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ロレーナ4

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「私ね、捨て子だったの。ジョナサン神父さまの教会の前に、バスケットの中に入れられた捨てられてたんだって。私は黒い髪で黒い瞳だったから、村の人たちに気味悪がられたわ。私は村の人たちから忌子って言われて、石を投げられたり、悪口を言われたりして育ったの」

 ロレーナは不安そうにパティを見上げる。パティはにっこり笑って言葉を続けた。

「私を育てくれたジョナサン神父さまとチコリおばあちゃんは、とても可愛がってくれたわ。実の孫のようにね。だけど、私は神父さまとチコリおばあちゃんの言葉を素直に信じる事ができなかった。神父さまとチコリおばあちゃんは、私がいたら迷惑なんじゃないかってずっと思っていたの。ある日ね、村の人に言われたの。お前がいたらジョナサン神父は不幸になる。お前なんかいなくなった方がジョナサン神父のためだって。私、きっとそうなんだわって思ってしまったの。まだ魔法を授かる前、八歳くらいだったかしら。私は神父さまに書き置きをして夜の森に入ったわ。死ぬ、つもりだったの。小さな子供が、大人の庇護を受けないで暮らせるわけないもの」

 ロレーナの瞳が泣きそうにゆがむ。パティに同情しているのだ。心の優しい子だ。

「私は夜の森で泣いていたわ。このままケモノに食べられて死んでしまうんだわって。私泣き疲れて眠っていたの。誰かに揺り起こされて目を開けたら、神父さまとチコリおばあちゃんがいたの。神父さまは泣きながら私を抱きしめてくれたわ。無事でいてくれてありがとうって。私その時初めて大きな間違いに気づいたの」
「間違い?」
「ええ。私が耳を傾けるべきは、私を嫌っている人の言葉ではなくて、私を愛してくれている人の言葉なんだって」
「・・・。愛してくれる人?」
「そうよ。神父さまとチコリおばあちゃんはいつも私に言ってくれたわ。愛してる、必ず幸せになるんだよって」

 ロレーナの目のはしに涙が浮かんだ。パティが何を言わんとしているかに気づいたのだ。

「ねぇ、ロレーナ。貴女のお父さんとお母さん、お兄さんはいつも何て言っているの?」
「お父さんは、私の事とても優しくて頭がよくて、お母さん似の美人だっていっつも言ってた。お母さんは、いつも可愛い可愛い私の天使って呼んでくれた。お兄ちゃんはぶっきらぼうだけど、私が困っていたらいつも助けてくれた。困った事があったら、俺にすぐに助けてって言うんだぞって、」
「そうなのね。ロレーナはお父さんとお母さんとお兄さんにとても愛されているのね。貴女のお父さんとお母さんとお兄さんは、大好きなロレーナにどうなって欲しいって思っているかしら?」
「・・・。健康になって、幸せになって欲しいって願っている、と思う」
「そうね、きっとそうだわ。ロレーナのお父さんとお母さんとお兄さんはロレーナの事をとても愛しているのよ?だからね、きっとロレーナにもロレーナ自身の事を好きでいてほしいと思うの」

 ロレーナは泣いていた。きっと幼かった頃の幸せな記憶を思い出しているのだろう。ロレーナは涙が流れてまくらに染み込むのもいとわず、か細い声で言った。

「私は、お父さんとお母さんとお兄ちゃんが愛してくれている私が好き、」

 突然ロレーナの身体が輝きだした。
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