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ロレーナのひとり言6

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 マイラはロレーナが、パティからトグサたちの話しを聞いている事を察したのだろう。微笑んでから話しを続けた。

「パティはトグサたちの事も最初は怖がっていた。彼らが近づくたびにパティはいつも震えていたの。トグサたちはすぐにパティの心の傷に気づいたわ。だから、ゆっくりと時間をかけてパティの信頼を得たの」
「・・・。どうしてトグさんたちは、パティの心が傷ついている事に気づけたのかな?」

 ロレーナはひとり言のようにつぶやいた。ロレーナだとてパティの違和感には気づいていた。だがそれが何なのかよくわからなかった。

「それは経験の差よ。トグサたちはね、冒険をしながらたくさんの心に傷をおった人たちを見てきたの。環境や生まれが原因で、差別や暴力を受けてきた人たち。彼ら自身は何も悪くないのに、しいたげられている。彼らは自分が傷ついている事にも気づけていないの。トグサたちはね、そんな人たちの心に寄り添ってきたのよ。だからパティに対しても時間をかけて接してくれた。パティはね、トグサたちの事が本当に大好きなの。私の家族とまで言ってくれるわ。そんなパティが、トグサたちの事を怖がっていたなんて気づいてしまったら、パティはとても傷つくわ。だからね、ロレーナ」

 マイラはそこで言葉を切った。自然ロレーナはマイラを見上げる。

「パティにエラルドを怖がっている事を気づかせないで。時間をかければきっとパティはエラルドを怖がらなくなるわ」
「・・・。はい、わかりました。マイラ」

 ロレーナの返事にマイラは微笑んだ。そろそろマイラの休けい時間が終了する。マイラはいったん冒険者協会に戻り、仕事が終わったら再びロレーナたちと落ち合う事になっていた。

 どうやらロレーナたちに夕食をごちそうしてくれるようだ。ロレーナが申し訳なくなりながら歩いていると、城下町の大通りが騒がしかった。

 何でも女の子とゴロツキのケンカらしい。ロレーナたちが足を進めると、大きな人だかりが見える。

 マイラは野次馬根性が強いのか、ロレーナの手を引っ張って人だかりの中をかきわけていく。

 背の小さいロレーナがやっと人がきの中に入ると、そこには見知った人物がいた。

 ロレーナの大好きな、将来的には本当のお姉さんになってもらいたいパティだ。

 パティは杖を構えている。パティの目の前にいるのはガラの悪そうな二人の男たち。

 男たちは真剣を構えていた。ロレーナは慌てながら辺りを見回した。パティのピンチに一体兄は何をしているのだろう。

 ロレーナはパティに近い人だかりの中に兄のエラルドを発見した。エラルドはパティを見ながら楽しそうにニヤニヤ笑っている。

 ロレーナはため息をついた。この状況をは把握したからだ。どうやらエラルドはパティの度胸試しをするために、ゴロツキをふっかけてパティと戦わせるようにしむけたのだ。

 剣の修行をしているロレーナは瞬時にパティの相手を確認した。どうやら二人の男たちは剣を振り回して偉そうに振る舞う小物のようだ。

 とにかく剣を持つ構えが悪い。これならばパティの敵ではないだろう。ロレーナはホッと安心してマイラの顔を見ると、彼女の美しい顔が怒りの形相になっていた。
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