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パティの武器3
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パティはゆっくりとした深い呼吸を繰り返した。何度かの深呼吸で、気持ちが落ち着いてくる。
大丈夫、何度も練習した。刃に触れなければ、真剣も模擬刀も同じだ。パティは杖を構えたまま走り出した。
エリオは剣を振りかぶり、パティが間合いに入った時に素早く剣を振り下ろした。
パティは杖を回転させてエリオの剣のを受けた。真剣を受けられた。パティはホッと息を吐いた。
エリオの剣の力がフッと軽くなる。エリオの剣の矛先が変わり、パティの胴めがけて斬り込まれる。パティは杖を持ちかえて、剣の刃の横を叩いた。
エリオが一歩下がって剣を構なおす。パティとエリオは何度も杖と剣の打ち合いをした。
おそらくエリオはパティの動きに合わせて、とてもゆっくり剣を打ち込んでくれているのだろう。さもなければパティは一瞬で真っ二つにされている。
緊張の打ち合いが続いた後、エリオが手をあげた。打ち合いの終わりの合図だ。
パティはホウッと息をはいて肩から力を抜いた。
「よく訓練したな、パティ」
エリオは微笑んで手に持った剣を投げた。剣が落下する先にはデイジーが。デイジーは無言で愛刀を掴んだ。エリオはデイジーには目もくれずにパティを見て言った。
「パティ。杖を極めればあらゆる武器を持った相手とも戦う事ができる。それは槍でもだ」
エリオはそう言うと、腰にさしていた仕込み槍を手に取り、軽く振った。エリオの手にはニメートールもの槍が握られている。勿論穂先の部分には刃がついている。
パティはギクリと体を震わせた。槍は突き、斬り、はらう事のできる武器だ。パティが怖がっている事を感じ取ったであろうエリオが、おどけた顔で言った。
「何だ、パティ。槍が怖いのか?杖の動きは槍に近い。剣士よりも杖使いのパティの方が槍の事を熟知しているだろく?」
「はい、エリオさん。私は剣の先生に杖を教わる時、常に槍の動きを意識するようにと教わりました」
「その通りだ。じゃあこれから槍で突くから受けろ」
「エ、エリオさん!槍と杖では長さも違いますし、最初の突きを受けられたとしても、槍はすぐに次の攻撃をしかけてくるじゃないですか!」
「そんなの、二手目三手目も受ければいいじゃねぇか」
「う、受け損ねたら、死にます!」
「おう、死ぬ気でやれ!」
「そんなぁ、エリオさん」
「何だよパティ。真剣との打ち合いはできたのに、何で槍は嫌なんだよ?」
「だって、エリオさんの槍はとても早いんです。私の今の力量では受けられないのは確実です」
それまで泣き言は聞かない態度だったエリオが、考えるそぶりをした。
「ふむ。パティは、俺が敵と戦っている時の槍を想像したんだな。それはいい事だ。自分があい対する相手の力量を見定め、勝てるならば戦い、勝てないならば退く。戦いの基本だ。だがな、これは練習だ。俺は絶対パティを傷つけない、安心して死ぬ気でやれ!」
パティは少し安心して、一抹の不安を抱えながら杖を構えなおした。
大丈夫、何度も練習した。刃に触れなければ、真剣も模擬刀も同じだ。パティは杖を構えたまま走り出した。
エリオは剣を振りかぶり、パティが間合いに入った時に素早く剣を振り下ろした。
パティは杖を回転させてエリオの剣のを受けた。真剣を受けられた。パティはホッと息を吐いた。
エリオの剣の力がフッと軽くなる。エリオの剣の矛先が変わり、パティの胴めがけて斬り込まれる。パティは杖を持ちかえて、剣の刃の横を叩いた。
エリオが一歩下がって剣を構なおす。パティとエリオは何度も杖と剣の打ち合いをした。
おそらくエリオはパティの動きに合わせて、とてもゆっくり剣を打ち込んでくれているのだろう。さもなければパティは一瞬で真っ二つにされている。
緊張の打ち合いが続いた後、エリオが手をあげた。打ち合いの終わりの合図だ。
パティはホウッと息をはいて肩から力を抜いた。
「よく訓練したな、パティ」
エリオは微笑んで手に持った剣を投げた。剣が落下する先にはデイジーが。デイジーは無言で愛刀を掴んだ。エリオはデイジーには目もくれずにパティを見て言った。
「パティ。杖を極めればあらゆる武器を持った相手とも戦う事ができる。それは槍でもだ」
エリオはそう言うと、腰にさしていた仕込み槍を手に取り、軽く振った。エリオの手にはニメートールもの槍が握られている。勿論穂先の部分には刃がついている。
パティはギクリと体を震わせた。槍は突き、斬り、はらう事のできる武器だ。パティが怖がっている事を感じ取ったであろうエリオが、おどけた顔で言った。
「何だ、パティ。槍が怖いのか?杖の動きは槍に近い。剣士よりも杖使いのパティの方が槍の事を熟知しているだろく?」
「はい、エリオさん。私は剣の先生に杖を教わる時、常に槍の動きを意識するようにと教わりました」
「その通りだ。じゃあこれから槍で突くから受けろ」
「エ、エリオさん!槍と杖では長さも違いますし、最初の突きを受けられたとしても、槍はすぐに次の攻撃をしかけてくるじゃないですか!」
「そんなの、二手目三手目も受ければいいじゃねぇか」
「う、受け損ねたら、死にます!」
「おう、死ぬ気でやれ!」
「そんなぁ、エリオさん」
「何だよパティ。真剣との打ち合いはできたのに、何で槍は嫌なんだよ?」
「だって、エリオさんの槍はとても早いんです。私の今の力量では受けられないのは確実です」
それまで泣き言は聞かない態度だったエリオが、考えるそぶりをした。
「ふむ。パティは、俺が敵と戦っている時の槍を想像したんだな。それはいい事だ。自分があい対する相手の力量を見定め、勝てるならば戦い、勝てないならば退く。戦いの基本だ。だがな、これは練習だ。俺は絶対パティを傷つけない、安心して死ぬ気でやれ!」
パティは少し安心して、一抹の不安を抱えながら杖を構えなおした。
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