究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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ドムとノア

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 ドムの言葉にパティは安どした。ドムと料理人たちは、パティたちを無視して深刻な会話をしている。

 どうやらドムたちはパティたちを逃がすかどうか審議しているようだ。彼らは善良なフロンの住人たちなのだ。

 パティたちが事のなりゆきを見守っていると、大人の輪の中にひょっこり子供が顔を出した。

「ドムおじちゃん。俺の事呼んだ?」
「おお、ノア」

 ドムはノアと呼んだ少年の頭を優しげに撫でた。ノアの歳はちょうどロレーナと同い年くらいだろうか。茶色の目がクリクリしたあどけない少年だ。

「なぁ、ノア。ここにいるパティとロレーナをフロンの町まで連れて行ってくれないか?」
「こいつら?ああ、俺の《スキップ》があればひとっ走りだぜ!こいつらフロンの町に送り届けたらすぐに戻ってくらぁ」

 ノアの魔法は《スキップ》らしい。目にも止まらない速さで走る事ができる魔法だ。配達屋や情報屋に多い魔法だ。

 そこでパティは疑問に思った。ノアの魔法が《スキップ》なら、何故一人で逃げなかったのだろうか。ノア一人ならザイラム盗賊団のアジトから逃げ出せるのではないだろうか。

「いや、ノア。フロンの町に戻ったら、親父さんの所に帰るんだ」

 そこでノアの笑顔が消えた。顔をギュッとしかめて、泣き出す前の子供のような表情になった。

「じゃあ、ドムおじちゃんも皆も一緒だ。それじゃなきゃ俺は行かない」

 ドムは聞き分けのない息子を見るような目でノアを見て言った。

「ノア。私たち全員逃げ出せば、またフロンの町で人が連行されてしまう。私たちはここから逃げられない」
「・・・。いや、だ。俺は親父に約束したんだ。必ずドムおじちゃんを連れて帰るって」
「ノア。私だってお前と離れるのは辛い。だがな、親父さんも同じ気持ちなんだぞ?」
「・・・。親父はきっともう、宿屋をたたんでるよ。ドムおじちゃんがいないから、客なんて来ないだろうしさ」

 ドムは微笑んでノアの小さな身体を抱きしめた。周りの料理人たちも泣き出しそうな目でノアを見ていた。彼らは小さなノアを盗賊たちから守っていたのだろう。

「まだ宿屋潰れてないよ。だけど時間の問題って感じだったよ?」

 深刻な雰囲気の中、ロレーナがあっけらかんと言った。ドムもノアも不思議そうにロレーナを見た。

「おい、お前。何でうちの宿屋が潰れてないってわかるんだよ」
「だって私たち昨日泊まったもの」

 ノアは泣き笑いの表情になって言った。

「親父の料理まずかったろ?」
「ううん。まずくもなく美味くもない味だったかな」
「だろうなぁ。親父は料理がヘタなんだ。あの宿屋にはドムおじちゃんがいないとダメなんだ」

 パティはスクッとイスから立ち上がった。

「ええ、宿屋ハイバネにはドムさんもノアもなくてはならないの。たがら、皆でフロンの町に帰りましょう」

 

 

 
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