究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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試験2

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 ゼゴはあぶら汗を流しながら、剣でエラルドを押し込もうとしている。エラルドは涼しい顔でゼゴを見上げ、横目でザイラム盗賊団の統領の顔を見た。

 統領はまったくの無表情だった。エラルドは苦笑を浮かべてから、ゼゴの大剣を受けている剣の角度を変えた。

 ゼゴの大剣はスーと滑るようにエラルドの剣をつたい、床に深々と刺さった。

 エラルドは目にも止まらぬ素早さで、ゼゴの首すじに刃を向けた。エラルドが一センチでも剣を進めれば、ゼゴの首から鮮血が吹き出すだろう。

「勝負あり、だろ?」

 エラルドは信じられないものを見るような視線を向けているゼゴに笑いかけた。

 ゼゴはブルブルと身体を震わせながら大剣を床から抜くと、ふらふらと統領の前に歩いて行った。

「も、申し訳ありません」

 統領はゼゴをチラリと見てから無機質な声で言った。

「自害しろ」
「はい」
 
 ゼゴはためらいなく手に持っている大剣で自身の首をかききろうとした。

「やめろ!」

 エラルドは腹の底から声を出した。統領もゼゴも盗賊たちも皆エラルドに注目している。

 これはまずい。心の中でエラルドはとても焦っていたが、表情には出さない。

「ゼゴはこれからもっと強くなる。今死んだらもったいねぇよ」

 統領は何を考えているかわからない表情でエラルドを見てから、ゼゴに視線を移して言った。

「ゼゴ、剣を下ろせ」
「はい」

 エラルドは心の中で胸を撫で下ろした。エラルドが原因で人を死なせてはいけない。エラルドはニヤニヤと笑って統領に言った。

「おい、俺は勝ったぞ。約束通りここの幹部にしろ!」
「いきがるなこぞう。入団は認めてやる。だが皆と同じ下っぱからだ」
「ちぇっ!」

 統領はエラルドをひとにらみしてからゼゴに言った。

「ゼゴ。こぞうを下っぱの部屋に連れて行け」
「はい」

 ゼゴはエラルドを見てあごをしゃくった。ついて来いというのだ。

 長い廊下を歩きながら、エラルドはゼゴにペラペラと話しかけた。

「なぁ、ゼゴ。お前強いのに、何でザイラム盗賊団なんかに入ったんだ?」
「・・・。うるさいぞ、こぞう」
「当ててやろうか?お前、統領の剣技に惚れて入団したんだろ?だけど全然盗賊仕事ができなくて統領に煙たがられてんだろ?」

 それまで正面を向いて歩いていたゼゴが、振り向いてギロリとエラルドをにらんだ。どうやら図星なようだ。

「なぁなぁ、何で俺がお前に勝ったか教えてやろうか?ゼゴよりも小さくて細い俺が、なんでゼゴの剣を受けられたか、」
「!。教えろ」

 ゼゴはエラルドを射殺さんばかりににらみつけながら言った。

 

 

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