37 / 118
メリッサの決意
しおりを挟む
次の日の朝、あかりが目を覚ますとアスランはもう起きていた。アスランの顔色を見ると、昨日よりは大分マシになっていた。アスランとグリフとあかりは朝食の準備をした。アスランとグリフが土魔法で野菜を作ってくれるので食べ物に困る事はなかった。アポロンにはニンジン、ティグリスとグラキエースはりんごを用意してもらった。朝食は野菜スープだ。あかりとグリフは完食したが、アスランは食欲がなくあかりを心配させた。簡単な朝食をとった後、あかりはアスランに言った。
「ねぇアスラン、私剣を習いたいの。アスラン教えて?」
あかりの言葉にアスランは驚いているようだった。あかりは昨日の盗賊との戦いを、ひどく後悔していた。あかりが足手まといにならなければ、もっと違った結果になっていたのではないかと考えずにはいられなかった。このパーティはアスランもグリフもティグリスもグラキエースもアポロンも皆強力な魔法が使えるのに、あかりだけが無力だ。もしまた敵に遭遇した時、一番弱いあかりが狙われて、皆がまた危険にさらされてしまうかもしれない。
昨夜あかりはグリフに魔法を教えてくれと頼んだ。だがグリフは言いにくそうに、あかりには魔力がわずかしかないので、魔法を使うのは難しいだろうと言われてしまった。転生の女神がくれた、動物とお話ができる能力は、どうやら魔法とは無関係のようだ。そこであかりは、アスランに剣を習おうとしたのだ。困惑しているアスランに変わり、グリフが言う。
「メリッサ、剣なら俺が教えてやるぜ」
グリフはそう言うと、アスランを立たせて話しだす。
「女の剣はお色気なんだよ」
そう言ってグリフはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、アスランの首に腕をまわし、アスランの胸に自分の胸を押し付け、足をアスランの足にすりつける。アスランの顔が目に見えて青くなる。グリフはあかりに顔を向けて言った。
「男が鼻を伸ばしている時に首をかき切れば、相手はお陀仏さ。あっ、メリッサには色気なんてなかったな!」
アスランはわけのわからない叫び声をあげて、グリフに殴りかかった。グリフはその拳をヒョイッと軽く避ける。あかりは、失礼ね!とグリフに叫んだ。だが同時に安堵もしていた。グリフはアスランに対して昨日と変わらずに接してくれているのだ。アスランとグリフはなおもケンカを続けていた。
アスランが落ち着いた頃、あかりはアスランとグリフ二人に剣を習うという事に落ち着いた。アスランは土魔法であかり用の模擬刀を作ってくれた。アスランはまずあかりに、剣の構え方、素振りの仕方を教えた。そしてとてもいい笑顔で言った。
「じゃあメリッサ、今教えた素振り五百回やってみて?」
横で聞いていたグリフが慌てて言う。
「なに言ってんだ、ぼんくら!そんな事したらメリッサが疲れちまうだろ?!」
アスランはキョトンとした顔でグリフに言う。
「何かおかしいかい?僕は二歳の頃から剣の素振りは一万回やっていたよ」
「お前ん家の特殊な家庭の話なんかいいんだよ!メリッサは女の子なんだぞ?!」
グリフはあかりのために抗議をしてくれた。だがあかりはグリフを制してアスランにお辞儀をして言った。
「よろしくおねがいします」
あかりは東への道を進む途中途中で剣の稽古をつけてもらっていた。五百回の素振りは肩も腕も棒のようになり辛かった。だがあかりはどうしても強くなりたかった。もしまた魔物と契約した人間に出会ったら、あかりたちはその人を救わなければいけない。たとえその人の命を奪う事になったとしても。
そしてアスランだけにその責務を負わせるわけにはいかない。アスランは自身が傷ついても、他人を傷つける事ができない優しい人だ。しろうとのあかりが剣を練習してどのくらい上達するのか不明だが、あかりが今できる事はこれしか思いつかない、目の前にある道をひたすら突き進むしかないのだ。
あかりはどちらかといえば不器用な方だ。アスランとグリフが丁寧に剣術を教えてくれても中々思うように上達しない。だがあかりは、一つの事に集中したらそれだけに一直線になる性格だった。周りからは、融通がきかないとやゆされる事もあったが、あかりはこの集中力は自身の特技だと思っている。
あかりはひたすら剣の素振りを続けた。アスランは、剣技とは咄嗟に反応しなければ意味をなさないと言っていた。頭で考えて動いては間に合わないのだ。そのためひたすら剣の動作を反復練習して、その動作を無意識のうちでも再現できるようにしなければいけないのだ。
アスランは度々あかりの剣の素振りの姿勢を直してくれる。そうすると、数十回に一度くらいは良い打ち込みができる時がある。だがしばらくするとまたしっくりこない素振りになってしまうのだ。あかりはアスランが直してくれる姿勢を思い出しながらひたすら素振りを続けた。
「ねぇアスラン、私剣を習いたいの。アスラン教えて?」
あかりの言葉にアスランは驚いているようだった。あかりは昨日の盗賊との戦いを、ひどく後悔していた。あかりが足手まといにならなければ、もっと違った結果になっていたのではないかと考えずにはいられなかった。このパーティはアスランもグリフもティグリスもグラキエースもアポロンも皆強力な魔法が使えるのに、あかりだけが無力だ。もしまた敵に遭遇した時、一番弱いあかりが狙われて、皆がまた危険にさらされてしまうかもしれない。
昨夜あかりはグリフに魔法を教えてくれと頼んだ。だがグリフは言いにくそうに、あかりには魔力がわずかしかないので、魔法を使うのは難しいだろうと言われてしまった。転生の女神がくれた、動物とお話ができる能力は、どうやら魔法とは無関係のようだ。そこであかりは、アスランに剣を習おうとしたのだ。困惑しているアスランに変わり、グリフが言う。
「メリッサ、剣なら俺が教えてやるぜ」
グリフはそう言うと、アスランを立たせて話しだす。
「女の剣はお色気なんだよ」
そう言ってグリフはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、アスランの首に腕をまわし、アスランの胸に自分の胸を押し付け、足をアスランの足にすりつける。アスランの顔が目に見えて青くなる。グリフはあかりに顔を向けて言った。
「男が鼻を伸ばしている時に首をかき切れば、相手はお陀仏さ。あっ、メリッサには色気なんてなかったな!」
アスランはわけのわからない叫び声をあげて、グリフに殴りかかった。グリフはその拳をヒョイッと軽く避ける。あかりは、失礼ね!とグリフに叫んだ。だが同時に安堵もしていた。グリフはアスランに対して昨日と変わらずに接してくれているのだ。アスランとグリフはなおもケンカを続けていた。
アスランが落ち着いた頃、あかりはアスランとグリフ二人に剣を習うという事に落ち着いた。アスランは土魔法であかり用の模擬刀を作ってくれた。アスランはまずあかりに、剣の構え方、素振りの仕方を教えた。そしてとてもいい笑顔で言った。
「じゃあメリッサ、今教えた素振り五百回やってみて?」
横で聞いていたグリフが慌てて言う。
「なに言ってんだ、ぼんくら!そんな事したらメリッサが疲れちまうだろ?!」
アスランはキョトンとした顔でグリフに言う。
「何かおかしいかい?僕は二歳の頃から剣の素振りは一万回やっていたよ」
「お前ん家の特殊な家庭の話なんかいいんだよ!メリッサは女の子なんだぞ?!」
グリフはあかりのために抗議をしてくれた。だがあかりはグリフを制してアスランにお辞儀をして言った。
「よろしくおねがいします」
あかりは東への道を進む途中途中で剣の稽古をつけてもらっていた。五百回の素振りは肩も腕も棒のようになり辛かった。だがあかりはどうしても強くなりたかった。もしまた魔物と契約した人間に出会ったら、あかりたちはその人を救わなければいけない。たとえその人の命を奪う事になったとしても。
そしてアスランだけにその責務を負わせるわけにはいかない。アスランは自身が傷ついても、他人を傷つける事ができない優しい人だ。しろうとのあかりが剣を練習してどのくらい上達するのか不明だが、あかりが今できる事はこれしか思いつかない、目の前にある道をひたすら突き進むしかないのだ。
あかりはどちらかといえば不器用な方だ。アスランとグリフが丁寧に剣術を教えてくれても中々思うように上達しない。だがあかりは、一つの事に集中したらそれだけに一直線になる性格だった。周りからは、融通がきかないとやゆされる事もあったが、あかりはこの集中力は自身の特技だと思っている。
あかりはひたすら剣の素振りを続けた。アスランは、剣技とは咄嗟に反応しなければ意味をなさないと言っていた。頭で考えて動いては間に合わないのだ。そのためひたすら剣の動作を反復練習して、その動作を無意識のうちでも再現できるようにしなければいけないのだ。
アスランは度々あかりの剣の素振りの姿勢を直してくれる。そうすると、数十回に一度くらいは良い打ち込みができる時がある。だがしばらくするとまたしっくりこない素振りになってしまうのだ。あかりはアスランが直してくれる姿勢を思い出しながらひたすら素振りを続けた。
0
お気に入りに追加
1,160
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる