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危機
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目の前が真っ暗になったのはほんの一瞬で、パティはすぐさま薄暗い場所で目を開いた。ここは明らかに先ほどとは別の場所だった。
パティはぐるりと辺りを見回した。そこは幌馬車の中のようだった。ガタガタと地面がゆれている。パティの側に不安そうなジェシカとセーラがいた。
「私たち、一体どうしちゃったのかしら?ここはどこなの?」
セーラが震える声で言った。セーラの不安がうつったように、ジェシカも口を開いた。
「これはコンテストの催しの一部なのかしら?」
パティはポケットの中のアクアにささやいた。
「アクア、私たちはどうなったの?」
「プクプク」
やっぱり。パティはグッと息を飲んだ。パティたちは何らかの魔法によって幌馬車の中に移動させられたのだ。アクアの話しでは、パティたちはステージ上から、幌馬車の中にあった他の物体と入れ替わったのだという。
馬車は一定の速度で走っている。パティは友達を呼んだ。
「マックス、チャーミー、ピンキー。馬車の外に出て状況を確認。私に知らせて」
マックスたちは小さな声で了解と答え、幌の外に出て行った。
パティは不安がっているジェシカたちに向き直って言った。
「ジェシカ、セーラ。心配しないで?私がきっと貴女たちを元の城下町まで送りとどけるわ。何たって私は冒険者なんだから」
薄暗い中でもはっきりとわかる青ざめた顔のジェシカとセーラはこわばった笑みを浮かべた。
パティは突然のこの状況を怖がってはいなかった。もしパティとマックスたちだけがこの場にいたら、パティはマックスたちに不安を口にしたかもしれない。
だがここにはパティの友達であるジェシカとセーラがいる。パティは彼女たちを守らなければいけない。
運転席の方が騒がしくなった。誰かが運転席から、馬車の中に入ってこようとしているのだ。
入って来たのは五十代くらいの汚らしい男だった。男はパティたちを確認すると、いやらしい笑い声をあげた。
「ヒッヒッヒ!俺の《リプレイス》は最高だぜ!まんまと三人の美しい娘をさらえたのだからな」
男が馬車の運転をせずに馬車の中にやって来たという事は、馬車の運転をする御者がもう一人いるのだろう。
二人の悪漢ならば、パティの側にいてくれるアクアがすぐに倒してくれる。だがパティたちを攫った目的を知らなければいけない。パティは無言で汚らしい男をにらんだ。
パティはぐるりと辺りを見回した。そこは幌馬車の中のようだった。ガタガタと地面がゆれている。パティの側に不安そうなジェシカとセーラがいた。
「私たち、一体どうしちゃったのかしら?ここはどこなの?」
セーラが震える声で言った。セーラの不安がうつったように、ジェシカも口を開いた。
「これはコンテストの催しの一部なのかしら?」
パティはポケットの中のアクアにささやいた。
「アクア、私たちはどうなったの?」
「プクプク」
やっぱり。パティはグッと息を飲んだ。パティたちは何らかの魔法によって幌馬車の中に移動させられたのだ。アクアの話しでは、パティたちはステージ上から、幌馬車の中にあった他の物体と入れ替わったのだという。
馬車は一定の速度で走っている。パティは友達を呼んだ。
「マックス、チャーミー、ピンキー。馬車の外に出て状況を確認。私に知らせて」
マックスたちは小さな声で了解と答え、幌の外に出て行った。
パティは不安がっているジェシカたちに向き直って言った。
「ジェシカ、セーラ。心配しないで?私がきっと貴女たちを元の城下町まで送りとどけるわ。何たって私は冒険者なんだから」
薄暗い中でもはっきりとわかる青ざめた顔のジェシカとセーラはこわばった笑みを浮かべた。
パティは突然のこの状況を怖がってはいなかった。もしパティとマックスたちだけがこの場にいたら、パティはマックスたちに不安を口にしたかもしれない。
だがここにはパティの友達であるジェシカとセーラがいる。パティは彼女たちを守らなければいけない。
運転席の方が騒がしくなった。誰かが運転席から、馬車の中に入ってこようとしているのだ。
入って来たのは五十代くらいの汚らしい男だった。男はパティたちを確認すると、いやらしい笑い声をあげた。
「ヒッヒッヒ!俺の《リプレイス》は最高だぜ!まんまと三人の美しい娘をさらえたのだからな」
男が馬車の運転をせずに馬車の中にやって来たという事は、馬車の運転をする御者がもう一人いるのだろう。
二人の悪漢ならば、パティの側にいてくれるアクアがすぐに倒してくれる。だがパティたちを攫った目的を知らなければいけない。パティは無言で汚らしい男をにらんだ。
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