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ルーカスにとってのレオン

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 審判は、すごい剣幕で現れたルーカスとラウラにタジタジになりながら、協会に話してくると言って、その場を離れた。

 レオンは申し訳なくなって二人に言った。

「もういいんだよ。今回は諦めて、また来年アルと試験を受け直すよ。それにしてもルーカスとラウラはすごいや、一回で合格しちゃうんだもの。僕なんか、やっぱりカッタの言う通り、ダメ人間なんだ」

 レオンはつい弱気になって、自嘲気味に言った。同じクラスのカッタは、一日前から城下町に着いて、早い受験番号を受け取り、契約精霊のパンツァーと共に、早々に冒険者の資格を得て帰って行った。

 カッタは幼い頃からどんくさいレオンをバカにしていた。お前はダメな人間だ。精霊と契約などしたら、精霊が迷惑だ、と。本当にそうかもしれない。アルスはレオンではなく、もっといい精霊族と契約していれば、こんな結果にはならなかったかもしれない。レオンは何だか悲しくなって下をむくと、正面の二人は大声で叫んだ。

「「そんなわけない!!」」

 またしてもルーカスとラウラの声がかぶった。レオンが驚いて二人の顔を見ると、二人は何故か怒った顔をしていた。ルーカスが低い声で言った。

「ふざけんなよ!何で、カッタみてぇなクズ野郎の言葉をまにうけるんだよ?!レオンはなぁ、すっげぇ奴なんだよ!」

 ルーカスのいつにない剣幕にレオンは驚きながら彼を見つめた。ルーカスは苦しそうに、右手で胸元をつかみながら言った。

「レオンは、お前は、誰も味方がいない時に、俺の味方になってくれた奴だ。俺は、今も臆病だけど、ガキの頃はもっと臆病だった。俺は暗闇が怖くって、夜一人で外に出るのを怖がった。それを知った親父がキレて、夜の森に入って、夜中しか咲かない花を摘んで来いっていわれた」

 そういえばそんな事があった。レオンは小さな頃の記憶を思い出した。ルーカスの父親は、とても厳しい人で、ルーカスを男らしく育てたかったようだ。だが幼い頃のルーカスは、とても臆病の泣き虫で、レオンと共にいつもカッタにいじめられていた。

 ある日ルーカスが泣いているので、訳を聞くと、父親に夜中一人で月下美人の花を摘んでこいといわれたらしい。

 レオンはルーカスが闇夜が怖い事を知っていたので、一緒について行く事にした。

 その日の夜中、レオンがルーカスの家の近くの林で待っていると、小さなランプを持ったルーカスがこわごわ外に出て来た。

 レオンはルーカスに手を振って合図すると、泣き出しそうだったルーカスの顔が、少し笑顔になった。

 ルーカスは道すがら、鼻をぐずぐずさせながら、言った。

「お、俺、ダメな奴なんだ。父ちゃんが言ってた。お前みたいな弱虫は、立派な大人になれっこないって。母ちゃんも、そうだって言っていた」

 レオンは落ち込むルーカスを痛ましそうに見ていた。ルーカスの両親が、愛する息子を本気で悪く言うわけがない。ルーカスの両親は、ルーカスが立派になってくれる事を願って、あえてキツイ言葉を投げかけるのだろう。だが今のルーカスには、その言葉は響かず、かえって自信を無くさせているようだ。

 レオンはルーカスの手を握って言った。ルーカスの手はとても冷たく、震えていた。レオンは手に持ったランプを顔の高さまであげて、ルーカスの目を見て言った。

「ルーカスは弱虫なんかじゃない。だって、僕がカッタにいじめられていたら、いつも助けに来てくれるじゃないか」
「だ、だってそれは、俺がカッタにいじめられていたら、いつもレオンが助けに来てくれるから、」

 ルーカスはレオンがカッタにいじめられていると、いつも助けに来てくれた。ブルブル震えながら、目には涙を浮かべながら。だからレオンだとて、ルーカスの危機にはかけつけた。

 レオンは微笑んでルーカスに言った。

「ねぇ、ルーカス。人には誰にも怖いものってあると思う。ルーカスは暗闇が怖いけど、僕はカミナリが怖い。だからさ、僕がカミナリが怖い時は、ルーカスが僕をはげまして?ルーカスが暗闇が怖い時は、僕がルーカスの側にいるよ?」
「レオン。ありがとう」

 ルーカスは目に涙を浮かべなが笑った。その後ルーカスは身長がグングン伸び、ルーカスの使える風魔法も強力になった。

 カッタの使う魔法は身体の硬化だ。接近しなければ使う事ができない。だがルーカスは風魔法でカッタを吹っ飛ばす事ができるので、次第にカッタはルーカスをいじめなくなった。

 レオンの魔法は植物を育てるだけなので、変わらずレオンはカッタにいじめられていた。だがレオンがいじめられていると、ルーカスがすぐにレオンを助けてくれるようになった。
 



 

 
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