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杖の修行7

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 模擬刀を構えたエラルドが静かに質問する。

「パティ、怖いのか?」
「・・・。はい、ロレーナはちゃんとできたけど、私にはできるかどうかわからない。・・・、それに、」

 パティはそこで言葉をつぐんでしまった。これを言ってしまえば、一生懸命指導してくれているエラルドに申し訳ないと思うからだ。

「剣を持った相手が怖い、か?パティ」
「!。・・・、はい。ロレーナは大丈夫なんです。私よりも小さい女の子だから。だけど、エラルドに剣を教えてもらう時、とても、怖いんです。エラルドが一生懸命教えてくれているのに、ごめんなさい」
「いや、謝るな。パティの感覚は正しい。ロレーナがパティに剣を打ち込む時、殺気はない。ロレーナはただただ、パティと継続的に剣と杖の打ち合いをしようとしているだけだ。それはたたかいというより、むしろ舞踏に近いのだろう。だが俺との打ち合いはそうでは無い。俺はパティを殺す気で剣を打ち込んでいるのだ」
「!。殺す気?」

 パティはギクリと身体を震わせてエラルドを見上げた。エラルドは何の感情も読み取れないような顔で答えた。

「ああ。パティはこれから剣を持つ者と戦うだろう。生半可な気持ちで相対せば、必ず死ぬ。パティは自分がしくじった時はマックスたちに助けてもらえばいいと考えているかもしれない。だが剣との戦いはほんの一瞬だ。ほんの一瞬の油断とおごりで人は死ぬんだ。パティが戦う時、常に死ととなりあわせなのだ。それを決して忘れてはいけない」
「・・・。はい!」

 パティは心の中のモヤが晴れていくやうな気持ちだった。それまでエラルドに感じていた恐怖は、自身の心構えの甘さを見透かされていたからなのだ。

 パティは心に決めたのだ。愛する友達が危機にさらされた時、必ず自分が守ると。

 パティはあらためて杖を構えた。エラルドはパティの構えの姿勢を確認し小さくうなずくと、右手に持って模擬刀を軽く振った。

 次の瞬間、杖にものすごい衝撃を感じた。パティが驚いて杖の先を見ると、エラルドの模擬刀が打ち込まれていた。すさまじい圧力を感じるが、パティは前後に開いた両足でしっかりと立ち、エラルドの剣を受け止めたのだった。

「パティ、できたじゃないか」

 エラルドはそう言って小さく笑った。パティはエラルドの指導を受けてから初めて、エラルドの一撃を受け止める事に成功したのだ。

 

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