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チップの作戦
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レティシアは空を飛んでいた。大きくなったチップの背中に乗って。
レティシアの頬に心地よい風が当たる。戦争の最中だというのにとてものどかな気分だ。敵地の偵察中ではあるが。
「いいお天気の日に空を散歩できるなんて素敵ね!」
『あはは。そうだねレティシア!あのクソヒゲジジイも来れば良かったんだ。そうしたら僕が空高いところから落っこどしてやったのに』
クソヒゲジジイとは、マクサ将軍の事だ。レティシアにつらく当たるマクサ将軍の事を、チップはとても嫌っている。
レティシアはそんな事言ったら悪いわよ、と言いながらクスクス笑った。
レティシアが未来で視たマティアス王子とマクサ将軍を現在と比べると、だいぶ印象が違っていた。
マクサ将軍はマティアス王子にとても信頼されているのだと思っていた。だが兵士として間近に王子と将軍を観察してみると、彼らは反目し合っているようだった。
マティアス王子の本当の腹心はリカオンのようで、リカオンはマティアスの手足となり、王子と部下たちの間を上手に取り持っているように見えた。
未来のレティシアは、マティアス王子の妻としてザイン王国軍に同行していたので、軍内部の事はまったくといっていいほど知らなかった。想像と実際に見るとでは大きく違うのだ。
チップは近日中に大きな戦いになるであろう戦場を空から見下ろした。目の前に未来を視る事ができる水鏡を出現させる。
『あーあ、人間ってダメだねぇ。イグニア軍はザイン王国軍よりも数が少ないけど、魔法使い部隊をうまく使って兵力を増大させている。それに引き換えザイン王国軍は王子を筆頭にゴリ押し戦法か。こんな戦い方で、よくここまで死ななかったなぁ。やっぱり僕の魔法で、』
「それはだめ!」
レティシアは思わずチップの言葉をさえぎってしまった。チップは驚いた顔で背中に乗せているレティシアを振り向いた。
「大きな声を出してごめんなさい。だけどチップ、これは人間同士のくだらない戦いなの。霊獣のあなたが身体をはる事はないのよ?」
『・・・。どうやら未来の僕は愚かな選択をしたようだね』
「ごめんなさい、チップ」
『いいんだよレティシア。君の視た予知夢の話はしなくていいよ。僕に話した事でまた未来が変わるかもしれないからね』
「・・・。わかったわ、チップ。ねぇ、チップ。あなたは水の霊獣でしょう?水辺のある場所なら、チップは自分の魔力をそこまで消費しないで戦えるんじゃない?」
『・・・。未来の僕はそこまで弱っていたのか。情けないなぁ』
「そんな事ない。チップは私を守ろうとしてくれたんだもの!」
『ありがとう、レティシア。急に剣を学ぶなんて、酔狂な事言い出すから驚いていたけど、僕のためなんだね?』
「ええ。チップと私の未来のためよ」
『うん。水辺で戦うのはよい案だ。だけど、三百ものイグニア軍を水辺まで誘い込むのは難しい、』
「・・・」
『僕にいい考えがある』
チップはレティシアに振り向いてニヤリと笑った。
レティシアの頬に心地よい風が当たる。戦争の最中だというのにとてものどかな気分だ。敵地の偵察中ではあるが。
「いいお天気の日に空を散歩できるなんて素敵ね!」
『あはは。そうだねレティシア!あのクソヒゲジジイも来れば良かったんだ。そうしたら僕が空高いところから落っこどしてやったのに』
クソヒゲジジイとは、マクサ将軍の事だ。レティシアにつらく当たるマクサ将軍の事を、チップはとても嫌っている。
レティシアはそんな事言ったら悪いわよ、と言いながらクスクス笑った。
レティシアが未来で視たマティアス王子とマクサ将軍を現在と比べると、だいぶ印象が違っていた。
マクサ将軍はマティアス王子にとても信頼されているのだと思っていた。だが兵士として間近に王子と将軍を観察してみると、彼らは反目し合っているようだった。
マティアス王子の本当の腹心はリカオンのようで、リカオンはマティアスの手足となり、王子と部下たちの間を上手に取り持っているように見えた。
未来のレティシアは、マティアス王子の妻としてザイン王国軍に同行していたので、軍内部の事はまったくといっていいほど知らなかった。想像と実際に見るとでは大きく違うのだ。
チップは近日中に大きな戦いになるであろう戦場を空から見下ろした。目の前に未来を視る事ができる水鏡を出現させる。
『あーあ、人間ってダメだねぇ。イグニア軍はザイン王国軍よりも数が少ないけど、魔法使い部隊をうまく使って兵力を増大させている。それに引き換えザイン王国軍は王子を筆頭にゴリ押し戦法か。こんな戦い方で、よくここまで死ななかったなぁ。やっぱり僕の魔法で、』
「それはだめ!」
レティシアは思わずチップの言葉をさえぎってしまった。チップは驚いた顔で背中に乗せているレティシアを振り向いた。
「大きな声を出してごめんなさい。だけどチップ、これは人間同士のくだらない戦いなの。霊獣のあなたが身体をはる事はないのよ?」
『・・・。どうやら未来の僕は愚かな選択をしたようだね』
「ごめんなさい、チップ」
『いいんだよレティシア。君の視た予知夢の話はしなくていいよ。僕に話した事でまた未来が変わるかもしれないからね』
「・・・。わかったわ、チップ。ねぇ、チップ。あなたは水の霊獣でしょう?水辺のある場所なら、チップは自分の魔力をそこまで消費しないで戦えるんじゃない?」
『・・・。未来の僕はそこまで弱っていたのか。情けないなぁ』
「そんな事ない。チップは私を守ろうとしてくれたんだもの!」
『ありがとう、レティシア。急に剣を学ぶなんて、酔狂な事言い出すから驚いていたけど、僕のためなんだね?』
「ええ。チップと私の未来のためよ」
『うん。水辺で戦うのはよい案だ。だけど、三百ものイグニア軍を水辺まで誘い込むのは難しい、』
「・・・」
『僕にいい考えがある』
チップはレティシアに振り向いてニヤリと笑った。
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