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ロレーナ

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 パティは大きくなったピンキーに乗って空を飛んでいた。小さくなったマックスとチャーミーは、アクアのいるカバンの中に入っていた。

 パティの後ろにはエラルドがいごこち悪そうに乗っている。パティは大きくなったピンキーに乗る時、ピンキーの背中の羽をしっかり持って乗る。そうしないと振り落とされてしまうのだ。

 ピンキーも、パティが背中に乗る時は、いつもしっかりつかまってと注意するのだ。

 パティの後ろに乗っているエラルドは、両腕を組んで乗っている。これではいつピンキーの背中から落ちてもおかしくない。パティは鋭い声でエラルドに言った。

「エラルド!私の腰にしっかりつかまって!落っこちちゃうわよ!」
「女の腰に軽々しく触れられるか!足で鳥の身体を挟んでいるから落ちる事はない。さっさと飛べ!」

 エラルドは心なしか顔を赤くして怒っていた。パティたちは仕方なくエラルドの家へ急いだ。

 エラルドの家は、王都から離れたプレアという村にあった。高台の上に小さな木造の家が建っている。そこがエラルドの家だった。

 エラルドはピンキーの背中から飛び降りると家の中に入って行った。パティたちも後に続く。

 家の中は雑然としていて、台所とリビングが一緒になっている作りだった。エラルドは一つの部屋のドアをノックした。

「ロレーナ、帰ったぞ。今日は客人を連れてきた。部屋に入れてもいいか?」

 エラルドの言葉に、か細い女の子の声が返ってきた。エラルドはパティにうなずきかけると部屋のドアを開けた。

 小さな部屋に、粗末なベッドが置かれていた。そこには小さな女の子が横になっている。プラチナブロンドの髪、アイスブルーの瞳。とても美しい女の子だった。だが彼女はとても痩せてやつれていた。

「ロレーナ、気分はどうだ?」
「お兄ちゃん、お帰りなさい。今日はとっても気分がいいわ」

 厳しいエラルドの表情が、妹の前では優しく穏やかになる。妹のロレーナも、兄に心配かけまいと無理に明るくふるまっているようだ。

 この兄妹はとてもお互いを想いあっているのだ。エラルドがパティを呼んだ。ロレーナはパティを見て驚いた声をあげた。

「わぁ、綺麗なお姉ちゃん。お姫さまみたい」
「うふふ、ありがとう。私はパティ、エラルドの友達よ。貴女もとっても綺麗だわ、ロレーナ」

 ロレーナはとたんに顔をしかめて言った。

「ウソよ。私綺麗なんかじゃない。私はガリガリに痩せてとってもみにくいわ」

 パティはベッドの側のイスに腰かけて答えた。

「そんな事ないわ、ロレーナ。貴女の病気が治ったら、とっても元気に綺麗になれるわ」
「・・・。私の病気は治らないわ」

 ロレーナは諦めたように顔をゆがめた。ロレーナの病気はエラルドから聞いていた。

 ロレーナは心臓の病気で、小さい頃から苦しんでいた。小さい頃は歩く事もできたが、最近ではベッドから起き上がる事もできなくなっていた。

 パティは毛布の上に乗っているロレーナの枯れ枝のような手に自分の手を乗せながら言った。

「ねぇ、ロレーナ。私のお友達も紹介したいの。会ってくれる?」
「お友達?その鳥さん?」

 ロレーナはクリクリした瞳で、パティの肩に乗っているピンキーを見た。

「ええ。ピンキーだけじゃないわ。パティはショルダーバックをベッドの上に乗せた。中から小さなマックスとチャーミー、アクアが飛び出してきた。

「わぁ、可愛い!」

 ロレーナの青白い頬に、少しだけ赤みがさした。

 
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