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マイラの覚悟2

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「本当なの?!エリオ!パティは無事なの?!」

 マイラはいても立ってもいられず、エリオの胸ぐらを掴みあげて叫んだ。エリオは目をつむったまま、マイラの手を邪険に振り払った。

「うるさいマイラ。気が散る」

 エリオはしばらくするとニヤニヤ笑った。

「はは。パティの奴、誘拐犯から女の子たちを守ってらぁ。成長してんだな、あいつも」
 
 エリオはパティの無事が見てえいるのだろう。マイラは両手を握りしめながら黙った。トグサが一つうなずいて言った。

「《リプレイス》の範囲は一キロか。やっかいだな。うまく立ち回らなければ犯人に逃げられる。必ず犯人を確保して騎士団に突き出さなければいけない」

 トグサの仲間たちは深くうなずいた。冒険者協会の受付でしかないマイラは震えながら見守るしかなかった。

 トグサは厳しい顔から、穏やかな笑顔になってマイラに向き直った。

「マイラ、パティを助けるために協力してくれるかい?」
「ええ!私にできる事なら何でも!」

 トグサは自分の言葉をパティに伝えるように言った。マイラは祈るような気持ちでパティに《ボイス》を発動した。

 パティはマイラの言葉を聞いてくれただろうか。マイラの《ボイス》は一方通行のため、パティがマイラの言葉を聞き漏らしたとしてもわからない。

 マイラは自分の魔法に不便を感じた事はなかった。自分の発した言葉が相手に伝われば仕事には支障がない。マイラの魔法の師匠である母も、一方通行の《ボイス》の使い方しか教えなかった。

 自分が印をつけたたくさんの人たちから、同時に言葉を受け取ってしまったら、脳がパンクしてしまうからだ。

 マイラはゆっくりと確実にパティに言葉が通じるよう《ボイス》を使った。

 最後にこらえきれなくなり、思わず本音をもらしてしまった。

 パティ、会いたい。声を聞きたい。

 マイラはそれだけ言うと《ボイス》を遮断し、泣き崩れた。側にいたデイジーかすかさずマイラを抱きかかええ、優しい声で言った。

「ねぇ、マイラ。マイラの《ボイス》も訓練してパティの声を聞けるようにしようよ?あたしも、マイラの声を聞くだけじゃなくて、あたしの声も聞いてほしい。そうすれば、もしマイラが助けを必要とした時、あたしもパティもすぐにマイラの所に駆けつけられるでしょ?」

 マイラはデイジーの言葉をうんうんとだけしか聞けなかった。以前からデイジーに散々言われていたのだ。一方通行の《ボイス》では、マイラに危険がおよんだ場合、的確な助言をする事ができないと。

 マイラは決心した。《ボイス》の訓練をして、パティの言葉を受け取れるようにしようと。

 そうこうしているうちに、マックスとチャーミーが広場に走り込んで来た。デイジーはマックスたちに大声で呼びかける。

 マックスたちはデイジーたちを見つけると、すぐさま大きくなりデイジーたちに乗れと催促した。早くパティのところに戻りたいのだろう。

 デイジーはマイラの手を取って言った。

「マイラ、安心して?あたし達がパティを助け出してくるわ?」

 マイラはデイジーの手を握り返して叫んだ。

「私も、私も連れてって!」
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