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ゼゴのその後

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 ゼゴは走った。山道をかき分けてひたすら走った。

 目指すは王都。ゼゴは食事も睡眠もけずって走り続けた。

 ついにゼゴが城下町の冒険者協会にたどり着いた時、風呂に入っていないので顔中ヒゲだらけのすごい様相だった。

 目的地にたどり着いた安堵感から、それまで感じていなかった空腹感が一気に襲ってきた。

 身綺麗にしようと思っても、ゼゴは無一文だ。途方に暮れたがこのままなわけにもいかない。冒険者協会に用がある人々が不審そうにゼゴを見ている。

 仕方なくゼゴは冒険者協会の中に入った。室内の者たちが一斉にゼゴに注目する。皆顔に嫌悪の表情を浮かべていた。

 ゼゴは受付の前で立ち尽くしてしまった。ゼゴの横に一人の女性が近づいた。

「何かご用ですか?」

 ゼゴが振り向くと、美しい女性が微笑んでいた。彼女にはゼゴに対する嫌悪感の表情はみうけられなかった。

「あ、マイラという受付嬢はいないか?」

 美しい女性はふと驚いた顔をしてからとびきりの笑顔になった。

「貴方がゼゴね。エラルドから話しは聞いているわ。ついてきて」

 ゼゴは狐につままれたようにポカンとしてしまった。マイラという女性はどんどん先に行ってしまう。ゼゴは仕方なく彼女について行った。

 マイラが連れて来たのは宿屋だった。マイラは宿屋の親父としばらく話してから、親父についていくように言った。

 宿屋の親父が風呂に案内してくれた。ゼゴは言われるがまま、風呂に入り顔のヒゲをあたった。

 風呂から出ると、それまで着ていた自分の服がなかった。代わりにシンプルな麻のシャツとズボンが置いてあった。

 ゼゴが宿屋の下に降りていくと、マイラがテーブルに座っていた。ゼゴに気づいた彼女は手を振ってここに座るように促した。

 ゼゴが席に座ると、宿屋の親父が食事を運んできた。ゼゴの腹の虫が盛大になった。

「どうしたの?温かいうちに食べなさいな」

 マイラの言葉に、ゼゴはうめくように答えた。

「金がない、」
「大丈夫よ。お金は後でエラルドから取るから」
「?。何故俺の代金をエラルドが払う?」
「何故って、貴方はエラルドの弟子でしょ?なら師匠が弟子の面倒をみなきゃ」

 マイラという女性はどこまでゼゴの事を知っているのだろう。エラルドとマイラは一体どういう関係なのだろうか。エラルドの恋人か。だがエラルドの相手にしてはいささか年齢が上のように感じる。ゼゴの表情を見たマイラは苦笑いをした。

「貴方って思っている事が全部顔に出てしまうのね?本当盗賊には向かないわね。私はね、エラルドの姉みたいなものなの」
「姉?」

 ゼゴはエラルドとマイラの顔の特徴に似ている部分を探そうとした。エラルドは整った顔のハンサムで、マイラはハッとするような美人ではあるが、二人に似ている要素はない。

「姉と言っても血はつながってないわ。私の妹がね、エラルドの弟子なの。エラルドの妹と私の妹がとても仲良しでね、妹のパティが言うのよ。ロレーナとエラルドと兄妹になりたいって。結果的に私もエラルドたちの姉になったの」

 マイラはそれだけ言うとゼゴに早く食べるようにうながした。

 ゼゴは熱々のビーフシチューを一口食べた。涙が出そうになるほど美味かった。
 


 
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