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子弟

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「立て!ゼゴ!」

 ゼゴは驚いた顔をしてエラルドを見てから、ゆっくりと立ち上がった。エラルドもウェゴの傷を見てから立ち上がる。

 ゼゴの治癒魔法の腕はかなりのものだった。ここまで傷口がふさがればウェゴは大丈夫だろう。

 エラルドは長身のゼゴを見上げながら言った。

「俺はたくさんの悪党を見てきた。はっきり言って、お前は悪党じゃない!ゼゴ、お前ザイラム盗賊団の中で浮いてただろ?」
「!。う、ああ。馴染もうと努力はしたが、無理だった」
「当たり前だ!お前は悪党ではなくいい奴だ!騎士団だってお前のような奴が捕まりにきたら迷惑だ!ゼゴ!命令だ!俺の弟子になれ!」
「・・・」
「俺にはな、弟子が二人いる。才能があるのにやる気のない奴と、才能がからきし無いのにやる気だけはある弟子だ。俺は何とか二人の弟子を半人前以上にしたんだ!それなのに、やる気も才能もある奴が目の前にいるのに、どうして俺の弟子にならないんだ!いいか、俺はもう決めた。ゼゴ、お前を俺の弟子にする!ここから消え失せろ!走れ!走って、走って王都の冒険者協会に行け!そこにマイラという受付の女がいる。そいつに自分はエラルドの弟子だと言え。必ず迎えに行く!」

 ゼゴは目を見開いてエラルドを見てから、無言できびすを返し走り出した。

 エラルドはゼゴの背中を見送ってから、意識の戻らないウェゴを肩に担いで屋敷に向かって歩き出した。

 エラルドが屋敷の門前までくると、マイラの《ボイス》が脳裏に響いた。

 〔エラルド、大丈夫?〕
「ああ、ザイラム盗賊団の統領を倒した」
 
 マイラのホウッとしたため息が聞こえる。

 〔ロレーナとパティも屋敷の中の盗賊たち全員を捕縛できたわ〕

 マイラの言葉にエラルドは深いため息をついた。ドアが開き、ロレーナが飛び出してきた。

「お兄ちゃん!聞いて聞いて?!私、チャーミと一緒にアンチ魔法の盗賊を倒したんだよ!」

 エラルドはウェゴを放り投げ、飛びついてきたロレーナを抱き上げた。

「そうか、偉いぞロレーナ」
「えへへ」

 次にドアからはパティがマックスたちと一緒に出てきた。パティは柔らかな笑顔をエラルドに向けた。

「エラルド、無事でよかった」
「パティ。ロレーナを守ってくれてありがとう」
「ううん、ロレーナはすごいのよ。とってもキモが座っていたの。私も勇気付けられたわ」

 屋敷からはとらえら少女たち、フロンの町の人々が出てきた。後からは縄でぐるぐる巻きにされた盗賊たちが続々と飛んで出てきた。どうやらピンキーの浮遊魔法のようだ。

 パティとピンキーは、最寄りの街に騎士団を呼びに行った。

 エラルドたちはその場に残り盗賊たちが逃げ出さないように見張りに残った。
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