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パティ対マフサ

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 パティは走りながらマフサの構えを見た。左手で剣を持っているとはいえ、ひどい構えだ。

 剣の重さに耐えきれず、上体がそっている。右腕が使えないとしても、マフサの剣技はお粗末なものだった。

 おそらく自身の魔法に陶酔し、剣の鍛錬をおろそかにしていたのだろう。このような者にパティは負ける気はしなかった。

 パティはマックスたちを守るため、血のにじむ努力をして杖の訓練をしたのだ。

 パティがマフサの剣の間合いに入ると、マフサは歪んだ笑みを浮かべて剣を振り下ろした。パティは弱々しい剣の打ち込みを杖で払いのけ、激しい突きをマフサの胸元に打ち込んだ。

 マフサは吹っ飛んで頭を強く打って気絶した。

 実にあっけない戦いだった。パティはマフサにいとも簡単に勝利したのだ。

 小さい頃のパティにとって、マフサという存在はとても恐ろしいものだった。

 身体が大きく常に大声でどなり、気に食わない事があるとパティをけったり殴ったりした。

 ドミノ村の中ではマフサは強者にはいったのだろう。だが広い世界に出てしまえば、マフサは矮小で惨めな人間だったのだ。

「チャーミー。マフサをツタでしばって」
「ニャッ」

 チャーミーは土植物ツタ魔法でマフサをグルグル巻きにした。

 パティはすぐさまジョナサン神父たちの防御ドームに近づこうとすると、村人に剣を向けている盗賊たちが叫んだ。

「そこを動くな!小娘!お前が一歩動けば村人たちが死ぬぞ?!」

 パティはそこで初めてドミノ村の人たちが盗賊たちに制圧されている事に気づいた。だが何の感情も湧かなかった。パティにとってはドミノ村の人々などどうでもいいのだ。

 真っ青な顔のドミノ村の人々を、パティは無感情にながめた。

「パティ!お願いだよ!助けて!」

 ゴンゾのおかみさんが叫ぶ。ゴンゾのおかみさんは、夫共々パティへの当たりがひどかった。

 ゴンゾのおかみさんはパティをいじめる事が大好きだったらしく、よく足をひっかけられて転ばされた。

「パティ!俺は学校でお前の面倒を見てやったよな?!なぁ、助けてくれ!」

 パティが通っていた学校の男性教師が叫ぶ。男性教師は、パティが学校に通う間徹底的に無視をきめこんでいた。

 パティがマフサに殴られている時も、遠目に眺めているだけだった。

 パティがぼんやりと村人たちを見ていると、ゴンゾが叫んだ。

「パティ!神父とチコリを連れて逃げてくれ!俺たちはお前にひどい事をした。これは俺たちが受ける報いだ」

 ゴンゾは何故か血だらけの服を着ていた。だがケガをしているようにはみえなかった。もしかしたらジョナサン神父が治癒させたのかもしれない。

 パティは一つため息をついた。ざっと広場を見渡すと、盗賊たちの数はぜんぶで九人。制圧するのに大した時間はかからなさそうだった。

 パティが足元を見ると、マックスとチャーミーがキラキラした目でパティを見上げていた。肩にはピンキーがとまり、しきりにパティの頬にすり寄っている。

 ショルダーバッグからはアクアが顔を出してパティを見上げている。

 パティはクスリと笑った。パティがどんな表情を浮かべても、友達にはすべてお見通しなのだ。

「マックス。剣を持っている盗賊たちの肩にファイヤーアロー」
「ワン!」

 剣を振り上げ、パティを威かくしていた盗賊たちは、マックスのファイヤーアローに肩を射抜かれ叫んでいた。

「アクア。村の人たちを水防御ドームで保護」
「プクプク」

 九箇所にまとめられていた村人たちは、アクアの防御ドームによって守られた。

 
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