48 / 212
親玉
しおりを挟む
パティは嬉しさのあまり飛び上がって喜んだ。デイジーたちは盗賊との戦いに勝利したのだ。しかも相手を殺さずに。パティはデイジーたち冒険者がとても誇らしかった。
槍を納めて目をつむっていたエリオが叫んだ。
「親玉が逃げるぞ!」
パティはハッとした。グリュウ盗賊団の統領の事だ。木の陰に、人の背中が見えた。その人物は一目散に逃げて行く。
あれがパティたちを無常にも殺そうとしたグリュウ盗賊団の統領なのだと思うと怒りが湧いた。部下たち戦わせておいて、いざ部下が負けると、助けもせずに逃げている。
パティはマックスにお願いと言った。マックスはガウッと返事をすると、風のような走りで追いかけて行った。
次にエリオが続く、遅れてパティたちもかけだした。デイジーとコジモはものすごい速さで走って行く、パティはゼェゼェと激しい息をしながら後を追った。トグサはパティを気にして歩調を合わせてくれている。
みかねたチャーミーがニヤァと鳴いた。自分の背中に乗れというのだ。パティは情けない気持ちになりながら、ありがとうと言って、大きくなったチャーミーの背中に乗った。
パティはトグサも一緒にチャーミーの背中に乗ってくれと提案したが、トグサは笑って辞退し、涼しい顔でチャーミーの横を走っていた。
パティたちがマックスに追いつくと、マックスは一人の男の背中に前脚を乗せてワンワンと鳴いた。
「おのれ、三流の冒険者どもめ。この俺をこけにしてくれた事を死ぬほど後悔させてやる」
隻眼でヒゲづらの男が、うらめしそうにパティたちを見上げた。この男がグリュウ盗賊団の統領メグリダなのだ。
エリオはメグリダの側にツカツカと歩みよって、メグリダの胸ぐらを掴んでドスの効いた声で言った。
「おい、テメェ。グリュウ盗賊団だかなんだかしらねぇが、部下置いて逃げる奴が偉そうな事言うんじゃねぇ・・・」
エリオは突然話しをやめ、メグリダの背中に乗っているマックスを邪険に追い払った。
マックスはグルルとうなり声をあげている。エリオの様子がおかしい。パティが不安そうにエリオを見つめていると、彼はうやうやしくメグリダを抱き起こして言った。
「大丈夫ですか、メグリダさま」
パティはギョッとした。エリオはメグリダの魔法《カリスマ》にかかってしまったのだ。
メグリダはいまいましそうにエリオを見ると、エリオの頬を思いっきり叩いた。
「よくも俺さまの胸ぐらを掴んでくれたな。本来ならば自害させているところだが、目の前の奴らを殺せば許してやる」
「はっ、おおせのままに」
エリオは手に持った槍をパティたちに向けた。
槍を納めて目をつむっていたエリオが叫んだ。
「親玉が逃げるぞ!」
パティはハッとした。グリュウ盗賊団の統領の事だ。木の陰に、人の背中が見えた。その人物は一目散に逃げて行く。
あれがパティたちを無常にも殺そうとしたグリュウ盗賊団の統領なのだと思うと怒りが湧いた。部下たち戦わせておいて、いざ部下が負けると、助けもせずに逃げている。
パティはマックスにお願いと言った。マックスはガウッと返事をすると、風のような走りで追いかけて行った。
次にエリオが続く、遅れてパティたちもかけだした。デイジーとコジモはものすごい速さで走って行く、パティはゼェゼェと激しい息をしながら後を追った。トグサはパティを気にして歩調を合わせてくれている。
みかねたチャーミーがニヤァと鳴いた。自分の背中に乗れというのだ。パティは情けない気持ちになりながら、ありがとうと言って、大きくなったチャーミーの背中に乗った。
パティはトグサも一緒にチャーミーの背中に乗ってくれと提案したが、トグサは笑って辞退し、涼しい顔でチャーミーの横を走っていた。
パティたちがマックスに追いつくと、マックスは一人の男の背中に前脚を乗せてワンワンと鳴いた。
「おのれ、三流の冒険者どもめ。この俺をこけにしてくれた事を死ぬほど後悔させてやる」
隻眼でヒゲづらの男が、うらめしそうにパティたちを見上げた。この男がグリュウ盗賊団の統領メグリダなのだ。
エリオはメグリダの側にツカツカと歩みよって、メグリダの胸ぐらを掴んでドスの効いた声で言った。
「おい、テメェ。グリュウ盗賊団だかなんだかしらねぇが、部下置いて逃げる奴が偉そうな事言うんじゃねぇ・・・」
エリオは突然話しをやめ、メグリダの背中に乗っているマックスを邪険に追い払った。
マックスはグルルとうなり声をあげている。エリオの様子がおかしい。パティが不安そうにエリオを見つめていると、彼はうやうやしくメグリダを抱き起こして言った。
「大丈夫ですか、メグリダさま」
パティはギョッとした。エリオはメグリダの魔法《カリスマ》にかかってしまったのだ。
メグリダはいまいましそうにエリオを見ると、エリオの頬を思いっきり叩いた。
「よくも俺さまの胸ぐらを掴んでくれたな。本来ならば自害させているところだが、目の前の奴らを殺せば許してやる」
「はっ、おおせのままに」
エリオは手に持った槍をパティたちに向けた。
123
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる