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エスメラルダとドリス
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エスメラルダは空中で空間魔法を発動させた。真っ黒な空間の入り口が出現する。エスメラルダが飛び込んだ先は、豪華な寝室だった。大きなベッドに生意気そうな寝顔の女が眠っている。エスメラルダはベッドの前に仁王立ちになって言った。
「ドリス、さっさと起きなさい?」
ベッドの中の女はハッと身体を起こしてキョロキョロと辺りを見回し、エスメラルダを見つけて顔をしかめた。
「エスメラルダ、わたくしの寝室に勝手に入ってくるな」
「忙しい私が直々に来てやったんだからありがたく思いなさい?」
「・・・。それ、目が回るほど忙しい一国の王女に言う言葉か?」
「何をぐだぐだ言っているの。私に依頼を頼みたいと言ったくせに」
ドリスはベッドから起き上がると、ハンガーにかけてあったガウンを身にまとって言った。
「わたくしの手足となって動いているチコとサラから報告があったのだ。近頃魔力の強い娘が誘拐されかける事件が多発していると」
この事件はプリシラが言っていたものだ。この事件はそんなに世間に知られているのだろうか。エスメラルダはそれよりも気になる事を聞いた。
「ちょっとドリス。チコとサラは私がプリシラの身の安全を守るためにはなっている目と耳なのよ?勝手に使わないでくれる?」
「おい、エスメラルダ。チコとサラを自分の物みたいに言うな。わたくしはチコとサラを雇っているのだぞ?チコは小金を与えて、サラは権力をチラつかせてな」
「私はチコとサラを恐怖で支配しているわ」
「自慢げに言う事か?まぁ、それはいいとして。近頃ドウマ国の動きが活発だ。ウィード国は表面上はドウマ国と不可侵条約を結んでいるため、事を荒立てたくない。そこでエスメラルダ、お前にドウマ国の内情をさぐってきてほしい。できればドウマ国と交渉できるような、弱みになる事を調べてきてほしい」
「わかったわ。ドウマ国をぶっ潰してくればいいのね」
「お前人の話聞いているのか?!事を荒立てるなと言っているのだ」
エスメラルダは怒りの表情をしているドリスをにらんだ。ドリスは憎らしい相手だが、プリシラをないがしろにした両親を幽閉し、エスメラルダに爵位を与えてくれた恩もある。
それにドリスは、プリシラが社交界に出る時の後ろ盾になってくれているのだ。国の王女が側にいてくれれば、プリシラも良からぬ貴族に難癖をつけられる事はないだろう。エスメラルダはドリスの言う事を聞かなければならないのだ。エスメラルダは奥歯を噛み締めて答えた。
「わかったわ。ドウマ国の国王と名乗る愚か者だけボコボコにしてくるわ」
「まったく。お前はどうしてそう乱暴なのだ。これではプリシラの恋人もおちおちしていられまい」
「プリシラの恋人ですって?!」
「何だ、知らないのか?エスメラルダ。若きデムーロ伯爵はプリシラにゾッコンだぞ。これまで多くの女性と浮き名を流したデムーロ伯爵がついに出会った運命の相手といわれているのだ」
「ああ、あの青二才の事?それならもうギタギタにしてやったわ」
「おいおい、そんな事をしたらプリシラに嫌われるのではないのか?」
プリシラに嫌われる。ドリスの言葉に、エスメラルダは冷水をかけられたように全身が冷え切った。エスメラルダのあまりの変わりように、ドリスの方が慌てたように言葉を付けくわえた。
「何、冗談だ。プリシラがそのような事で姉のお前を嫌うはずがないだろう。なんせ自分を殺そうとした相手をも許してしまうやつだからな」
エスメラルダはドリスの言葉をあまり聞いていなかった。プリシラにきらわれる。その言葉だけが耳に残った。
「ドリス、さっさと起きなさい?」
ベッドの中の女はハッと身体を起こしてキョロキョロと辺りを見回し、エスメラルダを見つけて顔をしかめた。
「エスメラルダ、わたくしの寝室に勝手に入ってくるな」
「忙しい私が直々に来てやったんだからありがたく思いなさい?」
「・・・。それ、目が回るほど忙しい一国の王女に言う言葉か?」
「何をぐだぐだ言っているの。私に依頼を頼みたいと言ったくせに」
ドリスはベッドから起き上がると、ハンガーにかけてあったガウンを身にまとって言った。
「わたくしの手足となって動いているチコとサラから報告があったのだ。近頃魔力の強い娘が誘拐されかける事件が多発していると」
この事件はプリシラが言っていたものだ。この事件はそんなに世間に知られているのだろうか。エスメラルダはそれよりも気になる事を聞いた。
「ちょっとドリス。チコとサラは私がプリシラの身の安全を守るためにはなっている目と耳なのよ?勝手に使わないでくれる?」
「おい、エスメラルダ。チコとサラを自分の物みたいに言うな。わたくしはチコとサラを雇っているのだぞ?チコは小金を与えて、サラは権力をチラつかせてな」
「私はチコとサラを恐怖で支配しているわ」
「自慢げに言う事か?まぁ、それはいいとして。近頃ドウマ国の動きが活発だ。ウィード国は表面上はドウマ国と不可侵条約を結んでいるため、事を荒立てたくない。そこでエスメラルダ、お前にドウマ国の内情をさぐってきてほしい。できればドウマ国と交渉できるような、弱みになる事を調べてきてほしい」
「わかったわ。ドウマ国をぶっ潰してくればいいのね」
「お前人の話聞いているのか?!事を荒立てるなと言っているのだ」
エスメラルダは怒りの表情をしているドリスをにらんだ。ドリスは憎らしい相手だが、プリシラをないがしろにした両親を幽閉し、エスメラルダに爵位を与えてくれた恩もある。
それにドリスは、プリシラが社交界に出る時の後ろ盾になってくれているのだ。国の王女が側にいてくれれば、プリシラも良からぬ貴族に難癖をつけられる事はないだろう。エスメラルダはドリスの言う事を聞かなければならないのだ。エスメラルダは奥歯を噛み締めて答えた。
「わかったわ。ドウマ国の国王と名乗る愚か者だけボコボコにしてくるわ」
「まったく。お前はどうしてそう乱暴なのだ。これではプリシラの恋人もおちおちしていられまい」
「プリシラの恋人ですって?!」
「何だ、知らないのか?エスメラルダ。若きデムーロ伯爵はプリシラにゾッコンだぞ。これまで多くの女性と浮き名を流したデムーロ伯爵がついに出会った運命の相手といわれているのだ」
「ああ、あの青二才の事?それならもうギタギタにしてやったわ」
「おいおい、そんな事をしたらプリシラに嫌われるのではないのか?」
プリシラに嫌われる。ドリスの言葉に、エスメラルダは冷水をかけられたように全身が冷え切った。エスメラルダのあまりの変わりように、ドリスの方が慌てたように言葉を付けくわえた。
「何、冗談だ。プリシラがそのような事で姉のお前を嫌うはずがないだろう。なんせ自分を殺そうとした相手をも許してしまうやつだからな」
エスメラルダはドリスの言葉をあまり聞いていなかった。プリシラにきらわれる。その言葉だけが耳に残った。
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