27 / 87
レティシア出陣
しおりを挟む
準備は着々と進み、レティシアたちザイン王国軍はイグニア国へ向けて出発した。
レティシアは結局リカオン・バルべ男爵の父バルべ公爵の遠縁の貴族の息子という事にした。女が戦場に行った時の混乱を避けるためだ。
レティシアは慎ましやかな胸にさらしを巻き、髪をしばって男装をした。腰にはヴィヴィアンの剣をさし、牝馬ティアラに騎乗した。
『わぁ、レティシアカッコいい!』
「ありがとう、チップ」
『だけどこれから行軍するんだ。男だらけの中で野営生活するんだから気をつけるんだよ?僕は絶対にレティシアの側を離れないからね?』
「頼りにしているわ、チップ」
未来予知の時は、レティシアはマティアス王子の妻として行軍した。そのため生活に不便のないように細やかな配慮がされていた。
だが今はレティシアは一介の兵士に過ぎない。テントを張り、野営をするのはすべて自分でしなければいけない。
食事は他の兵士たちと一緒に食べる。自分の皿を持って列に並び、料理人が作ったスープを入れてもらい、携帯された固いパンを受け取る。
レティシアが兵士たちと離れた場所で食事をとっていると、一人の兵士が声をかけてきた。身なりがとてもいい、きっと貴族の息子なのだろう。
「お前、見ない顔だな。俺はゴドン伯爵家の次男ゾーイだ。お前はどこの家の者だ?」
「・・・。ギオレン男爵家のレティです」
「ふん、格下だな。ならば俺の言う事を聞け。俺の分の食事を運んでこい」
父親が伯爵でも、爵位を継いでいない息子には何の権力もない。ただ親の威光を振りかざしているだけだ。レティシアは冷めた目でゾーイを見て言った。
「ゾーイさま。他の貴族のご子息も皆ご自分の事はご自分でやっておられます」
レティシアは食事を終えると早々にテントに帰った。
どうやら小柄なレティシアは兵士たちに軽んじられているようだ。
もし兵士に難癖をつけられた時、バルべ公爵の名前を出すようにとリカオンからは言われていた。
だがレティシアは極力その事を言いたくなかった。これから長い期間共に過ごす者たちだ。一兵士として皆と過ごしたかった。
レティシアが行軍して数日経った。ゾーイはレティシアと目が合うと、あからさま敵意の視線を向けていた。レティシアがゾーイを邪険にしたからだ。
レティシアは何事もなかつたようにゾーイの前を歩いて行った。
レティシアは結局リカオン・バルべ男爵の父バルべ公爵の遠縁の貴族の息子という事にした。女が戦場に行った時の混乱を避けるためだ。
レティシアは慎ましやかな胸にさらしを巻き、髪をしばって男装をした。腰にはヴィヴィアンの剣をさし、牝馬ティアラに騎乗した。
『わぁ、レティシアカッコいい!』
「ありがとう、チップ」
『だけどこれから行軍するんだ。男だらけの中で野営生活するんだから気をつけるんだよ?僕は絶対にレティシアの側を離れないからね?』
「頼りにしているわ、チップ」
未来予知の時は、レティシアはマティアス王子の妻として行軍した。そのため生活に不便のないように細やかな配慮がされていた。
だが今はレティシアは一介の兵士に過ぎない。テントを張り、野営をするのはすべて自分でしなければいけない。
食事は他の兵士たちと一緒に食べる。自分の皿を持って列に並び、料理人が作ったスープを入れてもらい、携帯された固いパンを受け取る。
レティシアが兵士たちと離れた場所で食事をとっていると、一人の兵士が声をかけてきた。身なりがとてもいい、きっと貴族の息子なのだろう。
「お前、見ない顔だな。俺はゴドン伯爵家の次男ゾーイだ。お前はどこの家の者だ?」
「・・・。ギオレン男爵家のレティです」
「ふん、格下だな。ならば俺の言う事を聞け。俺の分の食事を運んでこい」
父親が伯爵でも、爵位を継いでいない息子には何の権力もない。ただ親の威光を振りかざしているだけだ。レティシアは冷めた目でゾーイを見て言った。
「ゾーイさま。他の貴族のご子息も皆ご自分の事はご自分でやっておられます」
レティシアは食事を終えると早々にテントに帰った。
どうやら小柄なレティシアは兵士たちに軽んじられているようだ。
もし兵士に難癖をつけられた時、バルべ公爵の名前を出すようにとリカオンからは言われていた。
だがレティシアは極力その事を言いたくなかった。これから長い期間共に過ごす者たちだ。一兵士として皆と過ごしたかった。
レティシアが行軍して数日経った。ゾーイはレティシアと目が合うと、あからさま敵意の視線を向けていた。レティシアがゾーイを邪険にしたからだ。
レティシアは何事もなかつたようにゾーイの前を歩いて行った。
20
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!


ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる