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結登場
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加奈子は食事の後、コングに抱っこされながら伊織とどうでもいい話しをしていた。すると、倉庫の引き戸が控えめに開いた。加奈子がドアに視線を向けると、そこには結が所在なげに立っていた。
結は本当に加奈子を助けにやって来てしまったのだ。加奈子は結に対して感謝よりも怒りが湧いてしまい、思わず大声で叫んだ。
「結!あんたなんで来てんのよ!早く逃げなさい!私はあんたがいなくったって大丈夫なんだかね!」
結は加奈子の無事を確認したからか、ホッとしたような笑顔になった。その大人びた表情がさらに加奈子をいらだたせた。
結が抱っこしているテディベアのココが腹立たしい声で言った。
「かなこ、おまえのことなんてどうでもいいが、ゆいがしんぱいするからたすけにきてやったぞ?ありがたくおもえ」
「何ですって?!この毛玉!」
加奈子はコングのひざから乗り出して叫んだ。するとコングは優しく加奈子を抱き上げて、伊織のとなりに立たせた。加奈子が不思議そうにコングを見上げると、コングはそれまでの優しい表情から、厳しい顔になっていた。加奈子のとなりに立つ伊織が鋭い声で言った。
「コング、あいつがお前の相手だ。必ず勝てよ?」
「やめてよ!伊織。コングは優しい人形よ?!戦わせたりしないで!」
加奈子は思わず伊織に叫んだ。伊織はさも心外だといいたげな表情で答えた。
「何言ってんだ加奈子。戦人形は戦ってなんぼの人形だ」
加奈子は悔しくなって下くちびるを噛んだ。伊織の言う事は正しい。加奈子は幼い頃からずっと、戦人形を操る修行をしてきたのだ。伊織はポケットからスマートホンを取り出して電話をかけた。
「勝司さま。松永結があらわれました」
加奈子はハッとした。天賀勝司がやって来る。勝司は結を連れさろうとしているのだ。何とかしなければ。加奈子が焦っていると、伊織がのん気に話しかけて来た。
「加奈子。コングとクマの戦人形の戦いを動画で撮ってくれ。念動力で浮かせればできるだろう?」
「はぁ?何よ、自分でやんなさいよ!」
「俺はコングを操るのに集中してるの。お前の食事代経費で落ちないんだからな、その分働け。あ、もしスマホ落としたりしたらコングにお尻ペンペンさせるからな」
「そんな事されたらお尻が腫れちゃうわよ!」
だったら落とすなと言い終わると、伊織は加奈子の方にポイッとスマートホンを投げた。加奈子は慌てて念動力でスマートホンを浮かせる。念動力で動画画面にすると、結の腕から飛び降りたココが、トテトテとコングの方に走りよって来た。コングもココに近づく。
次の瞬間、ココはニメートールほどの巨大なテディベアになり、コングに殴りかかった。コングも負けずに右腕の剛腕を振るう。バキッと鋭い音と共に、ココの右手のこぶしがコングの顔にめり込み、コングの右手のこぶしがココの顔にめり込んだ。
加奈子はヒッと小さな悲鳴をあげた。コングとココは激しい撃ち合いの応戦を始めた。加奈子はスマートホンを空中に固定しながら、心の中で願った。どうかコングもココも壊れませんように、と。
結は本当に加奈子を助けにやって来てしまったのだ。加奈子は結に対して感謝よりも怒りが湧いてしまい、思わず大声で叫んだ。
「結!あんたなんで来てんのよ!早く逃げなさい!私はあんたがいなくったって大丈夫なんだかね!」
結は加奈子の無事を確認したからか、ホッとしたような笑顔になった。その大人びた表情がさらに加奈子をいらだたせた。
結が抱っこしているテディベアのココが腹立たしい声で言った。
「かなこ、おまえのことなんてどうでもいいが、ゆいがしんぱいするからたすけにきてやったぞ?ありがたくおもえ」
「何ですって?!この毛玉!」
加奈子はコングのひざから乗り出して叫んだ。するとコングは優しく加奈子を抱き上げて、伊織のとなりに立たせた。加奈子が不思議そうにコングを見上げると、コングはそれまでの優しい表情から、厳しい顔になっていた。加奈子のとなりに立つ伊織が鋭い声で言った。
「コング、あいつがお前の相手だ。必ず勝てよ?」
「やめてよ!伊織。コングは優しい人形よ?!戦わせたりしないで!」
加奈子は思わず伊織に叫んだ。伊織はさも心外だといいたげな表情で答えた。
「何言ってんだ加奈子。戦人形は戦ってなんぼの人形だ」
加奈子は悔しくなって下くちびるを噛んだ。伊織の言う事は正しい。加奈子は幼い頃からずっと、戦人形を操る修行をしてきたのだ。伊織はポケットからスマートホンを取り出して電話をかけた。
「勝司さま。松永結があらわれました」
加奈子はハッとした。天賀勝司がやって来る。勝司は結を連れさろうとしているのだ。何とかしなければ。加奈子が焦っていると、伊織がのん気に話しかけて来た。
「加奈子。コングとクマの戦人形の戦いを動画で撮ってくれ。念動力で浮かせればできるだろう?」
「はぁ?何よ、自分でやんなさいよ!」
「俺はコングを操るのに集中してるの。お前の食事代経費で落ちないんだからな、その分働け。あ、もしスマホ落としたりしたらコングにお尻ペンペンさせるからな」
「そんな事されたらお尻が腫れちゃうわよ!」
だったら落とすなと言い終わると、伊織は加奈子の方にポイッとスマートホンを投げた。加奈子は慌てて念動力でスマートホンを浮かせる。念動力で動画画面にすると、結の腕から飛び降りたココが、トテトテとコングの方に走りよって来た。コングもココに近づく。
次の瞬間、ココはニメートールほどの巨大なテディベアになり、コングに殴りかかった。コングも負けずに右腕の剛腕を振るう。バキッと鋭い音と共に、ココの右手のこぶしがコングの顔にめり込み、コングの右手のこぶしがココの顔にめり込んだ。
加奈子はヒッと小さな悲鳴をあげた。コングとココは激しい撃ち合いの応戦を始めた。加奈子はスマートホンを空中に固定しながら、心の中で願った。どうかコングもココも壊れませんように、と。
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