上 下
68 / 212

パティの魔法

しおりを挟む
「ねぇねぇ、パティ。貴女の魔法、とっても素敵だったわ。なんて魔法なの?」

 セーラは好奇心旺盛な瞳をクリクリさせながらパティに質問した。

「ちょっと出し抜けによしなさいよ、パティが困っているじゃない。ごめんね、セーラったら気になるとすぐにはしゃいじゃうの」

 ジェシカは申し訳なさそうにパティにわびてくれた。どうやらジェシカはしっかり者のようだ。

「大丈夫よ、気にしないで。私の魔法は《幻影》なの」
「ああ、だからかぁ。土魔法に風魔法に火魔法に水魔法が同時にできるわけないものね」

 セーラはやっと納得がいったという顔をしていた。

 パティは以前トグサに言われたのだ。火、水、風、土のすべての魔法が使える者はいない。だからパティの魔法《フレンド》はできるだけ隠すようにしなさいと。

 もしパティの魔法を聞かれた時マックスたちが側にいれば、四体の動物をテイムできる魔法だと言うように。

 もしマックスたちの魔法を見られたら、《幻影》の魔法だと言いなさいと。

 パティは嘘をつく事が苦手だ。だがパティの魔法がおおやけになった方が周りに迷惑がかかるのだ。

 セーラは納得したようだが、ジェシカはいぶかるような視線をパティに向けた。

「パティは冒険者をしていると言ったわよね?《幻影》はすごい魔法だと思うけど、攻撃力のない魔法では危ないんじゃの?」
「だ、大丈夫よ!大きな犬の幻影を見せて、炎のかたまりをたくさん出すと、敵は逃げていくから」
「・・・。そう、それならいいけど」
「ジェ、ジェシカ!貴女の魔法は歌の魔法なのね?とっても素敵だったわ」

 パティは嘘をつくのにいたたまれなくなって話題を変えた。ジェシカが答えるよりも、となりのセーラがジェシカの肩を抱いて言った。

「そうなの!ジェシカの《ナイチンゲール》は綺麗な歌なだけじゃないのよ?!人を幸せにする力があるんだからから!」
「大げさよ、セーラ。私の魔法は歌。私が嬉しい気持ちで歌うと、私の気持ちが聞いた人にも影響するの。だから私が悲しい気持ちで歌ったら、聞いた人は悲しくなってしまうの」

 どうやらジェシカの魔法は精神感応系のようだ。使いようによってはすごい効果がありそうだ。パティはセーラの魔法も賞賛した。

「セーラの魔法も素敵だったわ。貴女の魔法は《ドレスメーカー》なのね?」
「えへへ、ありがとうパティ。そうよ、ママには劣るけどね、将来は城下町一番のドレスメーカーになるんだから!」
「セーラのママ?」
「そう、私のママは城下町一番のドレスメーカーなのよ」
「ひょっとしてポーラさん?」
「ええ、そうよ。そっかぁ、ママが言ってた素敵な女の子ってパティの事だったんだ。この間夜遅くに帰って来て、すごい綺麗な女の子のドレスを作ったって、満足そうに言ってたわ」
「そうね。ポーラさんが作ってくれたドレスのおかげで私は最終審査に残れたんだわ」

 パティの言葉に、セーラはケラケラ笑った。

「ええ、ママのドレスも一役買ったと思うわ。だけどね、パティ。ドレスは着た人間を最大限に美しくする事が役割なの。あくまでドレスは引き立て役なのよ。だからパティが最終審査に残ったのは、純粋にパティの美しさなのよ」

 セーラの断言に、パティは恥ずかしくなって黙ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

【完結】さようならと言うしかなかった。

ユユ
恋愛
卒業の1ヶ月後、デビュー後に親友が豹変した。 既成事実を経て婚約した。 ずっと愛していたと言った彼は 別の令嬢とも寝てしまった。 その令嬢は彼の子を孕ってしまった。 友人兼 婚約者兼 恋人を失った私は 隣国の伯母を訪ねることに… *作り話です

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...