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ロレーナのひとり言2

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 ロレーナはゆっくりと目を閉じ、自分の身に起こったこれまでの事をゆっくりと思い出していた。

 ロレーナは重い心臓の病気を患っていた。ロレーナはただただ天国に帰った両親のところに行きたい一心だった。

 だが最愛の兄であるエラルドを一人残していくわけにもいかない。ロレーナは身も心も苦しみのどん底にいた。

 そんな時、天使があらわれた。天使はとても美しい黒髪で黒い瞳の少女だった。

 天使はパティといった。パティは優しくロレーナの心のわだかまりをときほぐしてくれた。

 ロレーナは神さまなんていないと思っていた。自分から両親を取り上げ、自分自身は起き上がる事もできない病の身体。最後の家族である兄は、自分の治療代を稼ぐために危険な仕事を続けている。

 このような状況で神さまを信じろというほうが難しかった。だがロレーナは天使に出会ったのだ。パティはロレーナに魔法の使い方を教え、ロレーナに健康をあたえてくれた。

 パティは自身の魔法《フレンド》で、ロレーナに回復魔法をしてくれた。ロレーナはみるみると元気になった。

 ロレーナはパティに感謝してもしきれなかった。パティに恩返しがしたい気持ちでいっぱいだった。

 だがパティは何の見返りも求めなかった。ロレーナと兄のエラルドを友と呼んでくれたのだ。

 ロレーナはパティの事が大好きになった。もちろんパティの友達であるマックスたちも。

 ロレーナはずっとパティと一緒にいたいと思うようになった。どうすればパティと一緒にいられるだろう。パティは冒険者だ。国中を忙しく飛び回っている。

 ロレーナはしがない村娘でしかない。ロレーナは何日も何日も必死に考えた。そこである答えに行きあたった。

 パティと本当の家族になってしまえばいいのだ。ロレーナの世界で、家族のきずなが一番深いのだ。

 もう地上にはいないロレーナの両親の事は、今でも愛している。ロレーナがこの世で一番大切な人は最愛の兄のエラルドだ。

 ロレーナは兄のエラルドを客観的に観察する。堅物すぎて性格に少々難があるが、妹から見てもエラルドはハンサムな青年だ。エラルドの年齢は十八歳。パティは十五歳だという。

 年齢的にもぴったりではないだろうか。そう、ロレーナは兄のエラルドとパティを結婚させて、本当の家族になろうと考えているのだ。

 パティの気持ちはわからないが、兄のエラルドを見ていると、パティを好ましく思っている事は明白だ。

 ロレーナの身体がだんだんと回復してきた頃、パティは仕事帰りにロレーナたちの家に来て、ロレーナに回復魔法をほどこしてくれるのが常だった。

 パティに対して何もお礼はできないが、仕事から疲れて帰ってきてパティのために、心ばかりの夕食を食べてもらおうと、ロレーナとエラルドは夕食作りに専念していた。

 たまに村の市場に買い物に行くが、さいふのひもが固いエラルドは、買い物に厳しい。

 パティに美味しいものを食べてほしいが、あまり高い食材は買えない。

 ロレーナが市場の商品を冷やかしていると、ドライフルーツを売る店があった。

 ドライフルーツは甘くて、ロレーナの大好物だ。病気の時は、食べる事が辛かったが、今は美味しいものを食べられる事が嬉しくてしかたなかった。

 ロレーナはちらりと兄を見上げて言った。

「ねぇ、お兄ちゃん。ドライフルーツ買ってよ」
「ダメだ。値段が高い」

 兄はいつも通りのぶっきらぼうな顔で答えた。ドライフルーツを売っていた村娘がエラルドの顔をしきりに見つめている。

 ハンサムなエラルドは、村中の娘たちの憧れなのだ。だがエラルドが村娘たちに笑顔を向ける事はない。

 エラルドが笑顔を向けるのは妹のロレーナと。

「お兄ちゃん、ドライフルーツを買って行けば、パティ喜ぶよ?」
「そうか、パティはドライフルーツが好きなのか。じゃあロレーナが選べ、どれがいい?」

 エラルドはそう言って柔らかく微笑んだ。その笑顔を見てしまったドライフルーツ売りの村娘は、顔を真っ赤にしていた。

 
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