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プリシラの後悔

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 プリシラは姉のエスメラルダを抱きしめてがく然とした。プリシラは小さな頃から、姉の事を強くて頼もしい女性だとずっと思っていた。

 プリシラが泣いていればいつも助けてくれて、プリシラか困っていれば名案を出してくれた。

 だがプリシラの腕の中にいるエスメラルダは、腕に力を入れたら骨が折れてしまいそうなほどきゃしゃだった。

 プリシラは姉に守られるばかりで、エスメラルダがか弱い女性である事を忘れていたのだ。

 プリシラのとなりにパタパタとタップが飛んでいる。プリシラはタップにお願いした。

「タップ、お願い。お姉ちゃんのケガを治して」
『仕方ねぇなあ』

 タップはエスメラルダの腫れた頬にピンク色の鼻をちょこんと当てた。エスメラルダが輝き出すと、彼女の痛々しい顔の腫れと鼻血は瞬時に治癒した。

 プリシラはエスメラルダの美しい磁器のような白い頬に雨のようなキスをおくりながら言った。

「お姉ちゃん、ごめんなさい!」
「・・・。どうしてプリシラが謝るの?」
「私ね、自分がケガした時は、痛いのをがまんすればいいんだって思ってた。でも違ったの。自分の大切な人がケガしてしまったら、自分がケガするより心が痛いんだわ。私はいつも無責任にケガをして、お姉ちゃんにこんな辛い思いをさせていたのね?!」
「私が、プリシラの大切な人?」
「ええ、そうよ!私の命よりも大事な私のお姉ちゃん!お姉ちゃんがこれから冒険者の依頼に行くのが心配で仕方ないわ!今度から私とタップもついて行っていい?」
「・・・。嫌よ、邪魔くさいから」
「ええっ?!」
「・・・。まぁ、気持ちだけもらっておくわ。今回の事は私のミスよ。次からは決して敵に遅れを取らないわ」
「うん、うん。お姉ちゃん、無事じゃなかったけど無事で良かった!」

 プリシラは自分の腕からに逃げようとするエスメラルダをしっかりと抱きしめて、左右の頬に何度もキスをした。

 国民たちの拘束が終わったのだろう。リベリオたちがぞくぞくと、この部屋に入って来た。

 プリシラのおかしなテンションに、周りがドン引きしている事にはまったく気づいていなかった。

 プリシラがようやく落ち着いた頃、ドウマ国の国王ならびに国民たちを拘束し、王都の騎士団に放り込んだ。

 プリシラは姉のエスメラルダを助けるために尽力してくれた仲間に心からの感謝をした。

 エスメラルダは恥ずかしいのかぶっきらぼうにありがとうと言っていた。

「プリシラの姉ちゃん。もうプリシラに心配かけんなよ?プリシラ、慌てふためいて本当に面倒だったんだからな」
「わかったわよ。もう、プリシラを心配させたりしないわ。それより、プリシラ、トビー。あなたたち仕事はどうしたの?」
「仕事は一時中断したままなの。お姉ちゃんを助けるために」

 突然エスメラルダがギロリとプリシラとトビーをにらんだ。トビーがビクリと震えあがったので、プリシラが代わりに答えた。

「そんな事じゃいけないわ。プロなら仕事をきっちりこなしなさい。お姉ちゃんも手伝うから」

 エスメラルダはテキパキとその場を取り仕切り、ガイオとエレナはパルヴィス公爵家に空間魔法で送り届け、チコとサラも城下町の宿屋に送り届けた。

 プリシラにしきりに話しかけるリベリオの尻をけ飛ばして帰らせると、もう一度空間魔法の出入り口を開き、プリシラたちをうながした。

 空間魔法の出口はマージ運送会社だった。トビーが駆け出して叔母の名前を呼ぶ。マージは会社から飛び出て来てトビーを抱きしめ、ケガがないか確かめていた。

 マージはトビーの無事を確認すると、しょざいなげに立っているエスメラルダを優しく抱きしめて言った。

「エスメラルダ、無事で良かった」
「・・・。マージさん。ご心配おかけしました」

 エスメラルダはプリシラとトビーに荷物を持たせ、空間魔法を開いた。エスメラルダはプリシラたちを空間魔法で荷物の届け先近くまで送ってくれたのだ。

 空間魔法の出入り口から姉に手を振ると、エスメラルダは少し微笑んで手を振りかえしてくれた。
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