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パティの決意
しおりを挟む パティは神さまから授かった友達がとても強い魔力を持っている事を知った。マックスは火魔法が使えるので、暖炉やかまどに火を入れる事ができる。
チャーミーは土魔法が使えるので、たくさんの野菜や果物を作る事ができる。
ピンキーは大きくなって、パティを乗せて空を飛んでくれるので、遠くの街までのお買い物が楽になる。
アクアは水を出してくれるので、毎日の水くみをしなくてよくなった。
つつましく大変だったパティとジョナサンの生活がだいぶ楽になった。
だがパティはマックスたちの魔法がそれだけではない事に気づいていた。マックスたちの火、土、風、水の魔法は、それぞれ攻撃にも防御にも使えるのだ。
それまでパティはばく然と自分の将来を考えていた。パティの事を守ってくれているジョナサンがいずれ亡くなれば、パティはひとりぼっちになってしまう。
パティは村人から疎まれているので、村人のパティの当たりはさらに強くなるだろう。
パティは教会に住めなくなり、村を追い出されるかもしれない。パティはいつもそんな想像をして悲観にくれていた。だがパティに友達ができてからは、ある希望が見えてきた。
それは冒険者になる事。冒険者とは、十五歳以上で、王都の冒険者協会に登録すれば誰でもなれる。だが冒険者という職業はとても危険がともなう仕事だ。
パティは冒険者にぼんやりとした憧れを持っていたが、自分がなれるとは考えていなかった。だがマックスたちが共にいてくれれば、冒険者の仕事につく事も可能なのではないだろうか。
パティは自分を優しい目で見つめてくれる友達に声をかけた。
「ねぇ、マックス、チャーミー、ピンキー、アクア。私、王都に行って冒険者になりたいの。皆力を貸してくれる?」
マックスたちは嬉しそうに、ワンワン、ニャァニャァ、ピィピィ、プクプクと答えてくれた。
パティの決意は固まった、十五歳になったら村を出て、冒険者になろう。だがその前にやらなければならない事が山のようにあった。
一つはマックスたちの魔法の特訓だ。マックスたちは、パティがお願いすると何でも願いを叶えてくれる。だが戦闘時になれば、素早い指示が必要だ。パティはどんな敵に遭遇しても、素早く的確にマックスたちに魔法を使ってもらわなければならないのだ。
もう一つは、これはとても大切な事。パティを愛し育ててくれたジョナサンの事だ。ジョナサンの身体はどんどん弱って行った。パティがいなくなったら、生活に不便も出てくるだろう。ジョナサンが生活に困らないようにして行かなければ。
パティが村を去った後ならば、村人たちはきっとジョナサンの事を大切にしてくれるだろう。
パティは小さい頃、一度だけ家出をした事がある。心無い村人に言われたのだ。
パティがいない頃は、ジョナサンが神父を務める教会は、村人で賑わっていた。だがパティがやって来てからは村人が教会に近寄らなくなった。村人は怖い顔でパティに言ったのだ。お前がいなくなったほうが、ジョナサン神父は幸せなのだ、と。
幼いパティは村人の言葉を真に受け、家出を決意した。パティはジョナサンの事が大好きだった。そのジョナサンが不幸になるくらいなら、自分はどこかに消えて、のたれ死んだほうがいいと思ったのだ。
パティはジョナサンに教わったつたない文字で、お世話になりましたと書き記して教会を出た。
パティは教会を離れ、森の中に入って行った。行く当てがあるわけではない。小さなパティが森でうろうろしていれば、やがて獣が嗅ぎつけて噛み殺してしまうかもしれない。
それでも良かった。これでジョナサンが幸せになってくれるなら。パティは森をひたすら歩き続け、辺りは真っ暗になった。
ついに歩けなくなり、パティは大木の下でしゃがみ込んで泣いていた。どのくらい時間が経ったのだろうか。パティが泣き疲れてウトウトしていると、大好きなジョナサンの声が聞こえた。
パティ、パティ。と自分を呼ぶ声がする。これはきっと夢だ。パティは夢うつつの中で微笑んだ。
誰かに揺り起こされて目を開くと、そこには泣きはらした顔のジョナサンがいた。ジョナサンの側にはチコリと学校の校長もいた。
ジョナサンがパティのいなくなった事に気づいてチコリと校長に助けを求めたのだ。
ジョナサンはパティの無事を確かめると、パティを強く抱きしめて、良かった良かったと言ってくれた。パティはジョナサンの首にしがみつきながら、ジョナサンの元を離れるのは、ジョナサンが安心できる年齢まで、パティが成長してからでないといけないのだと思った。
チャーミーは土魔法が使えるので、たくさんの野菜や果物を作る事ができる。
ピンキーは大きくなって、パティを乗せて空を飛んでくれるので、遠くの街までのお買い物が楽になる。
アクアは水を出してくれるので、毎日の水くみをしなくてよくなった。
つつましく大変だったパティとジョナサンの生活がだいぶ楽になった。
だがパティはマックスたちの魔法がそれだけではない事に気づいていた。マックスたちの火、土、風、水の魔法は、それぞれ攻撃にも防御にも使えるのだ。
それまでパティはばく然と自分の将来を考えていた。パティの事を守ってくれているジョナサンがいずれ亡くなれば、パティはひとりぼっちになってしまう。
パティは村人から疎まれているので、村人のパティの当たりはさらに強くなるだろう。
パティは教会に住めなくなり、村を追い出されるかもしれない。パティはいつもそんな想像をして悲観にくれていた。だがパティに友達ができてからは、ある希望が見えてきた。
それは冒険者になる事。冒険者とは、十五歳以上で、王都の冒険者協会に登録すれば誰でもなれる。だが冒険者という職業はとても危険がともなう仕事だ。
パティは冒険者にぼんやりとした憧れを持っていたが、自分がなれるとは考えていなかった。だがマックスたちが共にいてくれれば、冒険者の仕事につく事も可能なのではないだろうか。
パティは自分を優しい目で見つめてくれる友達に声をかけた。
「ねぇ、マックス、チャーミー、ピンキー、アクア。私、王都に行って冒険者になりたいの。皆力を貸してくれる?」
マックスたちは嬉しそうに、ワンワン、ニャァニャァ、ピィピィ、プクプクと答えてくれた。
パティの決意は固まった、十五歳になったら村を出て、冒険者になろう。だがその前にやらなければならない事が山のようにあった。
一つはマックスたちの魔法の特訓だ。マックスたちは、パティがお願いすると何でも願いを叶えてくれる。だが戦闘時になれば、素早い指示が必要だ。パティはどんな敵に遭遇しても、素早く的確にマックスたちに魔法を使ってもらわなければならないのだ。
もう一つは、これはとても大切な事。パティを愛し育ててくれたジョナサンの事だ。ジョナサンの身体はどんどん弱って行った。パティがいなくなったら、生活に不便も出てくるだろう。ジョナサンが生活に困らないようにして行かなければ。
パティが村を去った後ならば、村人たちはきっとジョナサンの事を大切にしてくれるだろう。
パティは小さい頃、一度だけ家出をした事がある。心無い村人に言われたのだ。
パティがいない頃は、ジョナサンが神父を務める教会は、村人で賑わっていた。だがパティがやって来てからは村人が教会に近寄らなくなった。村人は怖い顔でパティに言ったのだ。お前がいなくなったほうが、ジョナサン神父は幸せなのだ、と。
幼いパティは村人の言葉を真に受け、家出を決意した。パティはジョナサンの事が大好きだった。そのジョナサンが不幸になるくらいなら、自分はどこかに消えて、のたれ死んだほうがいいと思ったのだ。
パティはジョナサンに教わったつたない文字で、お世話になりましたと書き記して教会を出た。
パティは教会を離れ、森の中に入って行った。行く当てがあるわけではない。小さなパティが森でうろうろしていれば、やがて獣が嗅ぎつけて噛み殺してしまうかもしれない。
それでも良かった。これでジョナサンが幸せになってくれるなら。パティは森をひたすら歩き続け、辺りは真っ暗になった。
ついに歩けなくなり、パティは大木の下でしゃがみ込んで泣いていた。どのくらい時間が経ったのだろうか。パティが泣き疲れてウトウトしていると、大好きなジョナサンの声が聞こえた。
パティ、パティ。と自分を呼ぶ声がする。これはきっと夢だ。パティは夢うつつの中で微笑んだ。
誰かに揺り起こされて目を開くと、そこには泣きはらした顔のジョナサンがいた。ジョナサンの側にはチコリと学校の校長もいた。
ジョナサンがパティのいなくなった事に気づいてチコリと校長に助けを求めたのだ。
ジョナサンはパティの無事を確かめると、パティを強く抱きしめて、良かった良かったと言ってくれた。パティはジョナサンの首にしがみつきながら、ジョナサンの元を離れるのは、ジョナサンが安心できる年齢まで、パティが成長してからでないといけないのだと思った。
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