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出発準備

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「もう、本当にひどいよぉ」

 リベリオは飛行魔法で空を飛びながら、なおもグチグチと文句を言っている。大きくなったタップの背中に乗っているチコが意地悪い顔をして言った。

「男がグチグチとみっともないわよ?プリシラにいい所見せられるチャンスなんだから、がんばりなさい?」
「そっ、そうか!プリシラ、俺がんばるよ!」

 プリシラはタップの背中に乗りながら答えた。

「ありがとう、リベリオ。頼りにしているわ」
「それはそうとプリシラ。ドウマ国はこころしてかからなけれないけない相手だ。特に奴らは対魔法使いの戦い方を熟知している」
「対魔法使い?」
「ああ。プリシラのお姉さんはすごい魔女だ。おそらく一対一なら、ドウマ国の魔法使いで勝てる奴はいないだろう。だが奴らはチームワークで戦う。そして俺たちを魔力を制限する結界に閉じ込めたように、魔法使いの魔力を封じる戦いをするんだ」

 プリシラはブルリと身体を震わせた。姉のエスメラルダは最恐の魔女だが、魔力を封じられては、ただのか弱い女性だ。もしエスメラルダがドウマ国の手に落ちてしまったらと考えただけで、プリシラは心配でどうにかなってしまいそうだった。

 リベリオは真剣な表情になって、プリシラに提案した。

「プリシラ、もっと助けが必要だ。君の知り合いに強い魔法使いはいないかい?」

 強い魔法使い。とっさに浮かんだのが、姉のエスメラルダだ。姉以外の強力な魔法を使う人物。

 いた、エレナだ。エレナは歌った事が現実になってしまう、ものすごい魔力の持ち主だ。

 プリシラはつい先日、ドウマ国がエレナを標的にするかもしれないと、エレナの身の回りに気をつけるよう、エレナと父親のガイオに忠告をした。

 子煩悩なガイオは、必ずエレナを守ると息まいていた。エレナはテンションのおかしい父親を嫌そうに見ていた。

 エレナをとても大切にしているガイオが、エレナの同行を許可してくれないかもしれない。だがプリシラにはエレナが頼みの綱だった。

「いいぜ。ドウマ国に乗り込んでぶっ潰そうぜ」

 パルヴィス公爵家に到着したプリシラは、断られるのを覚悟でガイオとエレナにドウマ国制圧の同行を頼むと、意外にもあっさり同意してくれた。

「お父さんたら、私を心配するあまり、私がいるメイド部屋にいつも顔を出すの。だから他のメイドさんたちが怒っちゃって、もう大変なの」

 どうやらガイオは、娘を心配するあまり過剰な付きまといをして、周りからうっとうしがられているようだ。

「俺的にはドウマ国よりも、メイド連中の方が怖ぇよ」

 ガイオはげんなりしながらぼやいた。プリシラは頼もしい仲間を得た。

 
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