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プリシラの作戦

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 スキーラ子爵、聞き覚えがある。プリシラは記憶の中をひっくり返して思い出そうとした。養父母になったパルヴィス公爵夫妻に連れられて、プリシラは多くの貴族たちと会った。

 彼らのほとんどが、パルヴィス公爵の知古である位の高い貴族たちだった。本来ならスキーラ子爵とは会った事がないはずだ。何故プリシラはスキーラ子爵の名前を知っているのだろうか。短い期間でたくさんの貴族と会ったため、プリシラの頭はごちゃごちゃになっていた。

 しばらく長考して、あっと声をあげた。プリシラが初めて社交界に出席した時、しつこくダンスに誘ってくる貴族がいた。

 その男は鼻が大きくて、ねちねちとした話し方が気持ちの悪い男だった。プリシラがほとほと困っていると、リベリオがさっそうと現れ、プリシラを助けてくれた。

 ようやく男から解放されたプリシラに、リベリオが耳打ちしたのだ。スキーラ子爵はたちの悪い男だから注意するように、と。

 女ったらしのリベリオが言うくらいだから、相当な人物なのだろうと考えたいたが、父親を人質に取って、いたいけな少女に言う事を聞かせるなど、言語道断だ。絶対に許すわけにはいかない。

 こんな事は考えたくないが、プリシラはパルヴィス公爵家の養女だ。つまり養父はスキーラ子爵よりも爵位が上だ。父親の名前を出せば、スキーラ子爵はおとなしくエレナの父親を解放してくれるかもしれない。

 プリシラは腕の中で泣きつかれぐったりしているエレナに力強く言った。

「エレナ、お父さんを助けましょう」

 エレナは大きな瞳をさらに大きくしてプリシラを見た。代わりにトビーがぼやく。

「助けるったってどうすんだよ。プリシラ」
「ひとまずマージさんの所に帰りましょう」

 プリシラの提案に、トビーが笑顔になった。マージの事をとても心配していたからだろう。

 プリシラはタップに大きくなってもらい、トビーとエレナも乗せて一路マージ運送会社に急いだ。

 プリシラたちは、マージ運送会社に戻ってぼう然とした。室内がメチャクチャになっていたからだ。エレナは震える声で言った。

「スキーラ子爵の部下たちが来たんだわ」
「マージおばちゃんは?!」

 トビーは悲鳴のような声をあげた。エレナの父親と一緒に、マージの姿もなかったからだ。うろたえるトビーに、エレナはしっかりした声で言った。

「大丈夫よ、トビー。お父さんは強いから。きっとマージさんを守ってくれる」

 プリシラはマージの安全を信じてエレナに質問した。

「エレナ。お父さんとマージさんはどこに行ったのかしら」
「うん。スキーラ子爵の部下から逃げていれば、城下町のどこかにいると思う。だけど、もし捕まってしまったら、スキーラ子爵の屋敷に連れていかれるはず」

 プリシラは厳しい顔でうなずいた。エレナの父親とマージを探さなければいけない。
 

 

 
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