49 / 87
ヴィヴィアンの正体
しおりを挟む
レティシアはヴィヴィアンにうながされ、広く豪しゃな廊下を歩いているとリカオンに声をかけられた。
「レティシア!良かった、帰って来たんだな。マティアスが、レティシアが帰ってこないとうるさくて、捜索隊を出すところだったんだ」
「それは大変申し訳ありませんでした。リカオンさまと王子殿下の愛馬をお預かりしたのに」
「ああ、イグニートを連れて来てくれてありがとう。マティアスもマックスに会いたがっていたが、それだけじゃないんだぞ?」
「?」
レティシアはリカオンの言葉の意味がよくわからず首をかしげていると、ヴィヴィアンが少し強い口調で言った。
「リカオン。レティシアお嬢さまをお引き止めしないの。早く自分の仕事に戻りなさい」
「チェッ!わかったよ、ヴィヴィ」
レティシアはヴィヴィアンとリカオンのやり取りを不思議そうにながめた。一体ヴィヴィアンは何者なのだろうか。ザイン王国の王子であるマティアスにもバルべ公爵令息であるリカオンにもとても親しげだ。
「そういやレティシア。その剣はこれから邪魔だろ?俺がペンダントにしてやるよ」
レティシアの視線に気づいたリカオンが言った。レティシアの剣。剣の師匠であるヴィヴィアンが土鉱物魔法で作ってくれたのだ。
レティシアはリカオンに言われるままに腰の剣を鞘から抜いて渡すと、彼はレティシアの剣の柄を握り込んだ。剣が光に包まれると、みるみる小さくなった。
リカオンはレティシアの目の前で手をひらいた。そこには剣の装飾になっていたユリの花のペンダントが乗っていた。
「わぁ、綺麗」
「前にレティシアにあげた鎧と兜と一緒だ。剣になれと念じれば元の剣になる」
「ありがとうございます。リカオンさま」
レティシアは小さなユリのペンダントを身につけた。ペンダントを見て微笑んだヴィヴィアンが口を開く。
「リカオンは武器の生成速度はいまいちだけど、細かな細工は上手なのよね」
「武器の生成速度は前より上がったってぇの。それに武器を貴金属にして持たせないと、マティアスもルイスもすぐに殺されちまってただろ?」
リカオンは小さな子供がするようなふてくされた顔になる。レティシアは好奇心が押されられなくなって、ついに質問した。
「あの、ヴィヴィアン師匠とリカオンさまってどういうご関係なんですか?」
レティシアの質問に、ヴィヴィアンとリカオンがきょとんとした顔になる。ヴィヴィアンが頬に手を当てながら困った顔で言う。
「あら、リカオン。言ってなかったの?」
「あれ?ヴィヴィも言ってなかったの?レティシア、俺たち見てわかんねぇ?ヴィヴィは俺の姉ちゃんだよ」
リカオンの衝撃の発言にレティシアは大声をあげる。
「えっ?!ヴィヴィアン師匠とリカオンさまがご姉弟?!ヴィヴィアン師匠、いえバルべ公爵令嬢さま。とんだご無礼を」
レティシアは慌ててヴィヴィアンに頭を下げた。何故気づかなかったのだろう。言われてみればヴィヴィアンとリカオンの容姿はとても似ている。真っ赤な美しい赤髪。切れ長の麗俐な目元。
レティシアが青くなって頭をさげていると、ヴィヴィアンがクスクス笑ってレティシアの肩に手を置いた。
「今まで通りで大丈夫ですよ?レティシアお嬢さま。それに、お嬢さまは私の剣の弟子でもあるんです。だからリカオンもマティウスも貴女の兄弟子になるんですよ?師匠から見れば弟子は皆同じです」
「あ、ありがとうございます、ヴィヴィアン師匠」
「ですが、レティシアお嬢さまは、私の弟子の中で一番へっぽこです!常に剣に精進してください!」
「はい!全身全霊をかけて精進します!」
レティシアが慌てて背筋を正すと、ヴィヴィアンは美しく微笑んだ。
「レティシア!良かった、帰って来たんだな。マティアスが、レティシアが帰ってこないとうるさくて、捜索隊を出すところだったんだ」
「それは大変申し訳ありませんでした。リカオンさまと王子殿下の愛馬をお預かりしたのに」
「ああ、イグニートを連れて来てくれてありがとう。マティアスもマックスに会いたがっていたが、それだけじゃないんだぞ?」
「?」
レティシアはリカオンの言葉の意味がよくわからず首をかしげていると、ヴィヴィアンが少し強い口調で言った。
「リカオン。レティシアお嬢さまをお引き止めしないの。早く自分の仕事に戻りなさい」
「チェッ!わかったよ、ヴィヴィ」
レティシアはヴィヴィアンとリカオンのやり取りを不思議そうにながめた。一体ヴィヴィアンは何者なのだろうか。ザイン王国の王子であるマティアスにもバルべ公爵令息であるリカオンにもとても親しげだ。
「そういやレティシア。その剣はこれから邪魔だろ?俺がペンダントにしてやるよ」
レティシアの視線に気づいたリカオンが言った。レティシアの剣。剣の師匠であるヴィヴィアンが土鉱物魔法で作ってくれたのだ。
レティシアはリカオンに言われるままに腰の剣を鞘から抜いて渡すと、彼はレティシアの剣の柄を握り込んだ。剣が光に包まれると、みるみる小さくなった。
リカオンはレティシアの目の前で手をひらいた。そこには剣の装飾になっていたユリの花のペンダントが乗っていた。
「わぁ、綺麗」
「前にレティシアにあげた鎧と兜と一緒だ。剣になれと念じれば元の剣になる」
「ありがとうございます。リカオンさま」
レティシアは小さなユリのペンダントを身につけた。ペンダントを見て微笑んだヴィヴィアンが口を開く。
「リカオンは武器の生成速度はいまいちだけど、細かな細工は上手なのよね」
「武器の生成速度は前より上がったってぇの。それに武器を貴金属にして持たせないと、マティアスもルイスもすぐに殺されちまってただろ?」
リカオンは小さな子供がするようなふてくされた顔になる。レティシアは好奇心が押されられなくなって、ついに質問した。
「あの、ヴィヴィアン師匠とリカオンさまってどういうご関係なんですか?」
レティシアの質問に、ヴィヴィアンとリカオンがきょとんとした顔になる。ヴィヴィアンが頬に手を当てながら困った顔で言う。
「あら、リカオン。言ってなかったの?」
「あれ?ヴィヴィも言ってなかったの?レティシア、俺たち見てわかんねぇ?ヴィヴィは俺の姉ちゃんだよ」
リカオンの衝撃の発言にレティシアは大声をあげる。
「えっ?!ヴィヴィアン師匠とリカオンさまがご姉弟?!ヴィヴィアン師匠、いえバルべ公爵令嬢さま。とんだご無礼を」
レティシアは慌ててヴィヴィアンに頭を下げた。何故気づかなかったのだろう。言われてみればヴィヴィアンとリカオンの容姿はとても似ている。真っ赤な美しい赤髪。切れ長の麗俐な目元。
レティシアが青くなって頭をさげていると、ヴィヴィアンがクスクス笑ってレティシアの肩に手を置いた。
「今まで通りで大丈夫ですよ?レティシアお嬢さま。それに、お嬢さまは私の剣の弟子でもあるんです。だからリカオンもマティウスも貴女の兄弟子になるんですよ?師匠から見れば弟子は皆同じです」
「あ、ありがとうございます、ヴィヴィアン師匠」
「ですが、レティシアお嬢さまは、私の弟子の中で一番へっぽこです!常に剣に精進してください!」
「はい!全身全霊をかけて精進します!」
レティシアが慌てて背筋を正すと、ヴィヴィアンは美しく微笑んだ。
20
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!


公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる