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パティの怒り

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 パティはピンキーの背中からドミノ村を見下ろした。いつも夜中に村に帰ってくるので、日のあたる村を見るのは久しぶりだった。

 だがパティにはそんな感慨にふけっているひまはなかった。最愛の祖父であるジョナサン神父に二度と会えないかもしれない瀬戸際なのだ。

 友達のピンキーは最大限の速度で空を飛んだ。パティの目に村の広場が見えた。急いでジョナサン神父を探す。

 パティの目に大切なジョナサン神父とチコリおばあさんが目に入った。そして、今まさにジョナサンを剣で斬ろうとしているマフサも。

 パティの身体中の血液が、一気に下がった。腹の底からマグマのような怒りが湧き出した。

 マフサはジョナサン神父とチコリおばあさんを殺そうとしているのだ。

 マフサが小さい頃、自身のいたずらでケガをした時、ジョナサン神父が治癒魔法で治してくれた。マフサが熱を出しだ時、チコリおばあさんが薬草を煎じて薬を飲ましてあげた。

 幼いマフサはジョナサン神父とチコリおばあさんにずっと世話になっていたのに。パティが憎いというだけで彼らに刃を向けている。

 マフサ。お前はもういい。

 ピンキーが着地したと同時にパティは地面に飛び降り、かたわらのマックスに命じた。

「マックス。ファイヤーアロー」
「ワン!」

 マックスの放った火の矢は、剣を振り上げたマフサの右肩を撃ち抜いた。

 当初マフサは何故自分の右腕が動かなくなったのかわからないようだった。遅れてパティに攻撃された事に気づいたようだ。

「ギャアア!腕が!俺の腕が!やい、ジジイ!俺の腕を治せ!」

 ジョナサンは無表情な顔でマフサを見ているだけだった。パティはショルダーバッグの中のアクアに言った。

「アクア。神父さまとチコリおばあちゃんを水防御ドームで守って」
「プクプク」

 ジョナサンとチコリおばあさんの身体はアクアの水防御ドームにすっぽりとおおわれた。これでジョナサンたちの安全は守られるだろう。

 マフサはしばらく左手のこぶしで防御ドームを叩いていたが、パティを振り向くと左手に剣を持って叫んだ。

「パティ!貴様を殺してやる!忌子のくせに!俺は選ばれた存在なんだ!」

 パティは腰の杖(じょう)取り出して伸ばしながら言った。

「マフサ、貴方って本当に愚かね。貴方のような人間が選ばれた存在なわけないでしょ?もし選ばれた存在がいるのだとすれば、それはこの世界に生きるすべての人々が、選ばれた特別な存在なのよ。マフサが簡単に奪ってしまった人たちもね」
「言わせておけば、忌子め!」
「私は忌子なんかじゃない!それはアンタたちドミノ村の人たちが私に押しつけた役割じゃない!私は冒険者、私の働きに感謝してくれる人もいるわ。私には仲間がいる、私の事を大切な家族だと言ってくれるの。村を出てよくわかった。私の価値は私が決めるのよ!」
「ふん、よくもペラペラとへらず口が叩けるな。その口叩けないように殺してやる!」
「ええ。最初から私だけを狙えばいいのに。関係無い神父さまとチコリおばあちゃんを巻き込むなんて、本当に意気地なしね。この弱虫!可哀想なマフサにハンデをあげる。私は魔法は使わない。この武器で貴方を倒すわ」
「ほざけ!」

 パティは杖を構え、マフサに向かって走った。マフサは左手に剣を持ち振り上げた。

 

 
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