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脱出
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ジェシカの歌が一区切りすると、パティは嬉しそうに拍手をおくった。セーラに続いてサラたちもジェシカに賞賛の拍手をおくる。ジェシカは気恥ずかしそうにおじぎをした。
パティは準備が整った事を確認してから口を開いた。
「サラ、皆聞いてほしいの。私は冒険者。皆をここから救い出すために来ました」
サラたちの頬がさっと赤く上気する。パティは小さくうなずいてから言葉を続ける。
「これから私の仲間が、貴女たちをつかまえた誘拐犯たちを捕えにやって来る。奴らは罪もないサラたちをつかまえて売ろうとする悪人たち。絶対に捕まえて騎士団に引き渡さなければいけない」
サラたちは真剣な表情でパティの言葉を聞いていた。パティはそこで言葉を切り、しばらく沈黙してからゆっくりと話し出した。
「奴らの中に《リプレイス》、つまり空間移動を使う者がいるの。奴らは安全に逃げるために貴女たちを人質にするかもしれない。もし貴女たちが誘拐犯たちの手に渡ったら、私たちは奴らに攻撃ができない。だからね、貴女たちは安全なところでジッとしていてほしいの。できるかしら?」
サラたちは神妙な顔でうなずいた。楽観的なセーラが胸を叩いて言った。
「ええ、大丈夫よ!家に帰るためだもの。誘拐犯たちにもう二度と捕まったりしないわ」
「その通りよ、セーラ」
パティはポケットからゆっくりとアクアを取り出した。パティの手のひらに乗ったアクアは、つぶらな瞳をクリクリさせてセーラたちを見た。
「キャァ!可愛い!この子はなんなの?パティ」
セーラは嬉しそうにアクアに顔を近づけた。どうやらセーラは動物が好きらしい。
「この子はアウア、私の大切なお友達なの。アクアは水魔法を使うわ。アクアと一緒にいれば、セーラたちを守ってくれる」
「馬車の中でパティを水防御魔法で守ったのはこの子だったのね?」
聡いジェシカはアクアからの視線をパティに移した。パティはうなずいてから、アクアをセーラの手のひらに乗せた。
「アクア、セーラたちは私のお友達なの。だからアクアにとっても彼女たちはお友達なのよ。アクア、皆を守って」
「プクプク!」
アクアは元気よく返事をすると、この場にいるパティ以外の少女たちをおおうように、水防御ドームの魔法を発動させた。
セーラとジェシカは驚いた顔になる。
「何で?!アクア!パティも防御ドームの中に入れてよ?!」
「パティ!危険だわ!貴女も一緒に入って?!」
セーラとジェシカの心配の言葉に、パティは微笑んで答えた。
「大丈夫よ。セーラ、ジェシカ。私は冒険者。私には強いお友達がいるの。ピンキー!」
パティは大きな声で友達を呼んだ。小屋の屋根に待機していたピンキーがすぐさま応じる。
ピンキーの風攻撃魔法により、ドカンというごう音と共に、小屋の天井に大穴が空いた。穴からピンキーが飛び込んでくる。ピンキーはパティの肩にとまり、しきりに頬にすり寄った。
パティはピンキーを優しく撫でてから、水防御ドームの中のセーラたちに微笑みかけた。
「皆、すぐに終わらせるから、ここで待ってて」
パティはピンキーの風魔法でフワリと空中に浮くと、天井の大穴から外に飛び出した。
パティは準備が整った事を確認してから口を開いた。
「サラ、皆聞いてほしいの。私は冒険者。皆をここから救い出すために来ました」
サラたちの頬がさっと赤く上気する。パティは小さくうなずいてから言葉を続ける。
「これから私の仲間が、貴女たちをつかまえた誘拐犯たちを捕えにやって来る。奴らは罪もないサラたちをつかまえて売ろうとする悪人たち。絶対に捕まえて騎士団に引き渡さなければいけない」
サラたちは真剣な表情でパティの言葉を聞いていた。パティはそこで言葉を切り、しばらく沈黙してからゆっくりと話し出した。
「奴らの中に《リプレイス》、つまり空間移動を使う者がいるの。奴らは安全に逃げるために貴女たちを人質にするかもしれない。もし貴女たちが誘拐犯たちの手に渡ったら、私たちは奴らに攻撃ができない。だからね、貴女たちは安全なところでジッとしていてほしいの。できるかしら?」
サラたちは神妙な顔でうなずいた。楽観的なセーラが胸を叩いて言った。
「ええ、大丈夫よ!家に帰るためだもの。誘拐犯たちにもう二度と捕まったりしないわ」
「その通りよ、セーラ」
パティはポケットからゆっくりとアクアを取り出した。パティの手のひらに乗ったアクアは、つぶらな瞳をクリクリさせてセーラたちを見た。
「キャァ!可愛い!この子はなんなの?パティ」
セーラは嬉しそうにアクアに顔を近づけた。どうやらセーラは動物が好きらしい。
「この子はアウア、私の大切なお友達なの。アクアは水魔法を使うわ。アクアと一緒にいれば、セーラたちを守ってくれる」
「馬車の中でパティを水防御魔法で守ったのはこの子だったのね?」
聡いジェシカはアクアからの視線をパティに移した。パティはうなずいてから、アクアをセーラの手のひらに乗せた。
「アクア、セーラたちは私のお友達なの。だからアクアにとっても彼女たちはお友達なのよ。アクア、皆を守って」
「プクプク!」
アクアは元気よく返事をすると、この場にいるパティ以外の少女たちをおおうように、水防御ドームの魔法を発動させた。
セーラとジェシカは驚いた顔になる。
「何で?!アクア!パティも防御ドームの中に入れてよ?!」
「パティ!危険だわ!貴女も一緒に入って?!」
セーラとジェシカの心配の言葉に、パティは微笑んで答えた。
「大丈夫よ。セーラ、ジェシカ。私は冒険者。私には強いお友達がいるの。ピンキー!」
パティは大きな声で友達を呼んだ。小屋の屋根に待機していたピンキーがすぐさま応じる。
ピンキーの風攻撃魔法により、ドカンというごう音と共に、小屋の天井に大穴が空いた。穴からピンキーが飛び込んでくる。ピンキーはパティの肩にとまり、しきりに頬にすり寄った。
パティはピンキーを優しく撫でてから、水防御ドームの中のセーラたちに微笑みかけた。
「皆、すぐに終わらせるから、ここで待ってて」
パティはピンキーの風魔法でフワリと空中に浮くと、天井の大穴から外に飛び出した。
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