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敗北

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 最初に感じたのは激しい熱さだった。掃除屋の火の剣に当たって、手が火傷をしたかと思ったのだ。

 マフサが驚いて自身の両手を見下ろすと、そこに手は無かった。マフサの両手は無くなっていたのだ。

「ぎゃあああ!俺の、俺の手がぁ!テメェ!殺してやる!殺してやる!」
「お前が生きていれば受けてたとう。だがその状態で剣が握れるかな?」

 マフサの手首からはボトボトと血がほとばしる。火剣の掃除屋は痛みに叫び続けるマフサを少し驚いたように見つめてから、やぶに向かって言った。

「おい、そこに隠れている者!早く止血をしろ!死んでしまうぞ!」

 自分でやっておいて何を言っているのだ。マフサは毒つきたい気持ちになったが、痛みのあまり何も言えなかった。

 やぶの中から真っ青な顔のトマがトボトボとあらわれた。マフサの前までやってくると、布で傷口をしばろうとした。だが手がブルブルと震えてまったく止血にならない。これではマフサは出血多量で死んでしまう。

 死ぬ。この俺が。マフサは信じられない気持ちでいっぱいだった。マフサは選ばれた人間だ。ここで死ぬはずはないのだ。

「私たちが助けてあげましょうか?マフサ」

 突然女の声がした。マフサが痛みに叫びながら振り向くと、そこには殺してやりたいほど憎たらしいパティがいた。肩にはバカ鳥がとまり、パティの横にはクソ犬とクソ猫がいた。きっと汚いカバンの中にはゴミガメが入っているのだろう。

「このグズ!さっさとしろ!そのクソ犬に乗せて、俺をジョナサンのじじぃのところに連れて行け!この手をくっつける」

 マフサが怒りに震えながらパティをどう喝するが、パティは表情を変えずに答えた。

「マフサ、貴方の頭は飾りなの?ここからドミノ村まで何時間かかると思っているの。ドミノ村に向かっている間に貴方は出血多量で死ぬわ。私たちが、命だけは助けましょうか?」
「早くしろ!このグズ!」

 マフサの大声にクソ犬とクソ猫はうなり声をあげた。バカ鳥はギャァギャァと耳障りに鳴いた。カバンからゴミガメが顔を出している。パティはケダモノたちに声をかけた。

「皆、お願い。協力して?」

 パティの言葉の後、マフサの手に変化が起きた。出血がピタリと止まり、手首がむずがゆくなった。マフサが手を見ると、そこには自分の手があった。

 にわかには信じられないが、マフサに手が生えてきたのだ。マフサは喜びの雄叫びをあげ、ニヤリと笑って言った。

「ありがとよ、パティ。お礼に俺の《ファイヤーハンド》で焼き殺してやろう!」

 マフサはパティとケダモノたちに向けて両手を突き出した。
 
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