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村の再生

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 ゼキーグに捕らえられた村人たちは全部で六十人だった。だかゼキーグの屋敷の地下牢で助け出された村人は四十二人だけたった。生き残った村人たちは見るも無残な拷問をくわえられていた。治癒魔法が使えるグリフとアスラン、グラキエースは彼らの治療に専念していた。

 あかりはふと思いついた事を子虎のティグリスに質問した。

「ねぇティグリス、あなたの守護者のレオの魔法でケガした人たちを元に戻す事はできないかしら?」

 ティグリスはすまなそうに答えた。

「オヤジの時間を戻す魔法は制限が多いんだ。ケガをしたならヴィヴィの時みたいにすぐじゃなきゃダメなんだ。村のおっちゃんたちみたいにケガして何日も経ってちゃあ元に戻せないんだ」

 すまなそうにするティグリスに、あかりは気にしないでと言ってティグリスの頭を優しく撫でた。

 村人たちが亡くなった村人の遺体を探すため、ゼキーグの屋敷の裏の土を掘り起こすと沢山の死体が出てきた。そこには村では生け贄にしていない女性の死体も多数あった。どうやらゼキーグは雇い入れた女性も殺していたようだ。村人たちの遺体は損傷がひどく、家族の者の確認を困難にした。村長はゼキーグによって亡くなった者たちを村で手厚く葬った。

 生け贄にされた村人たちのケガが少しずつ良くなると、グリフは土魔法を駆使して義眼や入れ歯の作製に取りかかった。ケガをして容姿が変わってしまった村人たちはたいそう喜んだ。そして入れ歯を入れれば固い食べ物も食べられるようになる。歯の無い村人たちはそれまでスープしか食べられなかったのだ。

 アスランは義眼も入れ歯も作れないので、畑の手伝いをかって出た。だが慣れないクワをふるう仕事にしくはっくしていた。あかりはというと、村の子供たちと遊んでいた。大人たちはやっと作物が収穫できるようになった畑の仕事で大忙しだったからだ。

 気づけばあかりたち随分とサラエの村に長く滞在していた。ケガをした村人の体調が良くなった頃、あかりたちはこの村を辞する事にした。村長は村中の貴金属をかき集めてあかりたちの報酬に当てようとした。だがグリフは受け取らなかった。これはあかりたちの間で以前から決めていた事柄だった。報酬を受け取ってもらわなければ困ると頑張る村長に、グリフは笑って言った。

「なぁ村長さん。もし村長さんの目の前で小さな子供が転んで泣き出したらどうするかい?」

 村長はよどみなく答えた。勿論子供を抱き起こして、服についたドロを払い泣き止むようなぐさめるだろうと。グリフはうなずいて言葉を続ける。

「だよな、村長さんはじいさんだが元気だし、杖もついていない。そして小さな子供なら自分でも抱き起こせるだろう。だがこれが倒れいるのが大男で、村長さんが足を悪くして杖もついていたらどうだろう?村長さんは自分では大男を助け起こさず、誰か助けられる人間を探しに行くだろう?」

 村長はグリフが何を言っているのか分からず首をかしげた。グリフは再び話し出す。

「俺たちも同じなんだよ。俺たちはこの村の困り事を解決できるだけの力があると分かってたからやったんだ。畑の土を治すのも、クソッタレな領主を退治するのも俺たちには簡単な事だ。だから村長さんたちが恩義に感じる事なんてないんだぜ?俺たちは自分たちのできる事をしただけだ。もし俺たちに恩義を感じてくれているなら、この村に困っている旅人が助けを求めてやってきた時に世話してやってくれねぇかな?」

 村長はグリフの顔をジッと見て、何かに耐えるように顔をゆがめてから、一言ありがとうと言った。


 あかりたちは再び東に向かって進んだ。あかりには一つ気になる事があった、どことなくアスランの元気がないのだ。アスランの愛馬アポロンはアスランの事をしきりに気にしていた。そんなアポロンを、アスランは心配ないよと言って笑ってなだめるのだ。それに反してグリフの機嫌がものすごく悪くなっていく。グリフはものすごい目でアスランをにらんでいた。いつもならばグリフのケンカをアスランがすぐに買って殴り合いのケンカになるのに。アスランはグリフと目も合わせないのだ。あかりはそんな二人の様子を不安げに見ていた。
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