも私と一緒に冒険者になるでしょ?!」

 ラウラはレオンも冒険者になると信じて疑わないようだ。レオンは苦笑して答えた。

「うん、僕の将来の夢は冒険者だよ?だけど僕の使える魔法は植物を育てる魔法。戦闘向きじゃない」
「でも、十五歳になって精霊と契約したら、きっと強い魔法を使えるようになるわ?」
「うん、そうだね。でも、僕と契約してくれる精霊が、ウィリディスのような争いを嫌う優しい精霊だったら、僕は無理して冒険者にはならないかもしれない」

 レオンは、ショックを受けた顔をしているラウラの瞳を見て言った。

「だからね?ラウラ。僕は、冒険者になりたくて、仕方ないラウラの気持ちも、冒険者になったラウラを送り出す心配をするパパの気持ちも、どっちもわかるんだ。だから、パパともっと話し合って?僕も一緒にいるから」

 ラウラは悲しそうな表情になりながら、小さくうなずいた。

 それからラウラと父親は話し合い、彼女は冒険者になる事を許された。レオンは特に何もしていない。ラウラがレオンに恩義を感じている事がよくわからなかった。
 
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