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杖の修行

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 パティの涙がようやく落ち着いたのを見たエラルドが口を開いた。

「パティ、武器は杖にするか?」
「はい、エラルド。私に杖を教えてください!」

 パティはエラルドに、杖(じょう)を習う事になった。杖とは本来剣を持った相手の制圧に使う武器だ。剣を知らなくては話しにならない。

 パティは杖と剣の練習を並行して行った。

 パティは仕事の合間を見てはエラルドの家におもむき、杖と剣の教えを受けた。

 パティの練習相手はロレーナだ。パティのあっちこっち行ってしまう杖の先端は、ロレーナの顔面や肩や腹に多いに当たった。そのたびにパティは謝った。

「大丈夫よ、パティ。私は《ガーディアン》に守られているんだから。たとえ目に当たったってケガなんかしないわ。それよりも、パティがこれからあいまみえる敵を確実にしとめられるようにならなくちゃ!」

 パティはロレーナに感謝しながら練習を続けた。運動神経が悪く動きも鈍いパティは、ロレーナの模擬刀にもよく当たった。

 模擬刀は木製なので切れる事はないが、すれたり当たったりすればケガをする。パティは顔も身体も全身あざだらけになった。

 パティに剣が当たるたびに、ロレーナは心配そうに謝ってくれた。パティは笑って大丈夫だと答えた。

 ケガは後でマックスたちに治してもらえばいい。パティはたれてきた鼻血を手の甲で乱暴にぬぐい、杖を構えなおした。

 剣の師匠であるエラルドは基本的に口頭で説明して、練習はパティとロレーナで行っていた。パティとロレーナが模擬戦を終えて休けいしていると、エラルドが口を開いた。

「ロレーナ、パティ。お前たちにとって剣と杖とは何だ?」

 ロレーナは兄の言葉の意味をおしはかるように答えた。

「私にとっての剣は、自分自身を守るための武器だと考えているわ」

 エラルドはうなずいてからパティに視線を向けた。パティは慌てて答えた。

「私も、自分と友達を守るための武器だと考えています」
「うむ、お前たちの理念だな。俺の言いたい事はだな、お前たちが剣と杖を武器と言っているようでは、まだまだだと言う事だ。俺は、剣を自分の手の延長だと考えている」

 エラルドの言葉をパティは一生懸命理解しようとした。ロレーナは兄に向かって手をあげた。考えるより先に行動している。

「はい!お兄ちゃん」
「何だロレーナ」
「お兄ちゃんは剣を自分の手だって言ってるけど、ご飯を食べる時も剣で食べるの?」
「あげ足をとるな、妹よ」

 パティは考えをまとめてから口を開いた。

「エラルド。手の延長という事は、私は杖を、ロレーナは剣を身体の一部になるまで使えるようにならなければいけないという事ですか?」
「ああ、そうだ。ロレーナとパティが模擬刀と杖を相手に当ててしまうのは、武器を物として扱っているからだ。身体の一部になってしまえば使いこなす事などぞうさもない」

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