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ドラゴンのフローラ
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グリフの大きい手が、ポンポンと優しくあかりの背中をリズムよく叩いてくれる。まるで小さな子供にするみたいな扱いにあかりは腹が立ったが、事実あかりは先ほどまで小さな子供のように泣きじゃくっていたのだ。あかりの涙がようやく止まった頃、あかりたちのいる場所の日が急に陰った。あかりが顔を上にあげると、小山のように大きなドラゴンが優しい瞳であかりたちを見下ろしていた。ドラゴンのフローラは穏やかな声であかりとグリフに言った。
『メリッサ、グリフ。助けてくれてありがとう』
あかりはすぐさま返事をしようと思ったが、泣きすぎたせいで鼻がつまり、のどもガラガラで、すぐに声が出なかった。すかさずグリフが返事をした。
「なあにいいって事よ。娘の願いを叶えるのは父親の役目だからな。メリッサがフローラを助けたいと願った、だから俺は手伝った。それだけだ」
フローラは微笑んでうなずいた。あかりが鼻をグズグズさせていると、ヒョウのセレーナが側にやってきて、あかりの頬を鼻でチョンとつついた。すると先ほどまで感じていた、泣きすぎてガンガンする頭の痛みと目の腫れ、鼻がつまった息苦しさが一瞬で治ってしまった。セレーナが治癒魔法を使ってくれたようだ。あかりはセレーナに礼を言ってからフローラに答えた。
「フローラ、貴女が無事で本当に良かったわ」
フローラは微笑んであかりに答えた。
『メリッサ、貴女の事はぼうやから聞いたわ。とても心の綺麗な娘さんなのね。ねぇ、私とも真の名の契約をしてくれないかしら?』
フローラの申し出に、ドラゴンのグラキエースが叫んで反対した。
『フローラ!一体何を言いだすんじゃ?!』
フローラは自身の養い子をにらんで言った。
『もとはといえばぼうやがいけないのよ?ちっとも会いに来てくれないんだもの。メリッサと契約すればいつでもぼうやと会えるでしょ?』
『・・・』
フローラの言葉にグラキエースは苦虫を嚙みつぶしたような顔をして黙りこんでしまった。あかりは笑って答えた。
「貴女と契約できたら光栄だわ、フローラ」
『ありがとうメリッサ。ぼうやと共に私も貴女の事を守るわ』
小山のようなフローラとあかりが淡く光りだす。真の名の契約が成立したのだ。フローラは一息ついてから、ソワソワしだして言った。
『ねぇメリッサ。ヘレンは無事かしら?』
あかりはうなずいてヒョウのセレーナに視線を移した。セレーナは心得たようにうなずいて言った。
『ヘレン』
セレーナの言葉に、金色の美しいキツネが現れた。ヘレンはドラゴンのフローラを見ると、翼をはばたかせてフローラの顔近くまで飛んで行った。
『フローラ、助かったのね?!』
『ええ、メリッサたちに助けてもらったわ』
ヘレンは安心したように微笑んでから、黒く美しい瞳からポロポロ涙を流して言った。
『フローラ、本当にごめんなさい。私のせいで貴女を危険な目に合わせてしまったわ』
泣き続けるヘレンに、フローラは優しい声で答えた。
『それは違うわヘレン。貴女がぼうやたちに私を助けてくれるよう頼んでくれたからこそ私は助かったのよ?だから改めて言わせて?ヘレン、私を助けてくれてありがとう』
ヘレンはボロボロ泣きながら言った。
『私、私もっと魔法が上手くなりたい。フローラみたいに誰かを助けられるように』
『あら、それなら私が教えてあげるわ?貴女の魔法が上達するまで私の側にいてちょうだい』
『本当?!フローラ?』
『ええ、勿論よ。だってヘレンは私の大切なお友達ですもの』
キツネのヘレンは嬉しそうにフローラの頬に顔をすり寄せた。あかりはフローラとヘレンの姿を微笑みながら見上げていた。あかりは、グリフもフローラも誰も死ななくて本当に良かったと心から安どした。
『メリッサ、グリフ。助けてくれてありがとう』
あかりはすぐさま返事をしようと思ったが、泣きすぎたせいで鼻がつまり、のどもガラガラで、すぐに声が出なかった。すかさずグリフが返事をした。
「なあにいいって事よ。娘の願いを叶えるのは父親の役目だからな。メリッサがフローラを助けたいと願った、だから俺は手伝った。それだけだ」
フローラは微笑んでうなずいた。あかりが鼻をグズグズさせていると、ヒョウのセレーナが側にやってきて、あかりの頬を鼻でチョンとつついた。すると先ほどまで感じていた、泣きすぎてガンガンする頭の痛みと目の腫れ、鼻がつまった息苦しさが一瞬で治ってしまった。セレーナが治癒魔法を使ってくれたようだ。あかりはセレーナに礼を言ってからフローラに答えた。
「フローラ、貴女が無事で本当に良かったわ」
フローラは微笑んであかりに答えた。
『メリッサ、貴女の事はぼうやから聞いたわ。とても心の綺麗な娘さんなのね。ねぇ、私とも真の名の契約をしてくれないかしら?』
フローラの申し出に、ドラゴンのグラキエースが叫んで反対した。
『フローラ!一体何を言いだすんじゃ?!』
フローラは自身の養い子をにらんで言った。
『もとはといえばぼうやがいけないのよ?ちっとも会いに来てくれないんだもの。メリッサと契約すればいつでもぼうやと会えるでしょ?』
『・・・』
フローラの言葉にグラキエースは苦虫を嚙みつぶしたような顔をして黙りこんでしまった。あかりは笑って答えた。
「貴女と契約できたら光栄だわ、フローラ」
『ありがとうメリッサ。ぼうやと共に私も貴女の事を守るわ』
小山のようなフローラとあかりが淡く光りだす。真の名の契約が成立したのだ。フローラは一息ついてから、ソワソワしだして言った。
『ねぇメリッサ。ヘレンは無事かしら?』
あかりはうなずいてヒョウのセレーナに視線を移した。セレーナは心得たようにうなずいて言った。
『ヘレン』
セレーナの言葉に、金色の美しいキツネが現れた。ヘレンはドラゴンのフローラを見ると、翼をはばたかせてフローラの顔近くまで飛んで行った。
『フローラ、助かったのね?!』
『ええ、メリッサたちに助けてもらったわ』
ヘレンは安心したように微笑んでから、黒く美しい瞳からポロポロ涙を流して言った。
『フローラ、本当にごめんなさい。私のせいで貴女を危険な目に合わせてしまったわ』
泣き続けるヘレンに、フローラは優しい声で答えた。
『それは違うわヘレン。貴女がぼうやたちに私を助けてくれるよう頼んでくれたからこそ私は助かったのよ?だから改めて言わせて?ヘレン、私を助けてくれてありがとう』
ヘレンはボロボロ泣きながら言った。
『私、私もっと魔法が上手くなりたい。フローラみたいに誰かを助けられるように』
『あら、それなら私が教えてあげるわ?貴女の魔法が上達するまで私の側にいてちょうだい』
『本当?!フローラ?』
『ええ、勿論よ。だってヘレンは私の大切なお友達ですもの』
キツネのヘレンは嬉しそうにフローラの頬に顔をすり寄せた。あかりはフローラとヘレンの姿を微笑みながら見上げていた。あかりは、グリフもフローラも誰も死ななくて本当に良かったと心から安どした。
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