上 下
174 / 212

計画

しおりを挟む
 ドムとノア、そして料理人たちはほうけたようにパティを見つめていた。パティは厨房の人々を見てから口を開いた。

「私たちはザイラム盗賊団の捕縛依頼を受けてやって来た冒険者です」
「冒険者?パティたちがか?」

 ドムは驚きの声をあげた。

「ええ。私たちの他に盗賊見習いとしてザイラム盗賊団に入っている仲間がいます」
「私のお兄ちゃんなんだよ!」

 パティの言葉の後、ロレーナが嬉しそうに言った。

「ああ、そういえば盗賊の下っぱたちが言ってたなぁ。すごい剣士がザイラムに入ったって。しかも憎たらしい事にすごいハンサムだって」

 ノアが驚いた表情で言った。パティは不思議に思ってノアにたずねた。

「ノアはどうして盗賊たちのうわさ話を知ってるの?」
「俺の仕事は屋敷の掃除と雑用だからな。それに、《スキップ》を使って奴らの目につかないように色んな話しを聞いているんだ」

 これは大きな助けになるかもしれない。パティは少しだまってから口を開いた。

「皆さん、聞いてください。私たちがザイラム盗賊団と戦うには、貴方たちの安全が確保されなければできません。貴方たちには安全な場所で待機していてほしいのです。それに、さらわれた女の子たちも守らなければいけません」
「・・・。ああ、私たちにできる事ならば何でも言ってくれ」

 ドムの申し出に、パティはうなずいてから答えた。

「ドムさんは、捕らえられた女の子たちに食事を提供しに行く事はできますか?」
「ああ。お昼になったら、私がワゴンを押して娘さんたちの食事を運ぶよ。一日に一回だけだからね。腹持ちもよくて美味しい食事を持って行くんだ」

 パティはうなずいてからショルダーバックの中のアクアを抱き上げた。

「ドムさん。では今日のお昼を運ぶ時、このアクアと一緒に行ってください」
「へっ?かめと?」
「アクアはただのカメではありません。アクアは水魔法を使えるカメなんです。ドムさんは女の子たちの部屋に行ったら水防御ドームを張って女の子たちとその場に待機していてください。女の子の中にオリアの町出身の女の子がいるはずです。私はその子に自己紹介をしました。きっと女の子たちを安心させてくれるはずです」

 ドムは不安げな表情でうなずき、アクアを自分のエプロンのポケットに入れた。

 パティは次にノアに向き直って言った。

「ノアは屋敷の雑用をしていると言ったわね?」
「ああ」
「じゃあ、この屋敷で働かされているフロンの町の人たちはすべて把握しているわね?」
「ああ、そうだ。俺はドムおじちゃんたち料理人と、屋敷の使用人たちに情報共有してるんだぜ」
「すごいわ、ノア。貴方が力を貸してくれればこの屋敷の中にいるフロンの町の人たちを全員助ける事ができるわ」
「!。どうすればいいんだ?!」

 パティは微笑んで自分の肩にのっているピンキーを手にとまらせてから、ノアの肩にとまらせた。

 ノアは動物が好きらしく、ピンキーに愛おしそうに頬ずりをした。

「ピンキーは風魔法を使う事ができるわ。ノアは《スキップ》で屋敷内で働いているフロンの人たちをすべて厨房に集めて?お昼になったらピンキーに風防御ドームを張ってもらう。その中にいてもらえれば、ノアたちは安全よ?」

 パティの説明に、ノアは大きくうなずいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央
恋愛
 アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。  自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。  だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。  しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。  結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。  炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥  2021年9月2日。  完結しました。  応援、ありがとうございます。  他の投稿サイトにも掲載しています。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...