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プリシラとエスメラルダ2

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 エスメラルダはプリシラの頭を撫でながら言った。

「こんな事言ったら、プリシラは怒るかもしれないけど。私は、ベルニのお父さまとお母さまがプリシラを捨ててくれて良かったと思ってる」
「お姉ちゃん?」
「ベルニの両親がプリシラを捨てたから、私は貴族というものに疑問を持った」
「そうね、もし私がエレメント使いではなくて魔女だったら、きっとベルニの両親の言う通りになってた。言われた通りに花嫁修行して、言われた所にお嫁に行っていたと思う」
「ええ、だけどプリシラは仕事をして、立派に働いている」
「うん、お姉ちゃんも冒険者になってその名をとどろかせている」

 エスメラルダはイタズラっぽい顔をして言った。

「プリシラ、面白い事教えてあげましょうか?ロナルドが引退して、ベルニの屋敷の執事になったあの男。冒険者協会で捕縛依頼がきている悪党なの」
「えっ?!お姉ちゃん気づいていたのにそのままにしていたの?」
「ええ、奴の狙いはベルニの両親の財産。使用人たちに危害がおよばないならと傍観していたわ。ベルニの両親が屋敷を出る時、マーサが私に言ったの、執事が金品がつまった馬車で先に出発したって。十中八九そのまま姿を消すでしょうね」
「じゃあベルニのお父さまとお母さまは、」
「ええ、無一文になって、別荘で執事の到着を待っているでしょうね」
「・・・。お姉ちゃん、お願い」
「・・・。もう、アンタって子は。わかったわよ。生活費だけはベルニの両親に送ってあげる」
「ありがとう!お姉ちゃん!」
「もう。これからのベルニ子爵家だって大変なんだからね?財産はベルニの両親が根こそぎ持って行こうとして悪党に盗まれて、この屋敷にはお金がないの。ロナルドを始め、使用人たちの高齢化が進んでいるから、無理のない働き方をしてもらわなければならないし」
「お姉ちゃん!私も手伝うわ。何をしたらいいかしら?!」

 エスメラルダはクスリと笑って答えた。

「ならプリシラは、自分の負担にならない程度に、毛玉に乗ってベルニ子爵家の屋敷に遊びに来て?そしてマーサやロナルドやジョナサンとお話ししてちょうだい」
「?。それだけ?」
「いい?プリシラ。この屋敷の使用人がどうしてごう慢で残酷なお父さまとお母さまにつかえていたかわかる?皆プリシラのためにがんばっているのよ?プリシラの事が大好きだからなの。だからね、少しだけでもプリシラが屋敷に来てくれれば皆喜ぶのよ」
「うん。屋敷の皆は幸せだわ。お姉ちゃんみたいなご主人さまがベルニ子爵になるんだもの」

 エスメラルダは顔を真っ赤にして怒った。

「べ、別に、私はベルニ子爵として恥にならないように動いているだけよ!」
「そういう事にしておいてあげる」
「それよりもプリシラ。パルヴィス公爵家だって財政的にはかなり困窮しているじゃない。これからどうするの?」
「あら、私はパルヴィス公爵家の令嬢ではあるけれど、配達屋なのよ。配達の仕事をしてお金を稼ぐわ」
「プリシラ、平民の人たちの仕事をこなしても、そんなにお金にはならないわ」
「ええ、平民の人たちは大切なお客さんだけど、そんなに稼げない。だからね、私社交界に出て、貴族の人たちに宣伝しているの。私に依頼してくれれば、どんなに珍しい物でもすぐにお届けしますって」

 プリシラの発言な、エスメラルダは目を丸くして言った。

「あきれた。プリシラが足しげく社交界や夜会に出て行くのは、仕事だったのね?」
「ええ、それ以外に何があるの。あんな腹の探り合いのような場所、仕事でなければ行かないわ」
「ふふ、世間知らずのお嬢さんが、ずいぶんたくましくなったわね?」
「あら、知らなかった?私の姉は鋼鉄の意思を持った女の人よ。その妹の私が、強くないわけないじゃない」
「そうね。さすが私の妹だわ。ちょっと毛玉。プリシラの事をしっかり守って働くのよ?」

 エスメラルダは突然眠っているタップに話しを振った。

『うるせぇなぁ、悪魔姉ちゃん。当たり前だろ?言われなくったってプリシラは俺が守ってやる』

 タップは不機嫌そうに答えた。プリシラは手を伸ばして、タップのフワフワの背中を撫でながら言った。

「ありがとう、タップ」

 エスメラルダはプリシラに優しく、もう眠るように言った。プリシラは満ち足りた気持ちで眠りに落ちた。

 

 
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