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対じ

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 パティがピンキーの風魔法で、ゆっくりと地面に着地すると同時に、小屋からはドヤドヤと誘拐犯たちが飛び出して来た。

 誘拐犯は三人いた。《リプレイス》の魔法を使う者と、馬車の御者だった者。おそらく娘たちを監視するために小屋に残った者。

 パティは男たちをにらんだ。《リプレイス》の魔法を使う男が不思議そうにパティを見て言った。

「この娘はどうやって部屋を抜け出したんだ?」
「自分の魔法を使ったんじゃないのか?だからしばりあげておけと言ったんだ」
「商品だぞ。傷つけたら価値が下がる」

 御者の男の言葉に、もう一人の男が反論する。まだ小娘のパティを警戒してはいないようだ。

 それでいい。パティがピンキーに強力な風魔法を使ってとお願いすれば、《リプレイス》の男は魔法でこの場から逃げてしまうだろう。

 パティはトグサたちが到着するまで、誘拐犯たちをここにとどめておかなければいけない。パティはゆっくりと息をはいてから口を開いた。

「ねえ、私たちを売ると言ったけど、私はどこに売られるの?」
「ふん、そうだな。お前は髪も瞳も真っ黒だ。そういう奴は黒真珠と呼ばれて価値が高いんだ。そうとうの金持ちに売れるぜ。せいぜい媚を売って可愛がってもらうんだな?」

 《リプレイス》の男はさもおかしそうに言った。黒髪で黒い瞳のパティは、ドミノ村ではさげすまれ、城下町では誘拐されて売られてしまう。パティは嫌な気持ちになった。

 自分が黒髪の黒い瞳で生まれた事を恥じたわけではない。自分を取り巻く環境に腹が立ったのだ。

 パティが誘拐犯たちをにらんでいると、《リプレイス》の男がパティを再び捕まえようとした。これ以上は持ちこたえられないと感じた時、パティの脳裏に友達の声が響いた。

「マックス!チャーミー!」

 ついにマックスとチャーミーに乗ったトグサたちが到着したのだ。《リプレイス》の男は、自分たちの危機的状況を悟って、自身の魔法を発動させようとした。すかさずパティが叫ぶ。

「コジモさん!真ん中のヒゲづらの男!」

 マックスから飛び降りたコジモは、《リプレイス》の男に視線を合わせて叫んだ。

「眠れ!」

 《リプレイス》の男はそのまま倒れた。デイジーが《フラワー》のバラのツタで、素早く《リプレイス》の男を回収する。これで誘拐犯たちは遠くに逃げる事はできなくなった。

 残りの二人の仲間は、一瞬戸惑った表情をしたが、凶悪な顔を作りパティたちをにらんだ。

 二人の誘拐犯はパティたちと戦う腹づもりらしい。逃走の心配がなくなれば、パティたちに充分勝機はある。受けて立とうではないか。

 パティがそう考えた途端、大声で名前を呼ばれた。

「パティ!」
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