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森の一夜
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ゼノは意気揚々とアスランとメリッサたちをうながした。強硬派の霊獣たちがいる森は、ゼノの家から歩いて三日ぐらいかかるとの事。勿論グラキエースはまどろっこしいと言って、元の巨大なドラゴンになり、ゼノとメリッサたちを乗せて大空に飛び立った。
上空の風のあまりの強さに、ゼノはノーマに言って、鉱物防御魔法を発動させてもらった。アスランは愛馬アポロンにまたがって、空をかけた。目的地近くの森へは四時間くらいで到着した。もう日も暮れたので、ここで野宿する事にした。次の日の朝に霊獣たちを刺激しないように、徒歩で目的地に向かう事にする。
アスランとメリッサはテキパキと野宿の準備をした。枯れ木を拾い、焚き火をしてくれた。ゼノは精霊のノーマに頼んで、土魔法でにんじんやじゃが芋、カブを出してもらった。アスランはカバンから大きな鍋を出し、ゼノが切った野菜を入れ、塩と胡椒で味付けした。シンプルな味付けだが、メリッサとアスランは美味しいと喜んでくれた。ノーマは、アポロンにはにんじんを、ティグリスとグラキエースにはりんごを出してくれた。
腹がふくれると、メリッサとアスランはゼノの若い頃の冒険の話が聞きたいと言い出した。ゼノは喜んで話す。所々話を盛りすぎすと、すかさずノーマが言葉を挟んで訂正した。ゼノは若い頃、精霊のノーマと仲間たちと共に沢山の冒険をした。領民をしいたげる極悪な領主が雇った賞金稼ぎの戦士や魔法使いとの壮絶な戦いや、巨大な霊獣と戦い、そして和解した話。
メリッサとアスランは、目を輝かせてゼノの話を聞いていた。メリッサとアスランはとても素直で心が綺麗で、それでいてとても強い力を持っている。ゼノは少し心配になった。いずれ悪い人間に騙されてしまうのではないのだろうか。だが、ともゼノは思い直す。悪い人間に騙されても、その困難を突破できれば、さらに人間として成長できるだろう。
メリッサが目をこすり、眠そうにしだした。それに気づいたアスランがメリッサに眠るようにうながす。メリッサは、まだゼノのお話を聞くといってぐずるが、アスランは明日は忙しいのだと言ってメリッサを寝かしつけた。霊獣のティグリスが大きな虎になってメリッサを包み込む。アスランは、自分のカバンから毛布を取り出し、優しくメリッサにかけてやった。小さなドラゴンもすかさずメリッサの側で丸くなる。アスランはスースー寝息をたて出したメリッサを目を細めて見ていた。まるで仲の良い兄妹のようだ。
アスランはゼノにも毛布を渡してくれた。きっと自分の分だろう。どうやらアスランは自分は寝ないで野営をしてくれようとしているのだ。ゼノはありがたく受け取り、ノーマにある事を頼んだ。ノーマは土魔法でゼノの座っている地面にフカフカの芝生を生やしてくれた。天然のベッドだ。ゼノは横になると、アスランから借りた毛布をかけた。空を見上げると、木々の隙間から輝く星が見えていた。ゼノは目をつむりながらアスランに言った。
「アスラン、お主の姓は何と言う」
「はい、カルヴィンといいます」
「カルヴィン、アスラン・カルヴィン。お主、カルヴィン家の末っ子か!お主の性格では苦労するだろうな」
ゼノの言葉にアスランは沈黙する。肯定の意味だろう。カルヴィン家といえば、名の知れた代々勇者を輩出する家系だ。アスランの祖父も、父も、姉までも、勇者の称号を持っている。アスランはさぞ肩身の狭い思いをしているだろう。ゼノはコホンと咳をしてから話し出した。
「のぉアスラン。わしはお主の、命を尊ぶ姿勢と優しさを、とても好ましいと思っておる。じゃがなぁ、お主には今メリッサという仲間がいる。メリッサは強い霊獣とドラゴンを使役してはいるが、普通の女の子じゃ。お主の甘さが、メリッサを危険にさせないという保証はないぞ」
アスランは沈黙した後、うめくように答えた。
「メリッサは、弱い私を助けてくれた強い女の子です。メリッサは自分が傷つくのを恐れずきぜんとして悪に立ち向かって行きました。私は彼女の思いに報いなければいけません。もし彼女が危険にさらされるならば、私は彼女に危害を加える相手を剣で斬る事をためらいません」
「その言葉忘れるでないぞ。明日の霊獣との対話は難航するやもしれん、武力を使う覚悟をせぬとな」
アスランは、はい。低い声で答えた。ゼノはうむとうなずくと、眠りについた。
翌朝ゼノたちは軽く朝食を食べてから出発した。強硬派の霊獣たちが根城にしている森へ行くために。ゼノとアスランは徒歩だが、メリッサはアポロンに乗って移動する。しばらく歩くと空を飛んでいたティグリスとグラキエースが声をあげた。
『気をつけろ、ここはもう霊獣たちのテリトリーだ!』
『わしらを警戒しておるな。皆気をつけるのじゃ!』
ゼノたちは当たりに注意を向けた。
上空の風のあまりの強さに、ゼノはノーマに言って、鉱物防御魔法を発動させてもらった。アスランは愛馬アポロンにまたがって、空をかけた。目的地近くの森へは四時間くらいで到着した。もう日も暮れたので、ここで野宿する事にした。次の日の朝に霊獣たちを刺激しないように、徒歩で目的地に向かう事にする。
アスランとメリッサはテキパキと野宿の準備をした。枯れ木を拾い、焚き火をしてくれた。ゼノは精霊のノーマに頼んで、土魔法でにんじんやじゃが芋、カブを出してもらった。アスランはカバンから大きな鍋を出し、ゼノが切った野菜を入れ、塩と胡椒で味付けした。シンプルな味付けだが、メリッサとアスランは美味しいと喜んでくれた。ノーマは、アポロンにはにんじんを、ティグリスとグラキエースにはりんごを出してくれた。
腹がふくれると、メリッサとアスランはゼノの若い頃の冒険の話が聞きたいと言い出した。ゼノは喜んで話す。所々話を盛りすぎすと、すかさずノーマが言葉を挟んで訂正した。ゼノは若い頃、精霊のノーマと仲間たちと共に沢山の冒険をした。領民をしいたげる極悪な領主が雇った賞金稼ぎの戦士や魔法使いとの壮絶な戦いや、巨大な霊獣と戦い、そして和解した話。
メリッサとアスランは、目を輝かせてゼノの話を聞いていた。メリッサとアスランはとても素直で心が綺麗で、それでいてとても強い力を持っている。ゼノは少し心配になった。いずれ悪い人間に騙されてしまうのではないのだろうか。だが、ともゼノは思い直す。悪い人間に騙されても、その困難を突破できれば、さらに人間として成長できるだろう。
メリッサが目をこすり、眠そうにしだした。それに気づいたアスランがメリッサに眠るようにうながす。メリッサは、まだゼノのお話を聞くといってぐずるが、アスランは明日は忙しいのだと言ってメリッサを寝かしつけた。霊獣のティグリスが大きな虎になってメリッサを包み込む。アスランは、自分のカバンから毛布を取り出し、優しくメリッサにかけてやった。小さなドラゴンもすかさずメリッサの側で丸くなる。アスランはスースー寝息をたて出したメリッサを目を細めて見ていた。まるで仲の良い兄妹のようだ。
アスランはゼノにも毛布を渡してくれた。きっと自分の分だろう。どうやらアスランは自分は寝ないで野営をしてくれようとしているのだ。ゼノはありがたく受け取り、ノーマにある事を頼んだ。ノーマは土魔法でゼノの座っている地面にフカフカの芝生を生やしてくれた。天然のベッドだ。ゼノは横になると、アスランから借りた毛布をかけた。空を見上げると、木々の隙間から輝く星が見えていた。ゼノは目をつむりながらアスランに言った。
「アスラン、お主の姓は何と言う」
「はい、カルヴィンといいます」
「カルヴィン、アスラン・カルヴィン。お主、カルヴィン家の末っ子か!お主の性格では苦労するだろうな」
ゼノの言葉にアスランは沈黙する。肯定の意味だろう。カルヴィン家といえば、名の知れた代々勇者を輩出する家系だ。アスランの祖父も、父も、姉までも、勇者の称号を持っている。アスランはさぞ肩身の狭い思いをしているだろう。ゼノはコホンと咳をしてから話し出した。
「のぉアスラン。わしはお主の、命を尊ぶ姿勢と優しさを、とても好ましいと思っておる。じゃがなぁ、お主には今メリッサという仲間がいる。メリッサは強い霊獣とドラゴンを使役してはいるが、普通の女の子じゃ。お主の甘さが、メリッサを危険にさせないという保証はないぞ」
アスランは沈黙した後、うめくように答えた。
「メリッサは、弱い私を助けてくれた強い女の子です。メリッサは自分が傷つくのを恐れずきぜんとして悪に立ち向かって行きました。私は彼女の思いに報いなければいけません。もし彼女が危険にさらされるならば、私は彼女に危害を加える相手を剣で斬る事をためらいません」
「その言葉忘れるでないぞ。明日の霊獣との対話は難航するやもしれん、武力を使う覚悟をせぬとな」
アスランは、はい。低い声で答えた。ゼノはうむとうなずくと、眠りについた。
翌朝ゼノたちは軽く朝食を食べてから出発した。強硬派の霊獣たちが根城にしている森へ行くために。ゼノとアスランは徒歩だが、メリッサはアポロンに乗って移動する。しばらく歩くと空を飛んでいたティグリスとグラキエースが声をあげた。
『気をつけろ、ここはもう霊獣たちのテリトリーだ!』
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