78 / 118
村の再生
しおりを挟む
ゼキーグに捕らえられた村人たちは全部で六十人だった。だかゼキーグの屋敷の地下牢で助け出された村人は四十二人だけたった。生き残った村人たちは見るも無残な拷問をくわえられていた。治癒魔法が使えるグリフとアスラン、グラキエースは彼らの治療に専念していた。
あかりはふと思いついた事を子虎のティグリスに質問した。
「ねぇティグリス、あなたの守護者のレオの魔法でケガした人たちを元に戻す事はできないかしら?」
ティグリスはすまなそうに答えた。
「オヤジの時間を戻す魔法は制限が多いんだ。ケガをしたならヴィヴィの時みたいにすぐじゃなきゃダメなんだ。村のおっちゃんたちみたいにケガして何日も経ってちゃあ元に戻せないんだ」
すまなそうにするティグリスに、あかりは気にしないでと言ってティグリスの頭を優しく撫でた。
村人たちが亡くなった村人の遺体を探すため、ゼキーグの屋敷の裏の土を掘り起こすと沢山の死体が出てきた。そこには村では生け贄にしていない女性の死体も多数あった。どうやらゼキーグは雇い入れた女性も殺していたようだ。村人たちの遺体は損傷がひどく、家族の者の確認を困難にした。村長はゼキーグによって亡くなった者たちを村で手厚く葬った。
生け贄にされた村人たちのケガが少しずつ良くなると、グリフは土魔法を駆使して義眼や入れ歯の作製に取りかかった。ケガをして容姿が変わってしまった村人たちはたいそう喜んだ。そして入れ歯を入れれば固い食べ物も食べられるようになる。歯の無い村人たちはそれまでスープしか食べられなかったのだ。
アスランは義眼も入れ歯も作れないので、畑の手伝いをかって出た。だが慣れないクワをふるう仕事にしくはっくしていた。あかりはというと、村の子供たちと遊んでいた。大人たちはやっと作物が収穫できるようになった畑の仕事で大忙しだったからだ。
気づけばあかりたち随分とサラエの村に長く滞在していた。ケガをした村人の体調が良くなった頃、あかりたちはこの村を辞する事にした。村長は村中の貴金属をかき集めてあかりたちの報酬に当てようとした。だがグリフは受け取らなかった。これはあかりたちの間で以前から決めていた事柄だった。報酬を受け取ってもらわなければ困ると頑張る村長に、グリフは笑って言った。
「なぁ村長さん。もし村長さんの目の前で小さな子供が転んで泣き出したらどうするかい?」
村長はよどみなく答えた。勿論子供を抱き起こして、服についたドロを払い泣き止むようなぐさめるだろうと。グリフはうなずいて言葉を続ける。
「だよな、村長さんはじいさんだが元気だし、杖もついていない。そして小さな子供なら自分でも抱き起こせるだろう。だがこれが倒れいるのが大男で、村長さんが足を悪くして杖もついていたらどうだろう?村長さんは自分では大男を助け起こさず、誰か助けられる人間を探しに行くだろう?」
村長はグリフが何を言っているのか分からず首をかしげた。グリフは再び話し出す。
「俺たちも同じなんだよ。俺たちはこの村の困り事を解決できるだけの力があると分かってたからやったんだ。畑の土を治すのも、クソッタレな領主を退治するのも俺たちには簡単な事だ。だから村長さんたちが恩義に感じる事なんてないんだぜ?俺たちは自分たちのできる事をしただけだ。もし俺たちに恩義を感じてくれているなら、この村に困っている旅人が助けを求めてやってきた時に世話してやってくれねぇかな?」
村長はグリフの顔をジッと見て、何かに耐えるように顔をゆがめてから、一言ありがとうと言った。
あかりたちは再び東に向かって進んだ。あかりには一つ気になる事があった、どことなくアスランの元気がないのだ。アスランの愛馬アポロンはアスランの事をしきりに気にしていた。そんなアポロンを、アスランは心配ないよと言って笑ってなだめるのだ。それに反してグリフの機嫌がものすごく悪くなっていく。グリフはものすごい目でアスランをにらんでいた。いつもならばグリフのケンカをアスランがすぐに買って殴り合いのケンカになるのに。アスランはグリフと目も合わせないのだ。あかりはそんな二人の様子を不安げに見ていた。
あかりはふと思いついた事を子虎のティグリスに質問した。
「ねぇティグリス、あなたの守護者のレオの魔法でケガした人たちを元に戻す事はできないかしら?」
ティグリスはすまなそうに答えた。
「オヤジの時間を戻す魔法は制限が多いんだ。ケガをしたならヴィヴィの時みたいにすぐじゃなきゃダメなんだ。村のおっちゃんたちみたいにケガして何日も経ってちゃあ元に戻せないんだ」
すまなそうにするティグリスに、あかりは気にしないでと言ってティグリスの頭を優しく撫でた。
村人たちが亡くなった村人の遺体を探すため、ゼキーグの屋敷の裏の土を掘り起こすと沢山の死体が出てきた。そこには村では生け贄にしていない女性の死体も多数あった。どうやらゼキーグは雇い入れた女性も殺していたようだ。村人たちの遺体は損傷がひどく、家族の者の確認を困難にした。村長はゼキーグによって亡くなった者たちを村で手厚く葬った。
生け贄にされた村人たちのケガが少しずつ良くなると、グリフは土魔法を駆使して義眼や入れ歯の作製に取りかかった。ケガをして容姿が変わってしまった村人たちはたいそう喜んだ。そして入れ歯を入れれば固い食べ物も食べられるようになる。歯の無い村人たちはそれまでスープしか食べられなかったのだ。
アスランは義眼も入れ歯も作れないので、畑の手伝いをかって出た。だが慣れないクワをふるう仕事にしくはっくしていた。あかりはというと、村の子供たちと遊んでいた。大人たちはやっと作物が収穫できるようになった畑の仕事で大忙しだったからだ。
気づけばあかりたち随分とサラエの村に長く滞在していた。ケガをした村人の体調が良くなった頃、あかりたちはこの村を辞する事にした。村長は村中の貴金属をかき集めてあかりたちの報酬に当てようとした。だがグリフは受け取らなかった。これはあかりたちの間で以前から決めていた事柄だった。報酬を受け取ってもらわなければ困ると頑張る村長に、グリフは笑って言った。
「なぁ村長さん。もし村長さんの目の前で小さな子供が転んで泣き出したらどうするかい?」
村長はよどみなく答えた。勿論子供を抱き起こして、服についたドロを払い泣き止むようなぐさめるだろうと。グリフはうなずいて言葉を続ける。
「だよな、村長さんはじいさんだが元気だし、杖もついていない。そして小さな子供なら自分でも抱き起こせるだろう。だがこれが倒れいるのが大男で、村長さんが足を悪くして杖もついていたらどうだろう?村長さんは自分では大男を助け起こさず、誰か助けられる人間を探しに行くだろう?」
村長はグリフが何を言っているのか分からず首をかしげた。グリフは再び話し出す。
「俺たちも同じなんだよ。俺たちはこの村の困り事を解決できるだけの力があると分かってたからやったんだ。畑の土を治すのも、クソッタレな領主を退治するのも俺たちには簡単な事だ。だから村長さんたちが恩義に感じる事なんてないんだぜ?俺たちは自分たちのできる事をしただけだ。もし俺たちに恩義を感じてくれているなら、この村に困っている旅人が助けを求めてやってきた時に世話してやってくれねぇかな?」
村長はグリフの顔をジッと見て、何かに耐えるように顔をゆがめてから、一言ありがとうと言った。
あかりたちは再び東に向かって進んだ。あかりには一つ気になる事があった、どことなくアスランの元気がないのだ。アスランの愛馬アポロンはアスランの事をしきりに気にしていた。そんなアポロンを、アスランは心配ないよと言って笑ってなだめるのだ。それに反してグリフの機嫌がものすごく悪くなっていく。グリフはものすごい目でアスランをにらんでいた。いつもならばグリフのケンカをアスランがすぐに買って殴り合いのケンカになるのに。アスランはグリフと目も合わせないのだ。あかりはそんな二人の様子を不安げに見ていた。
0
お気に入りに追加
1,161
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる