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神の力の限界

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 レオンはぐったりしたアルスを抱えたまま、家に走り帰った。レオンは泣き出しそうな気持ちになりながら母に言った。

「母さん!アルが変になっちゃった!」

 母のサンドラはレオンからアルスを受け取って抱き上げると、アルスのおでこにくちびるをつけて言った。

「熱は、ないようね?眠いんじゃないかしら。ウィリー?」

 サンドラのとなりに精霊のウィリディスが近寄って来た。彼女はサンドラが抱き上げているアルスの頭に手を触れて言った。

「レオン。アルスさまに何をしたの?」
「僕、アルの魔法が見たいって言ったんだ。アルは、この姿では魔法が使えないって言って、僕の作ったりんごを食べて元の姿に戻って魔法を使ってくれたんだ。そしたら、具合が悪くなっちゃったみたいで、」

 ウィリディスは険しい顔をしながら、レオンの話しを聞いていた。レオンは、自分はとんでもない事をしてしまったのではないかと後悔した。ウィリディスはフウッとため息を吐いてからレオンに言った。

「レオン、アルスさまは神なの。だからものすごい力を発揮できる。だけどね、元に戻ったら小さな子供なの。小さな子供がものすごい魔力を使ったら、とても疲れちゃうでしょ?アルスさまは今疲れて眠っているの」

 レオンは母に言われ、アルスをベッドに寝かせた。アルスはレオンがいくら呼びかけても起きる事はなかった。それは翌日の朝になっても続いた。

 レオンはアルスの事が心配で、学校に行く事を嫌がったが、母のサンドラは許さなかった。アルスの事は自分たちに任せて学校に行くようにとさとされた。

 レオンはアルスが自分の作ったりんごを食べたいと言っていた事を思い出し、外の庭でりんごの木を作ると、両手に抱えるほどのりんごを収穫して母に渡し、学校に向かった。

 学校では、クラスメイトたちが浮き足だっていた。もうすぐレオンたちは学校を卒業するのだ。卒業後の生徒たちの進路は様々だ。村で親の仕事を手伝う者。都会に出て仕事を探す者。

 中でも人気の職業は、やはり冒険者だ。王都の冒険者協会で、冒険者登録をし、冒険の旅に出るのだ。

 精霊族は、精霊と契約して強い魔法を使う事ができる。レオンの幼なじみのルーカスとラウラも、自身の契約精霊シルフィとフレアと共に冒険者になるのが夢だ。

 レオンもそのつもりでいた。自身と契約したアルスと共に、冒険者になろうとした。神の力を解放したアルスはすごかった。おそらくクラスメイトのどの契約精霊よりも強大な魔法が使えるだろう。

 しかしその力もわずかな時間限定だ。しかも使った後、アルスは動けないほど疲れてしまう。こんな状態では危険の多い冒険者は難しいかもしれない。



 

 

 

 
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