究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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火剣の掃除屋2

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 火剣の掃除屋は、逃げる素振りもなくそのまま直立していた。マフサの放った炎が自身の目の前に迫った時、初めて剣を構えた。

 マフサはブッと吹き出した。炎を剣で斬ろうだなんて、何てバカな男だろう。そのまま火だるまになるがいい。

 マフサが薄ら笑いを浮かべていると、恐るべき事が起きた。火剣の掃除屋は上段に構えた剣を振り下ろした。するとマフサの放った炎がスパッと斬られてしまった。マフサの炎は無効化されきえてしまった。

 マフサはあまりの事にぼう然と立ち尽くした。これまでマフサの魔法が防がれた事は、ただの一度もなかったからだ。

 いや、一度だけあった。憎きパティの飼っているバカ鳥がマフサの魔法を防御し、うす汚い犬がマフサに火傷を負わせたのだ。今思い出してもはらわたが煮えくりかえるようだ。

 あの時マフサは誓ったのだ。もう二度と誰にも負けはしないと。マフサは忌まわしい記憶を頭のすみにおいやった。目の前の火剣の掃除屋に集中しなければ。

 火剣の掃除屋は、どうやら剣で魔法を斬ると無効化してしまうようだ。それならば剣ではなく、掃除屋本人に炎を当てなければならない。さてどうしたものか。

 マフサはしばらく考えてから、口のはじをあげてにやりと笑った。先ほどの犯罪者と火剣の掃除屋のやり取りで、火剣の掃除屋はとても正義感の強い人間のようだ。

 剣を振るわない相手とは戦わない。崇高な思考の人間ならば、弱い者が傷つけられそうになれば、きっと助けに入るだろう。

 マフサは攻撃の矛先を、無様に尻もちをついて動けないでいる犯罪者に変更した。

 マフサは掃除屋にニヤリと笑ってから、これみよがしに左手に炎を出現させ、犯罪者に向かって投げつけた。

 掃除屋はマフサの真意に気づいて、風のような速さで犯罪者に向かってかけ出した。掃除屋は犯罪者の鼻先を炎が舐める直前で、剣を振り下ろした。

 その体勢の無様な事、胴ががら空きあった。マフサは自分の思い通りに事が運んだのに満足しながら、右手に炎を作り出し掃除屋の無防備な腹に向けて投げつけた。ドオンッと大きな爆発音がした。

 これでマフサの仕事は完了した。マフサは余裕の笑みを浮かべながら爆風が落ち着くのを待った。だが目の前に現れたのは、無傷のままの掃除屋だった。

「な、何故だ!何故お前は火傷一つおわないんだ!」
「ふん。仲間をおとりに俺を殺そうとは、見下げた外道め。俺には天使の加護がついているのだ。貴様のような奴の攻撃など、俺には傷一つつけられはしない」

 掃除屋は心なしか楽しそうに答えた。口元をおおう布の下ではおそらくニヤリと笑みを浮かべているのだろう。

「テメェ!汚ねぇぞ!魔法は一人に一つだろう!何で剣を出す魔法と、身体を防御する魔法二つ持っているんだよ!」
「汚いだと?仲間を殺しかけておいて、よくもそんな事が言えるな」
「こいつは仲間でも何でもねぇよ!この世の中のゴミだ!殺してやった方が世の中のためなんだよ!」

 マフサは混乱と怒りで激しく叫んだ。冷静な判断ができない。マフサはこのような強い相手に出会ったのは初めてだった。このままでは勝てない。トマの《フライ》を使って一旦退却をするか。

 掃除屋は剣士だ。空まで逃げてしまえば手も出せまい。逃げるのははらわたが煮えくりかえるほど屈辱だが、いたしかたない。

 体制を立て直して必ず掃除屋を殺してやる。マフサはそう考えをまとめたが、肝心のトマは逃げ隠れて出てきやしない。あの役立たずめ。マフサが思わず舌打ちしていると、掃除屋は納得したような態度で言った。

「そうだな。世の中の害になる者は取り除いたほうが世の中のためだ。お前は人を殺す事に何の躊躇も持たない人間だ。そのような人間が強力な魔法を所持していれば、これから何人もの人間が犠牲になる事だろう。お前から魔法を取り上げよう」

 マフサは掃除屋の言葉の意味がわからずぼう然としていると、掃除屋の持っている剣が突然燃え出した。

 火剣の掃除屋。マフサはあだなの意味を理解した。掃除屋は風のような速さでマフサの目の前に現れたかと思うと、マフサに炎の剣を振り下ろした。
 
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