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助っ人

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 プリシラの後ろにいるチコとサラが驚きの声をあげた。プリシラは視線だけは魔法使いたちに向けながら言った。

「だって奴らの目的がわからないのよ?魔力の強い美しい乙女だなんて、お姉ちゃんそのものじゃない。大切なお姉ちゃんをあえて危険な目にあわせるわけにはいかないわ」
「プリシラ。あの人たち、別に美しい乙女なんて言ってない」
「出たよ、お姉ちゃん大好きっ子」

 サラとチコのげんなりした声が聞こえるがプリシラは無視した。ここに呼ぶ助っ人は。

 プリシラは左手の小指にしている指輪に声をかけた。

「リベリオ、今から私のところにこられる?」
「やぁ。プリシラから声をかけてくれるなんて嬉しいね。すぐに行くよ」

 しばらくしてから空間の出入り口が出現し、リベリオがキザったらしく現れた。

「やぁ、プリシラ。今日の君も野に咲くバラのように美しいっ、て。何だチコとサラもいたの?」

 リベリオは辺りをキョロキョロして、不思議そうにチコとサラを見てから、目の前の魔法使いたちを見て言った。

「なぁ、プリシラ。あの魔法使いたちは何者だ?」
「それはわからないんだけど、お姉ちゃんに会わせろって、私たちを脅すのよ」
「何だって!プリシラを脅す奴は俺が許さない!」
「ありがとう、リベリオ。じゃあ、私たちを空間魔法で安全なところまで移動させてくれない?」
「お安いご用意だ」

 プリシラたちがわいわい話しているのを、魔法使いのリーダーはジッと見てから口を開いた。

「そいつがお前の姉なのか?男に見えるが」
「姉は仕事で忙しいの。日を改めてくださる?」

 無表情だった魔法使いの表情が厳しくなり、スッと手をあげた。背後の五人の魔法使いたちが呪文を唱え始める。それまで晴天だった空を、ガラスのドームがおおう。再び結界が張られたのだ。

「あれっ?おかしいな、魔法が発動しないぞ?」

 プリシラのとなりに立っていたリベリオが不思議そうに呟いた。プリシラはリベリオに状況を説明した。

「リベリオ。あの魔法使いたちが結界を張ると、魔法が使えなくなってしまうの」
 
 リベリオは一つうなずいてから、手のひらを上にした。すると炎が吹きだす。火魔法だ。どうやらリベリオは結界内でも魔法は使えるらしい。

「ああ、簡単な魔法は使えるが、高等な魔法は発動できないようだ。どうしたものかな」

 リベリオはさして困った様子もなく首をかしげた。プリシラはリベリオの度胸に笑って言った。

「大丈夫よ?リベリオ。タップが魔法を使えるようにしてくれるから」
『いっひっひ。人間の操る魔法なんて、霊獣の俺にとっちゃ、ちゃちなもんよ!俺が何の準備もなく結界内に入るとでも思ったか!外には風攻撃魔法のかたまりを何十個と用意してあるんだよ!』

 プリシラの腕の中にいるタップが上機嫌で叫んだ。プリシラは微笑んでからタップを地面におろした。タップはみるみる大きくなり、この場にいる全員を乗せられるくらいに大きくなった。

 プリシラはチコたちにタップの背中に乗るように指示し、リベリオに手短かに説明した。

「リベリオ。私が合図したら、空間魔法を発動して、そこから皆で逃げるわ」
「ああ、わかった」

 プリシラはリベリオにうなずくと、タップに視線を向けた。タップもうなずく。プリシラは心の中でタイミングをはかってから叫んだ。

「タップ!リベリオ!」
『まかせろ!』
「了解!」

 プリシラたちの背後で連続して爆発音がした。





 
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