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ガイオとマージの危機

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 ガイオはマージを抱えたまま、軽快に城下町の屋根の上を跳んでいた。マージはガイオに抱えられているだけでも疲れるのに、ガイオは涼しい顔だ。トビーもプリシラもそうだが、本当に魔法が使える連中はどうかしている。

 マージがガタガタとゆれる視線を下に向けると、ガラの悪い連中がわらわらと集まっている。スキーラ子爵の部下たちとは一体どれほどいるのだろうか。

 それまで快調に走っていたガイオが立ち止まった。マージがいぶかしんで上を見上げると、ガイオは首に手を当てて苦しそうにしている。

「どうしたのさ?!」
「近くに、魔法使いがいる。呪いの首輪を発動させたんだ。すまねぇ、マージ。一旦降りる」

 ガイオはマージを抱えなおすと、屋根から地上に降りた。その直後首を抑えてうずくまってしまった。

「ちょっと、ガイオ!大丈夫?!」
「グッ、心配いらねぇ。マージ、逃げろ、」

 ガイオは苦しそうにマージに言った。具合の悪い人間を置いていけるほどマージは非情な人間ではない。そうこうしているうちに、スキーラ子爵の部下たちに囲まれてしまった。

 部下の中のリーダー格なのだろうか、がたいの大きな男が苦しんでいるガイオに言った。

「ガイオ、娘はどこだ。早く白状しねぇと死ぬぞ?」
「何だい!男どもが寄ってたかって、一人を痛めつけるなんて男らしくないね!娘さんは安全なところにいるよ!早くガイオの魔法を解きなさいよ!」

 動けないガイオの代わりに、マージはガタイのいい男に向かって叫んだ。

「何だこの女は」
「誰だっていいでしょ?!私は困っている人を見過ごせないの!」

 マージが啖呵を切った次の瞬間、身体が吹っ飛んだ。遅れてがたいのいい男に引っ叩かれたのだとわかった。地面に叩きつけられた身体と、引っ叩かれた頬がジンジンと痛かった。

 マージは歯を食いしばった。父と娘が理不尽な目にあっている。こんな事は決してあってはならない。

「やめろ、この女は関係ない。帰してやってくれ、」

 ガイオははいずりながら、転がっているマージに手を伸ばそうとした。ガイオの頭をがたいのいい男が土足で踏みつけにした。

「ガイオ、てめぇが悪いんだぞ?早く娘を出さねぇから。おい、お前たちガイオとこの女を連れて行け」

 マージとガイオは、まるで荷物のように布をかけられた。マージが布をかけられる直前、ガラの悪い男たちの陰に、ローブを着た小男がブツブツと何かを唱えていた。この男がガイオの呪いの首輪を操っている魔法使いなのだ。マージは苦々しげに魔法使いをにらんだ。

 

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