薄幸召喚士令嬢もふもふの霊獣の未来予知で破滅フラグをへし折ります

盛平

文字の大きさ
上 下
29 / 87

唯一の女性レティシア

しおりを挟む
 レティシアが起床すると、外が騒がしかった。レティシアは急いで身支度をしてテントを出た。どうやら兵士全員が集まるようにと召集を受けたらしい。

 何故レティシアには伝令が来なかったのだろうか。レティシアは首をかしげながら集合場所に急いだ。

 そこには兵士全員が集まっているようだった。簡易的に作られた台の上にはマティアス王子が立っていた。機嫌が悪いのか顔をしかめていた。

 マティアスの後ろにはリカオンが立っていて、レティシアに気づくと大きく手を振った。

「おお、レティシア!起きたか!こっちに来い」

 リカオンは他の兵士の前ではレティシアの事をレティと呼んでいた。それなのに女の名前で呼ぶという事は、昨日の出来事でレティシアが女である事が露見してしまったのかもしれない。

 レティシアが不安な気持ちで近寄ると、リカオンが駆け寄ってきた。

「申し訳ありません、リカオンさま。何かご迷惑をおかけしたんですね?」
「いいや、レティシアのせいじゃない」

 リカオンはレティシアをうながし台に乗るように言った。

 レティシアが台に乗ると、マティアスが苦虫を噛みつぶしたような顔になった。

「この者はギオレン男爵家令嬢レティシア嬢だ。彼女は希少な召喚士ゆえ、自ら志願して我が軍に同行してくれている。女性であるがゆえ、軍規を乱す恐れを考慮して、男性の振りをしてくれていた。だが昨夜兵士の風上にもおけぬ者がレティシア嬢のテントに忍び込んだ」

 マティアスが指差す視線の先には、顔をパンパンにしたゾーイが後ろ手にしばれてうなだれていた。

「この者は軍法会議で除隊を言い渡した。ザイン王国に強制送還の後刑に処す」
「そ、そんな!お許しください!王子殿下!」

 わめき叫んでいるゾーイを、兵士たちがどこかに連行して行った。兵士たちが解散した後、レティシアはマティアスに呼ばれた。

「レティシア嬢、この度は申し訳なかった。怖い思いをした事だろう」
「お気遣い感謝します王子殿下。この度の見せしめを見れば、他の兵士たちもこのような行動はしないでしょう」
「いや、今後このような事が決してないように、レティシア嬢のテントは俺の横に立てるように」
「えっ!?」

 レティシアは驚きすぎて声を出してしまった。レティシアの態度が、マティアスの提案を嫌がっていると思ったのだろう。マティアスは焦った顔になった。

「い、いや違うのだ!俺は、その、」

 マティアスは突然しどろもどろになる。となりにいたリカオンが、マティアスの肩をたたきながらレティシアに言った。

「大丈夫だよ、レティシア。マティアスはビビリだから夜這いなんてできねぇよ!安心していい」
「リカオン、貴様、」

 レティシアは未来と同じようにマティアスのとなりにテントをはる事になってしまった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?

海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。 そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。 夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが── 「おそろしい女……」 助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。 なんて男! 最高の結婚相手だなんて間違いだったわ! 自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。 遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。 仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい── しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...